参政党旋風続く/「ふつうの軽音部」72話:鷹見の自意識と鳩野と和解しない良さ/非就労日本人の雇用政策/アンケートに本音で答える日本人

Posted at 25/07/07

令和7年7月7日(月)晴れ

今日はラッキーセブン三つ並びの七夕。書きたいことがたくさんあってまとまらないうちに時間が過ぎていってしまう。

なんというか、参議院選挙でこれだけ盛り上がることは珍しいのではないか。衆院で与党が過半数割れする中、参議院でも過半数が危なくなるというのはいつ以来なのだろうか。国会会期末に立憲が内閣不信任案を出せば可決され、衆議院も総選挙のダブル選挙になった可能性が強かったのだが、立憲は及び腰でそれを避けたわけだけど、まあ正解だったということだろうと思う。今回のこの状況では、衆議院でも参政党がかなり議席を取っていた可能性はある。逆に候補者不足で伸び悩んだ可能性もあるから、何が正解だったかわからないところもあるのだけど。

比例代表の投票先として、参政党が国民や立憲を抜いて2位に浮上したという話があり、もしそうならかなりの議席を取れるかという話にはなるわけだけど、実際には10人しか擁立していないので最大でも10人ということになる。この辺は調子の良い時の国民民主党も同じように比例で取れたはずの議席が他党に回っていることがままあり、追い風に乗っている政党の共通の悩みではあるのだろうと思う。まあそれがある意味議席配分の激変を防ぐビルトインスタビライザーになっているということも言えるかもしれないのだが。

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参政党の神谷代表が、「引きこもりやニートの人に働いて貰えば外国人労働者はいらない」という発言をしていたそうで、まあそれがそんな簡単に行ったら誰も苦労しないとは思ったが、外国人労働者を雇うと助成金が出る、という話を読むと、同じようなことを引きこもりやニート、あるいは氷河期や傷病などで就労機会を逃した人に対してもやっても良いのではないかと思った。

就労経験が何年中断しているかによって企業側に助成金を出し、また本人にも支度金という名目である程度の助成を最初にすれば、社会に出るハードルが下がる、ということはあるのではないかと思う。もちろんこれを実施するには非正規経験はあるけど正規経験が少ないとかさまざまな実情に合わせた規定が必要になるだろうとは思うのだが、就労に関してもまず日本人から、という考え方はありなんじゃないかと思った。これがそれなりに成功すればアメリカなどでも長期失業の人たちに対してのモデルケースにできる部分もあるのではないかと思ったり。まあ今のところ全て絵に描いた餅ではありますが。

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選挙期間中はツイッターなどを読んでいても人々のむき出しの感情に直面することが多くて疲れる、というツイートを読んだのだが、私はどちらかというと選挙の時の人々の本音がはっきり現れる感じがそんなに嫌いではないなと思った。もちろんこれは自分と意見の異なる人たちのフォローをしてないから、ということはあると思うけれども、割と真剣な情勢分析とそれはなぜ起こっているのか、という考察を読むことは、自分自身にとっても勉強になる。今回のように、今まであまり拾い上げられなかった意見、「日本人ファースト」と「反DEI」「反緊縮」「反増税」みたいなものが大きな流れを作ると、多くの人が戸惑っているのも興味深い感じはする。

私としてはもっと「表現の自由」はマターとして取り上げてほしいと思うし、特にその担い手である山田太郎氏にはできるだけ大量の得票でトップ当選してもらえると、問題意識が強く伝わると思うので、頑張ってもらいたいとは思っている。

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参政党が受けている一つの理由は、「参政党」という非常に落ち着いた名前だということもあるのではないかと思う。また、一人一人の候補者も変にキャラを立ててこなくて、「ふつうの日本人」という感じがするところも従来の一発屋政党とは違うところだろう。「れいわ新撰組」だの「たちあがれ日本」だのの、いわば「キラキラネーム」の政党は、一部には受けるかもしれないが広がりがない。参政党、とちょっと聞いただけでは国民政党なんだろうなという感じがするところが良いのだろうと思う。

