今心に響く本/「上宮聖徳法王帝説」

Posted at 17/09/22

今どんな本を読んだら心に響くのだろう、というのは最近いつも考えていることだ。昔はどんな本を読んでも結構心に響いていたのだけど、最近は本を買っても読まないで放りっぱなしになる、ということがよくある。頭では関心があると思っているジャンルが、実際に取り組もうとしてみると本当はそんなに関心がなかった、ということが多いということなんだろう。逆に、思いがけず熱中して読んでしまう本もあり、本当に関心のあるジャンル、本当に没頭してしまうジャンルは何なんだろうと常に問いかけざるを得なくなっている。

神皇正統記 (岩波文庫)
岩佐 正
岩波書店
1975-11-17



最近読んだ本で結構読めるのは日本史関係の本が多い。以前はあまり原典、つまり日本史の教科書に出てくるような史書に当たっていなかったのだけど、最初に読んで面白いと思ったのが、確か「神皇正統記」だった。これは南北朝時代に南朝の北畠親房が後村上天皇への傅育のために書いた歴史書だが、思ったよりずっと公平に書かれていた。例えば仇敵と言うべき北条氏でも北条泰時の統治や北条時宗の元寇撃退に関してはきちんと評価しているのを読んで、「南朝の正統性を説くために書かれた」と巷間言われていることと必ずしも一致しないと思ったし、批評を読んでもその本の中身はわからないと言うことのある種典型の例だなと言うことに気づき、それから時々原典を読むようになった。

その後読んだ本は「古事記」「日本書紀」「続日本紀」「大鏡」「増鏡」などだが、どれも読む前の思い込みを破ってくれる面があり、やはり読んでみないとわからないなと思った。ただ、「平家物語」や「太平記」などは割と苦手で(現代語や子供向けに翻案したものは子供の頃に読んだが)何もかも読めるわけでもないとは思った。
最近は中世史ブームということもあり、「応仁の乱」や「観応の擾乱」などが売れているが、前者は一応最後まで読了したが後者はまだ途中で、以前「室町の王権」など今谷明さんなどの著作を読んだ時とは少し感覚が違った。「応仁の乱」は史料に完全準拠して書くというスタイルなので、史料の著者目線がどうしても強くなり、あまり歴史的にその著者の立ち位置がよくわからない立場からすると、想像力の拠り所を確立しにくいという側面があると思った。ただ応仁の乱のようなグダグダの展開をする対象を描くには史料著者の視線というものを視線として確立しておくというのが唯一ブレにくい記述方法かもしれないとは思う。
そしてつい数日前に読んだのが大塚ひかり「女系図でみる驚きの日本史」だったのだが、これは「女性と婚姻関係を中心とした系図を書いてみることで歴史の違う側面が見えてくる」という方法的な提案を含んだ一般書で、そのあたりが非常に刺激的だった。
そしてこの書の中でも触れられていたのが聖徳太子だ。聖徳太子については近年「いなかった」説などが出ていることもあり、そうしたやや政治的な面を含む(含まざるを得ない)動きが気になっていたこともあり、気が付いた時に関連書籍を読むようにはしていたのだが、聖徳太子の根本的な伝記である「上宮聖徳法皇帝説」が岩波文庫で出ているのに気づいて、アマゾンで取り寄せて読んでみることにしたのだ。

読み始めてみるとこれは面白い。校注は木簡や金石文の研究で知られる東野治之氏で、その中の指摘にもうなずかされたりなるほどと思ったりするものが多い。

今まで読んだのは45ページまで、この本の分類によるとA太子の系譜とB太子の事績の部分。原文(漢文)で言えばわずか6ページ分なのだが、いちいち色々考えながら読んでいる。聖徳太子は仏教に造詣が深かったことはよく知られているが、自分でも「三経義蔬」など仏教書も著しているだけでなく、推古天皇への講義なども行なっている。推古天皇に講義したのは「勝鬘経」というものだが、これは女性が主人公の経典で釈迦の教えを説いていて、その勝鬘という貴婦人をつまりは推古天皇になぞらえて講義したわけで、まさに「人を見て法を説け」の典型例だなと思えて面白いなと思った。

もう一つそうなのか、と思ったのが「上宮王家」の行く末に関しての校注。よく知られている歴史では、聖徳太子が亡くなり、推古天皇も亡くなった後、皇位は田村皇子と聖徳太子の嫡子・山背大兄王の間で争われたが山背大兄王は行為につくことなく、最終的に蘇我氏に攻められて一族全てが全滅した、わけだが、校注では「上宮王家の全滅ということ自体、伝説の域を出ないであろう」とあり、これもまたそんな説があるのかと驚いた。つまり、上宮王家、聖徳太子の子孫の中にものちの時代まで生き残ったと思われる人がいるということのようで、それは意外な話だった。
聖徳太子や上宮王家に関するあたり、山岸凉子「日出処の天子」やそのスピンオフである「馬屋古王女」などで読んだイメージが強く、王子王女の名前が出てくるたびにその絵柄が思い浮かぶ。もちろんマンガはマンガなのだが、史実で存在した人が描かれているとその人をイメージしやすいのは確かで、それに縛られると不適切なことになるが、それを出発点とするのは悪くはないと思う。
そんな思いもあり、私は史実を扱った歴史マンガは割と好きだ。今連載されているもので言えば例えば灰原薬「応天の門」で在原業平と菅原道真が陰謀渦巻く平安京で問題解決、みたいなものがあり、この辺り面白いなと思っている。

「上宮聖徳法皇帝説」、まだ読みかけだが、まだ色々得るものがありそうに思う。

「キングダム」信と蒙恬/「ジパング 深蒼海流」と奥州藤原氏

Posted at 17/09/21

ヤングジャンプ。今週(43号)は「かぐや様は告らせたい」「干物妹!うまるちゃん」「凛とチア」「源君物語」が休載ということで、普段読んでいる作品が少なかった。
「キングダム」。一撃必殺で秦軍左翼の指揮官・麻鉱を倒した趙軍総大将・李牧に信が迫る。この辺り、戦いの本番だと思ったらまだ序章、前哨戦だったということが明らかにされて、戦いの描写のうねりを感じさせる。「キングダム」ではよくあるパターンなのだが、長い戦いを描くときにはこういう感じになる。そして後半、李牧と別れた後蒙恬率いる楽華隊と落ち合った飛信隊は、立て直しを宣言する蒙恬に驚く。信の勇猛さと策が冴え渡る蒙恬。歴史上では蒙恬の方が圧倒的に有名だが、この辺りからその天稟が発揮されていくということだろうか。次週以降が楽しみ。

「潔癖男子!青山くん」。合宿編ラスト、小田切と後藤。梅屋に励まされて後藤もかが立ち直る展開。今回青山はいいとこ無しだがいいとこ無しでもちゃんと主人公してるところがすごい。というか周りがいいんだけど。
「うらたろう」。黄泉比良坂のイザナミみたくなってきたが、まあ言えばそれを超えた展開。どストレートではあるが。

モーニング。こちらも「鬼灯の冷徹」「へうげもの」休載。もともと隔週連載的な作品が多いからこちらはまあそんなものかと思うのだけど。
「ジャイアントキリング」。ETUのBチームの頑張りと、清水のプラン通りの展開。どちらもベストを出しての戦いでどちらが勝るか。そして代表でのポジション争いもここにかかってきていると。多角的な描写がいい。

「グラゼニ」。コーチの採用に、あてにしてる候補と親しい選手を引っ張る手段として使う、というケースについて。そういうことってあるのかと。
「ジパング 深蒼海流」。平泉に訪ねてきた徳子と、落ち延びることができるか。どういう展開になるのか、これもまた興味深い。というか昨日読んだ「女系図でみる驚きの日本史」で藤原秀衡が自分の妻(泰衡の母)を息子の国衡に妻として与え、後家の権力を付与するという話が驚きだったので、ある意味事実は小説より奇なりというか、合わせて読むと興味も増すなと思った。

大塚ひかり「女系図でみる驚きの日本史」続き。

Posted at 17/09/20

大塚ひかり「女系図でみる驚きの日本史」読了。感想続き。
 



第5講は母親の地位による子供たちの処遇の違いについて。同じ天皇の子供でも、誰の子供かによって(中宮腹、女御腹、更衣腹)その後の境遇が違って来ると。それはある程度常識にはなっていると思うけど、光源氏ですら更衣腹であったことで天皇になれなかったと作中で指摘されている、というのはそういえばそうだったなと思ったし、考えてみればエグい話なんだなと思った。