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あと面白いなと思ったのは、アメリカ人は「トランプ支持」を隠したがり、それが実際の投票行動と違うので世論調査が役に立たなくなっているのに、日本人はむしろ外国人に対する不安感などを積極的にアンケートに表現する傾向が強い、という話だった。確かにアンケートというものは、自由記述とかが日本では無法地帯になりがちなわけで、普段おとなしい代わりに何かそういう意見を表明する機会が与えられたらここぞとばかりに考えを表明する傾向というのは日本では強いなと思う。まあそれはTwitterを見ていたら一目瞭然なわけだが。それで実際の投票行動は返って常識的だったりするのではないかと思う。「ガス抜き」というのが非常に意味を持つ国民性だなと思う。

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https://shonenjumpplus.com/episode/17106567266985757251

「ふつうの軽音部」72話感想。簡単に書くと、ここのところは「鷹見の自意識」がハロウィンライブの対決によってどのようなところに収まりがつくのか、というところが問題になっていたわけだが、「なんでも質問できる」ことを賭けの対象にしたことで鳩野に聞きたいことが山のように出てきながら、結局それは鳩野に聞くべきことではないなということに思い当たり、「やっぱりいい」と言い出したため、鳩野が腹を立てるわけだけど、それはつまりライブ中に心の中で鳩野に語りかけたり、また鳩野の側も「鷹見が何か言ってる」と感じ取ったりして、お互いちょっと通じ合いそうになっていながら、結局は和解しない道を選んだということで、この辺りはとても良いなと思った。

これは鷹見がどんなに面倒くさいやつかを示すとともに、「鳩野との分かり合えない関係こそを大事にしたい」ということであって、「小説吉田学校」のなかで三木武吉が鳩山一郎との話を持って吉田茂と交渉に来たときに、話が済んだ後で「雑談していかないか」と誘われた時に断った、という話に近い。つまり三木は吉田に「話がわかるやつ」という印象を抱いたため、もしここで雑談に応じてさらに親しくなって仕舞えばいざ攻撃する時に矛先が鈍る、ということを慮って断ったのだ、ということだった。鷹見としては鳩野を本当のライバルと見定めたから、ここで変に友達になりたくはない、ということなのだろう。また鳩野も何を聞かれるか構えていたからはぐらかされて余計闘志が高まる、という感じになっていたのが実に良かった。

一方でプロトコルのメンバーは田口から鷹見の事情を聞いてより結束が深まるのも良かったし、特に遠野が鷹見の才能に本当に惚れ込んでいる一方、水尾が「あいつは一生音楽をやっていくやつだと思う」と本質を見抜いているのも本当に良くて、良い友達を持ったな感が強い。

後半は相対性理論の「四角革命」の歌詞に乗って不穏な状況が展開していく、そのサスペンスの盛り上げ方が流石だなと思った。また、嫌味な印象だけが強かった指川先生が鳩野の数学の先生であったことが明らかにされ、教師らしく厳しく指導されながら鳩野自身は結構好感も持ってる感じがよく、これからラスボス的に登場してくることが予告されている指川先生の別の側面をあらかじめ見せているのも面白いなと思った。

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とりあえず暑くなる前に少し草刈りをしておきたいので、このくらいにしておきたいと思う。日米関税交渉についてはこちらの記事を読んでから書きたいと思う。

https://guccipost.co.jp/blog/kminemura/?p=156

アニメやアニソンが「下に見られる」のに慣れてはいけない:正当に評価されることでもっと日本の力になる/参政党に「神風」が吹いているのは左翼を含めた日本政治全体の責任

Posted at 25/07/06

7月6日(日)晴れ

昨日は仕事が一つあって、まあいい感じにできたからよかったかなとは思う。全体的にはあまり忙しくはなかったが。ただ、午前中に書店に行く用事ができてしまったので仕事に必要な本を買いに行ったらクリーニングを出しに行く時間がなくなってしまい、それが後回しになったのがちょっとあれかなとは思う。まあ全体に忙しすぎて、いろいろなところで抜け落ちが出る。自分ではかなり雑事も含めてやれてる感じはあるのだが、これでも回らないのは元々無理なところもあるからだろうなとは思う。まあぼちぼちだ。

今朝4時前に起きたのだが、「ふつうの軽音部」の2週間ぶりの更新を読んだり、ジャンプ+のコメント欄やTwitterでの反応を噛み締めたり、他の話題を追いかけていたりしたらどんどん時間が経ってしまい、ブログを書くのが午後になってしまった。暑い。

今日はいろいろな話題を追いかけてしまったので、いくつかその中から。

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https://x.com/kenokun/status/1941657292287639719

「ONE PIECE」の主題歌(OP)はいくつもあるけれども、一番有名なものの一つが田中公平さんが作曲した「We are」で、JASRACの海外部門で最も分配額の多いものだとのこと。そしてそのほとんどがアニメソングだとのこと。

田中さんはアニメソングの日本における評価が低すぎる、ということに憤慨されているわけだけど、サブカルやおたくの方面から見るとおそらくまあそんなものだと思うと思うのだが、田中さんは藝大作曲科の出身とのことで、そういう面から見たら確かに相当な評価はされてない、ということは言えるだろうとは思った。まあマンガ読者(アニメ視聴者)というのはマンガが文化的に下に見られていることには慣れてしまっているので良くないなと思うのだけど、多分アートの世界では村上隆さんのようにおたく気質を持った世界的アーティストが出てきているからまだマシなのだとは思うけど、音楽の世界では確かにまだ既存のヒエラルキーは強固なのだろうなと思った。

https://x.com/kenokun/status/1941645480129388928

ポップスの世界においても、もちろん日本でもアニメ関連の楽曲が売れているのは確かなのだけど、世界的に見てもそうだというのはこういうところでもわかる。ただ、日本ではアニメがあまりに豊富なので消費されていく速度が早く、世界で受けているのは日本の20年前の作品、みたいなことが起こりがちだなと思う。そういう意味で、もっと日本にもこういう世界の現状が伝えられるべきだと思ったし、私もnoteなどで積極的に取り上げていけると良いなと思った。

https://x.com/Kotani156337951/status/1941009482135576810

日本時間の7月3日だろうか、ドジャースタジアムでONE PIECE NIGHTという催しがあったようなのだけど、ドローンを飛ばして空に絵を描く「ドローンショー」というのがあったということで、これはすごいと思った。日本の花火でもこういうことは作られている(それはすごいことなんだけど)けれども、ドローンでこういう表現ができるというのは言われてみたらそうだよなと思ったけどこれはいいなと思った。そしてそういう催しが日本で報道されないのもちょっと残念な話だ。政府のお金で無理やりみてもらうとかではなく、向こうの人たちが自分のみたいもの、やりたいこととして日本の作品を扱ってくれるというのは本当にすごいことだと思う。こういうことも目に入ったら取り上げていきたいなと思った。

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参政党の話だが、基本的にどういう政党なのかあまりよくわからなかったので言及も最小限にしていたのだけど、今朝Twitterでやりとりをしていて、代表の神谷宗幣さんが関西大学の学生時代、日学同(日本学生同盟)という新右翼系の団体の活動家だったという話を読んで、いろいろ繋がったというか、納得できたところがあった。

日本学生同盟というのは1966年に早稲田でできた団体で、森喜朗氏をはじめとして自民党の総理大臣も何人か輩出した早大雄弁会とも近い関係にあった時期もあったようである。輩出した有名な人としては三島事件で三島由紀夫とともに切腹した森田必勝氏がいる。

最近では、昨年の都知事選で蓮舫氏を下して2位に入った石丸氏の参謀を務めた藤川晋之助氏がいる。他にも自民党入りした政治関係者は多いようである。

新右翼というと野村秋介氏のような直接行動派のイメージが強いが、調べた限りでは野村氏のような事件は起こしていないので新右翼民族派ではあるが別系統ということになるのだろう。この辺りのところは自分で調べきれていないのではっきりとはよくわからない。

つまり学生時代からそういう政治志向を持っていた人だということは確かであり、2007年に吹田市議になって以来、積極的に政治活動や政治家とのコネクションを精力的に作っていくとともに、さまざまなスピリチュアル系・自然保護系の団体との関わりも持っていって、そうした人々の信頼も勝ち得ながら勢力を地道に拡大していった感がある。

2007年以降の活動については下の二つの記事がわかりやすいと思うけれども、さまざまな主張を取り込みながらスピリチュアル・保守派・右翼・自然派などを糾合した勢力を作り上げていった感がある。

https://kurodoraneko15.theletter.jp/posts/10634f00-5433-11f0-b2fa-09a8eda24116

https://note.com/caffelover/n/nba9610bd7835?sub_rt=share_pb

これは読んでて笑ってしまったが、「悪そなヤツは だいたい友達」という言葉があるけど、神谷さんはまさに「怪しそなヤツはだいたい友達」という感じになってる。すごい世界に人脈を広げたものだと思うが、こういう人は相当手強いぞと思った。