それからこちらも認識を新たにしたのが藤原道長の二人の正妻とその子たちのこと。あまりはっきり認識していなかったが藤原道長のふたりの正妻のうち、倫子腹の子供が男子は正五位下から始まり摂関になり女子は中宮になっていて、明子腹の子どもが男子は従五位上から始まり出世も遅く、女子は小一条院や源氏の室になっている、ということ。これは、特に女子の方はあまり明確に意識していなかった。道長は倫子と同居しているから倫子が正妻で明子は別宅という感じだろうけど、そんなに差がついているのだなあと。御子左家も家祖の長家も決して悪い生まれではないということは改めて思ったが、摂関家との差はそうやってついたのだなと。

また、平安時代のモテ男といえば在原業平な訳だけど、摂関期にもおそるべきモテ男がいたこと。小式部内侍の「大江山」の歌のエピソードに出て来る藤原定頼という男が当時の才女を総なめにしたイケメンだったと初めて知った。一番すごいと思ったのは「宇治拾遺物語」のエピソードで、関白教通が小式部内侍のもとに通っていたとき、鉢合わせした定頼がお経を誦しながら帰ったところ、その美声を聞いた小式部が感動して泣いてしまい、教通が面目丸つぶれになった、という話。

定頼といえば(名前も認識していなかったが)大江山のエピソードから単なる軽薄なバカ男としか認識していなかったのだけど、このように改めて示されると舌を巻くような、というかむしろマンガのようなモテ方で、これは是非誰かがマンガ化して欲しいなと思った。絶対面白いし、また平安時代に対する関心が高まるのではないか。

そのほか斎宮との密通のこと、また院政期の男色のこと、鎌倉期の貴族の性的退廃が最高権力者=天皇の父という構造(いわば父性原理か)に由来することを手塚治虫「奇子」の例を引いて解いていて、なるほどと思った。この辺私も「増鏡」を読んでなんだかすごい時代だなと思ったことがある。学校で教えられる武士の歴史とは全然違うのだよね。この辺りの描写(補講3〜第8講あたり)を読んでいると、本当に男も女も権力の道具にされていて、それをまた従容と受け入れているというか、また逆に自分が権力を握るとすごいことになるというか、フランスやイタリアでもヴァロワ朝末期とか結構すごいのだけど、ある種の退廃の相にある人間集団の一つの姿のようなものを見せられた感じがした。

それと対照的なのが武士の権力構造で、後家に強い権力が集中していたと。武家における後家の権力については以前、講談社現代新書で(今本が手元にないので書名がわからない)読んだことがあったが、それを授けるために自分の妻を息子に(もちろん母は違う)与えるというのを読んでなるほどと思った。また、源義経の母の常盤御前は一般に身分が低いとされていたが、実は事実上義朝の「唯一の後家」として厚遇された、という主張も目からウロコだった。何れにしても、徳川政権が成立するまで、武家において女性の力はかなり強かったことは間違いない。

また徳川家の徹底して外戚を作らない政策も指摘されてなるほどと思うところがあった。

男色や院政期の軽んじられた貴婦人の性の描写のあたりはやや苦手ではあったが、まあそれもまた人間の相の一つだなということもまた、逆説的だが歴史から学べることの一つかもしれない。

大塚ひかりさんの「女系図でみる驚きの日本史」を読んでいる。

Posted at 17/09/19

大塚ひかり「女系図でみる驚きの日本史」(新潮新書)読んでる。まだ92/218ページなのだが、いろいろと面白い指摘があって、肩の凝らない読書という感じで楽しく読んでいる。
 



日本の系図は基本的に男子直系相続という感じで書かれていて、婚姻関係や女性についてはあまり書いてないことが多い。これは大人になって割と意外に思ったことで、子供の頃読んだ子供向けの「日本の歴史」にはちゃんと女性や婚姻関係も含めた系図が書かれていたので、むしろその方が例外的だったのかと後で知った。

この本ではそういう婚姻関係、特に女系の家系をたどることで今まで見えて来ていない歴史の断面が見えてくるという指摘があり、なるほどと思わされるところがいくつかあった。