常識的な政治観を持っている人から見ると、どうしてこういう勢力を糾合できたのかはなかなか想像がつかないとは思うのだけど、おそらくは支持者や神谷氏自身から見るとそんなに矛盾のあるものではないのだろうと思う。ジャンボタニシ騒動や秘書の自殺などマイナスな事件も多いし、ここ数年は分裂含みでもうブームも終焉か、と思われていたところに、2025年に「神風」が吹いたという感じである。

参政党が支持を広げた最大の理由は、まず自民党の凋落にあった。

全ての始まりは安倍元首相の暗殺である。今の参政党や日本保守党の支持層は、基本的に安倍政権の支持層として、「岩盤」と言われるほどであった。だから左翼側も安心して「安倍シネ」とか不謹慎なことを言ってられたわけである。しかしそうした声に煽られたのか本当に統一教会信者2世が安倍さんを暗殺し、その後の統一教会バッシングや政治資金問題などで岸田政権が全く旧安倍派をフォローしないどころか攻撃に回ったことで、彼らの指示は急激に冷めてしまっていたのである。

それに追い討ちをかけたのが自民党総裁選で、第1回投票で一位になった高市氏ではなく石破氏を岸田氏が支持したことで当選させ、強い幻滅が襲った。何を考えたのか実施された衆院選で自民党が惨敗したのは当然だろう。

そして敗北したのに石破氏が居直ったことによってさらに支持は離れ、その層が一時は「現役世代支援」を主張した国民民主党に流れたのだが、政権側は国民民主党に嫌がらせを続け、一方で国民民主党も保守派が嫌う山尾・須藤両氏の擁立という大チョンボをしたことで、急激に支持を失った。そしてその受け皿となったのが参政党だったわけである。参政党にとってはまさに「神風」だった。

上の記事を読んでもわかるように、都議選はまさに「参政党、奇跡の復活!」だったことがよくわかる。そしてその勢いは参議院選挙へと続いている。全てが参政党にとって幸運に回っているのはすごい。引き寄せの術でも使ったのかと思うほどである。

そしてここにきて参政党は戦略を転換していて、今までのようなスピリチュアル系や自然派系の主張(自然派と言っても無農薬とか反ワクチンとか「不自然なもの」を否定するという意味での自然派である)を抑制して、夫婦別姓問題や外国人問題といった政治的なマター、つまり原点の新右翼的な主張に回帰しているし、そのことで「反ワク・反科学・スピリチュアルのカルト的政党」と嫌っていた保守層に対しても、「意外とまともなことを言ってる、見直した」という形での支持を広げているのだと思う。

私自身の政治的志向からしても参政党の主張は割合近い部分がある。彼らは右翼であって保守ではないのだが、私は保守ではあるけれども右翼的な部分も必要だとは思っているので、その部分で共感するところはある。自然派の部分も私自身が野口整体をやっているので共感する部分はある。また反西洋医学的なところも自分にはあるので、その辺りもわからないわけではない。スピリチュアルな部分も、人間や世界には人智では理解しきれない部分があるという点では共感する部分もゼロではない。

ただ、自然派・反科学・スピリチュアルな部分に関しては全てはやりすぎだし行き過ぎだ、という感じは持っているわけである。右翼的な部分に関してはまだ評価の最中、という感じなのだが。

私は安倍政権を支持していたし、特にその範囲で国策としての新型コロナ皆ワクチン接種政策については便宜的に支持はしていた。だから反ワクチンが少なくとも政治的には正しいと思っていないので、その辺りで受け入れられないところは大きい。ただ奇想天外な選挙魔術を繰り出すけれどもやはりやりすぎと思われるNHK党や内輪揉めの酷すぎる日本保守党などに比べれば、現状の参政党がマシには見えるのは確かだろう。

「結局はリベラル」の国民民主党より、彼らの方が魅力的に見える人が多いのは頷ける。

何度も書いているが、やはり自民党がリベラル政策を捨て、しっかりした保守政党に復帰することが一番なのだが、今回は投票しないにしても参政党が選択肢に入ってきそうな感じがあるのは安倍攻撃の元凶だった左翼リベラルを含めた日本政治全体の責任であるだろうとは思う。