第1講〜第10講と市民講座的な感じの章立てになっていて、第1講は「平家は本当に滅亡したのか」という章題。平家は滅亡したと言っても平清盛の血筋は娘の冷泉隆房室・花山院兼雅室を経由して現在の皇室にもつながっているし、「とはずがたり」の作者後深草院二条も清盛の子孫になる。鎌倉時代に平家を偲ぶ作品がたくさん作られたのは、作った本人が平家の関係者であるだけでなく読み手もその子孫たちだった、という指摘はちょっと目から鱗だった。

実際のところ、源氏の方が一族の討ち合いが多く、頼朝の子孫は滅びているが、わずかに頼朝の妹(姉?)の坊門姫が一条能保の妻となり、摂関家に源氏の嫡流の血筋を残している。これは中学生の頃から知っていたのだが、40年前はまだ圧倒的に源氏人気の時代で源氏の子孫には興味があっても平家の子孫について触れた本があまりなかったせいだろう。

補講その一では聖徳太子即位説に触れている。これは史学的にはほぼ顧みられていないようだが、状況証拠(隋書倭国伝、聖徳上宮法王帝説など)で実際の王位についていたのは聖徳太子だとみなす根拠はないでもない。しかし実際に即位したという記録が皆無なのでそのところは弱いが、素人としてはそういうことがあってもおかしくないなとは思った。

それから第4講の紫式部の子孫が繁栄しているという指摘。これもあまり考えたことがなかったが、彼女の娘の大弐三位は賢子という実名が伝わっている。これは後冷泉天皇の乳母で三位という高位(男ならいわゆる公卿だ)にあったことからだと思うのだが、栄花物語では父の名でなく「紫式部の女」として紹介されているという。これはつまり紫式部の「功績」=源氏物語の作者であることが有利に働いたからだ、という指摘も面白いが、この時代の乳母が大きな権力を握り、特に天皇の母の家系が権力を握る摂関期を過ぎて天皇の父の家系が権力を握る院政期に入ってからの乳母及びその一門の権勢は絶大だった、という指摘は面白かった。

院政期から鎌倉時代になると摂関家を始め家の家格が固定化していくと外戚であることが意味を持たなくなるから天皇の母は上級貴族でなく中級貴族が出すようになる、ということは言われていたが、乳母が権力を握ったこととの関係はどういう感じなのだろうか、ということを思った。

何れにしても女系の流れ、ということに興味があったからこの本を手に取ったのだけど、思ったよりこの話は日本史の奥深くに関係していくことなのではないかというのが途中まで読んだ時点の感想だ。

こちらもよろしく

文化系ブログ
アート、小説、音楽、そして映画NEW

史読む月日
歴史のこと、歴史に関わる現代のことなどNEW

個人的な感想です(FC2版)

個人的な感想です(ameblo版)
漫画・アニメの感想などNEW

私のジブリ・ノート
ジブリ作品の感想・考察などNEW

生きている気がするように生きること
自己啓発、事業、ガジェットメモ、服装メモなどNEW

Feel in my bones
心のこと、身体のこと、その他のこと、そしてつぶやきNEW

スタジオみなみ
小説作品サイト

少女タイラント(仮)
小説の断片ブログ

本探し.net

本探しブログ

本を読む生活

読書案内ブログ

プロフィール

profile

author:Kosuke Hotta (kous37)
sex:male
age:54
single again
address:Tokyo,Japan

自己紹介

電子書籍のご案内
KOBOストアで買う

堀田俊夫著作集

月別アーカイブ

Powered by Movable Type

Template by MTテンプレートDB

Supported by Movable Type入門

Title background photography
by Luke Peterson

2017年09月

          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
 今日の点取り占い  点取り占いブログパーツ
kous37
携帯百景 - kous37
携帯百景

Powered by ついめ〜じ

電子書籍のお知らせ

リンク

blogram投票ボタン
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ


以下はamazonインスタント
ストアを利用しています。
詩の本のお店
2007年に取り上げた本
面白そうだな、読みたいな
アンジェラ・アキ ストア
玉姫伝説
白洲正子コレクション
小林秀雄コレクション
村上春樹の森
プーシキンを読もう!

モーニングページ、アーチストデートなどはこの本で。
野口整体について、入門的な内容を網羅しています。


ブログパーツ
全順位
ブログパーツ

全順位
あわせて読みたい

フィードメーター - Feel in my bones
total
since 13/04/2009
today
yesterday