***

「ふつうの軽音部」などについても書こうと思ったが、もう午後3時になるのでこの辺りで更新しておこうと思う。


新サイバー条約の危険性と文章表現における表現規制/「参政党」と江戸時代のナショナルアイデンティティを育てた「国学」

Posted at 25/07/05

7月5日(土)曇り

昨日は午前中母を病院に連れていき、施設に送り届けてから銀行へ行って源泉税を払って、ツタヤに車を走らせてジャンプコミックス12冊(朝コンビニで買ったワンピースと合わせて13冊)と仕事で使うヘッドフォンを買い、西友へ行って母への差し入れと自分のお昼を買って、施設に届けてから帰宅した。昼食を取ってから少しうたた寝をしたり、本を読んだり。だいぶ疲れが溜まっている。

職場のある商店街が昨日は七夕祭りで仕事中も結構賑やかだったのだが、年に一度、今日と明日のことなので、まあそういうものだと思うしかない。人々が幸せそうであるのは良いことだ。

***

私も気がつかなかったが、新サイバー条約の危険性がかなり広範囲に認識されてきた。かなりきつい表現規制がないようにあり、そこに関しての保留事項をちゃんと抑えないと国内の表現活動が大変なことになりそうだ。野党側の表現規制反対派は維新の音喜多前議員くらいしかいないらしく、とりあえず自民党の山田太郎議員と赤松健議員に頑張ってもらわないといけないという感じになっている。

https://x.com/yamadataro43/status/1940410326924796149

https://x.com/ShinHori1/status/1941110528845439173

詳しくはリンク先を見ていただけると良いのだが、より多くの人がこの条約に対して反対の意思表示をすることが、世界をより「自分の言葉で語れる場所」であらせ続けるためには必要なのではないかと思う。

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石破政権についての苦言を書こうと思ったのだが、昨日も書いたがキリがないので今日は自粛しておこうと思う。

***

https://amzn.to/4kl6iq8

前田勉「近世日本の支配思想 兵学と朱子学・蘭学・国学」(平凡社ライブラリー、2025。原著は2006年、平凡社選書)読んでるが、面白い。現在序章の総説的なところまで読んだところ。56/349。

江戸時代の日本が征夷大将軍・徳川家を頂点とした兵営(臨戦態勢)国家であり、それゆえに幕府の物理的な実力=御威光が支配する国であった、というのはよく言われているのだが、大名配置や石高に応じた平時の格式や軍役準備義務などが国家体制化した国家であった、という整理はわかりやすい。武家諸法度(元和)で

「法はこれ礼節の本なり。法を持って理を破り、理を持って法を破らざれば、法に背くの類、その科(とが)軽からず」

とあるように、幕府の命令たる「法」は、儒教・朱子学の最も重んずる「理」よりも優先されなければならないとし、「理をもって法を批判する」ことはその罪は軽くない、と言っているわけである。

だから(これは以前も書いた覚えがあるが)江戸時代の日本の官学が朱子学であったと言っても、それは幕府の「法」の範囲内のことであり、朱子学の理をもって幕府の法を批判することは「御政道批判」であり、許されなかったわけである。だから幕府の朱子学者たちは屈折した感情を持たざるを得なかった、というのはわかりやすかった。

この兵営国家にあっては上から下まで全ての人間には「役割」があり、武士は武士の、百姓には百姓の役割があるわけで、先祖代々のその「役」を果たせない存在は「役立たず」であり、強く非難される存在だった、というのは現代においても日本の気風を説明するために大変わかりやすい話だというわけである。

また江戸時代も社会が安定してくると都市に出て商業に従事し、成功を収める人たちが出てくるわけで、彼らの自由な気風が元禄文化や化政文化などの町人文化を作っていくわけだけど、一方で成功者と没落者の階層文化も進み、「人間万事金の世の中」になってくるとそれに対する批判も現れてくる、というわけである。

成功者に連なる人の中にはそういう自由な精神の中から新しい学問、すなわち蘭学に取り組むものも出てきて、田沼時代以降それは大きな流れになる。彼らはその自由さで周囲から浮いた存在になり、自由であると共に孤独な存在であったが、そうした中で功業を目指す人々は蘭学を生かして日本の国益を増強する、という方向に考える人々が出てきて、それらは寛政異学の禁や蛮社の獄などの弾圧も経ながら、特に海防分野では先進的な主張として公認されていくようになり、ペリー来航と共に一気に西欧文物を取り入れる動きが広まっていくわけである。これはいわば閉塞した状況の中で西欧から新しい文物を取り入れて新しい時代を切り開こうとしている人たちだということになる。

一方で閉塞した状況の中で成功もおぼつかず没落した人々の中には、そうした成功者にもなれず兵営国家における役割を果たすので精一杯だったり、それすらもおぼつかない人々も増えていくわけである。そうした人々に広がったのが国学だった、という指摘は初めて読んだので意外だったのだが、本当にそうかはともかくその主張は聞くには値する話であるように思った。

本居宣長は伊勢松坂の商人の家に生まれたが、もともと松坂から江戸に進出して成功した三井本家と同じように、彼の家も日本橋に店を持っていたそうだが、宣長本人は全く商才なく、成功はおぼつかない状況であり、彼は医学を志して医者・薬種屋になったことはよく知られている。そしてその2階の鈴屋と名付けた書斎において古事記・源氏物語をはじめとする日本の古典研究に取り組んで、日本人とはどういう存在か、もっと言えば中国の影響を受ける前の日本人というものはどんな素晴らしい存在だったか、を明らかにしていこうとした、というわけである。

「日本に生まれたる者第一に知るべき事は三千世界の中に日本ほど尊き国はなし、人の中に日本人程うるはしきはなし、日本人程かしこき人はなし、日本程ゆたかなる所なしと知るべし」

これは増穂残口の「有像無像小社探」に出てくる言葉だが、彼は宣長よりひと世代前の人で、多分に山っ気のある人だったように思われるが、江戸時代中期の日本はそうした言説が必要とされるような階層文化の進んだ社会であって、その不条理に苦しむ人たちを本来なら救う存在であった宗教も弾圧されていた。増穂残口は日蓮宗不受不施派の僧侶だったが、幕府による禁令によって還俗した人でもあったようである。

だから「世俗のみ」の階層社会において自分を支えるアイデンティティとして、日本人というアイデンティティは強く求められるものになった、というのが著者の主張であるわけである。

私は本居宣長にしろ賀茂真淵にしろ平田篤胤にしろ自分のやりたい学問を好きにやれる恵まれた人たち、という見方で見ていたから、この本の指摘はちょっと驚いた。ただ、理屈としてはそれは通りやすいしわかりやすい話なので、もう少し調べないとなんとも言えないが、構造として理屈は通っているなとは思う。

まあ、そう考えてみると、蘭学者たちは国益を重視するエリートであって、例えば今の政治家で言えば小林鷹之さんのような自民党エリートの保守派のホープであり、国学者たちは日本人のナショナルアイデンティティを強く主張するより右派の、安倍首相亡き後は日本保守党や参政党のような存在だ、ということになるのだろうなと思った。

著者は明治政府が蘭学の自由な気風を否定し国学のナショナルアイデンティティのみを強調し、一方で朱子学本来の独立自尊の精神がようやく実現した途端に枯れていった時期とみなしていて、その辺は私と捉え方は違うけれども、少なくとも自分にとって作業仮説としてはなかなか説得力があるようには感じられた。

今日のところはとりあえずここまでで。


日米関税交渉の失敗は「トランプという人」を見ていないからではないか/参政党の右派言説はなぜ人気を集めるのか

Posted at 25/07/04

7月4日(金)曇り

今朝も曇っているせいか、気温があまり下がらず、最低気温が21.9度。当地ではほぼ熱帯夜のような感じ。結局朝は汗みどろで4時前に起きた。もう少ししっかり睡眠を取りたいところなのだが、どうも眠りの質が良くなくなっている。どこかで立て直さないとと思うのだが。

昨日は午前中に母を病院に連れていき、割合早めに終わって少し寄り道した。一方で会計の仕事を頼んであったので終了後は実家に戻ってそれを確認したり。昼食後やらなければならないことを思い出して銀行に行ったが3時にギリギリ間に合わず、今日に持ち越しになった。

だいぶ疲れが出ていていろいろなことがうまく動いていないが、きちんと楽しみを見出しながらいろいろなことをやっていかないといけないなあと改めて思った。

***

今日は249回目のアメリカ独立記念日。来年でちょうど独立250年になる。ということで、暗礁に乗り上げている日米関税交渉について思ったこと。

https://x.com/Sankei_news/status/1940775943444090999

石破さんは、まず相手の話を聞いてないんじゃないかと思う。なぜトランプが関税政策を打ち出したのをちゃんと理解して、妥協点を探らなければ落ち着くところに落ち着かないのではないか。こちらが原則を決めて譲らなければ交渉担当者は子どもの使いで、相手にまともに相手にされなくなっているのも仕方ないのではないかと思う。

トランプについての評価では、「トランプは80年台から日本を警戒してきた」ということを軽視すべきではないと思う。

https://x.com/kamome81/status/1940548771794112665

そのトランプに対し、「日本人にも個人の顔がある」と認識させたのが安倍さんだったとのだと思う。今の石破政権のやり方は再び「誰がきても同じことを言う」金太郎飴に戻っていて、それではうまくいくはずがないと思う。

石破政権の外交の一番稚拙なのは、首脳間の個人的な人間関係の構築をしていないところだと思う。これは石破さんがそう言う見識を持っているのか、ただ苦手で避けているだけなのかわからないが、現代の大国間外交において非常に重要な要素である首脳間の個人的な関係をあえて構築していないのは不利になるのは分かりきっていると思う。岸田さんもその辺は抑制的というか、如才なく振る舞う程度で、彼も本質的にはそういう個人間の関係で物事を進めるのは苦手な方だと思うし、そう言うことができないからいまいち人気が出ず、政権を投げ出すことにつながっていると思う。

ここのところの首相で一番そこをうまくやっていたのはやはり安倍さんで、というか中曽根・小泉そのほか長期政権を担った人たちは皆そこに力を入れていた。今それをやれる人は日本では麻生さんくらいかもしれないのだが、それができる人が出てこないと日本の将来は明るくないと思う。

安倍さんはまだ就任式前のトランプに会いに行って個人的な関係を構築し、ついにはアメリカ側の政府がトランプに納得させる時に安倍さんに頼むと言うところまで行っていた。安倍さんはプーチンとの関係構築には事実上失敗したが、トランプに関してはアメリカ人を含めても今のところ右に出る人はいないのではないかと思う。本当に惜しい人を亡くしたと思う。

石破さんはこの方針を変えそうもないから、早く退陣してアメリカとの関係を構築し直さないと、今後はかなり大変になるだろうと思う。

***

参政党の神谷代表の言説が話題を呼んでいることについて。

https://x.com/far_west9/status/1940779994755879385

あまり考えたことはなかったけれども、確かに従来の右翼的な言説、それも戦後右翼というよりは日韓W杯や拉致事件発覚によって2000年台初めに勢いを得たいわゆる「ネット右翼」的な言説というものが、彼の発言によって再活性化させられていて、そこに支持が集まっているということはあるだろうなと思った。

https://x.com/royterek/status/1940797848830071099

日本人が「比較的恵まれている」というのは本当にそうかとは思うし、「恵まれているから」生活上の不都合を我慢しなければいけないとか、そういう理由にはならないだろう。階層間格差が拡大している今となっては、「安全な社会で生活できる」という部分が、日本が「比較的恵まれている」ということの大きな内容なのだから、ということを考えなければいけないと思う。

神谷代表が「高齢の女性は子供を産めない」とか「日本人ファースト」と言っていることについて不快感を表明している人が多いが、言ってみれば当たり前のことを言っているだけなので、それが不愉快だと感じる人がいるということ自体がなるほど、現在の言説空間はそういう閉塞性を持っていたということなのだなということが逆に認識できる。いわゆるヨーロッパの「極右」やトランプ支持のMAGAなどがいわば当たり前のことを言うことによって「極右」とみなされてきた構造自体が、日本にも確かにあったと言うことだろう。

「誰にも言えない本音を言う」ことで支持を集めるのはいわば極左のれいわ新撰組も同じことだし、ぶっちゃけ進歩主義の政党が支持を集めてきたのはそう言うことだったと思うのだけど、言論空間を支配しているのが確かに左派である現状においては、「誰も言えない本音」と言うのは右派のものになるのは当然だろう。

参政党は今のところ右翼とか排外主義とか言われる部分についてはどうと言うことを言っていないと思う。問題は反ワクチンとか反科学の姿勢のところだと思うのだが、こちらがメインのお客なのかそれとも集客の手段なのかによってこの政党の評価は変わってくるだろう。

左派が表現規制派になりつつある現在、右派にはせめてその防波堤にはなってほしいのだが、参政党は参政党で彼らなりの規制思想があるようにも見えるし、本当の意味での保守リベラル自由主義というか、そういう姿勢を持つ政党がしっかりとした基盤を持って立ち上がってほしいとは思うのだが。

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