自民党の危機意識の薄さ:保守・積極財政でないと危機は乗り越えられない/中国発の偽情報/語られないイタリア人ディアスポラと南部イタリアの困難/環境整備
Posted at 25/07/02
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7月2日(水)曇りのち雨
昨日は午前中いろいろなものを片付けたり本を整理したり。実家にいるときは自分が使う本などを自分の周りに置いているのだが、自分の部屋ではないので本棚とかにうまく収めることができず、散らかってしまう。小さな本立てを椅子の上に置いてそこに「ふつうの軽音部」の1−7巻をおいておいたりはしているが、文章を書くために集めてきたいろいろな本とかは結局積んでおいておくことになる。実家の方では自分のそういう作業のためには少し離れたところにある作業場をずっと20年以上前から使っているのだが、最近は実家の居間の方がものを書いたりするには集中しやすくなっているのでこちらで書いている。基本的には作業場の方が自分の必要なものや好きなものに囲まれているのでいやすいことはいやすいのだが、特にものを書くときには外の音などが気になることが多い。難しいところだ。
そういうわけで自分の部屋でないところで作業をしているので本などを整理して置きにくいということになる。基本的には座敷なので、床の間や違棚に本を置くのも何だし、本棚とかもあまり本格的なものは起きにくい。父がやたらと蔵書のある人だったので今でも家中に本は溢れているのだが、その本の整理にも手をつけかねている。自分の本でも整理しきれてないのが現状ということもあるし。下座敷はそれでも生活空間になるようにはしているのだけど、上座敷は洋服やら新聞やら雑誌やら書類やらの置き場になっていて、兄弟や甥姪たち、母が帰ってくるときには全部片付けなければいけない。高校生の時は2階の部屋を使っていたが、今は寝室にしている部屋以外は父や母のものが溢れていて使いにくい。だから東京に帰ると本当に自分の部屋という感じで落ち着く(上の階や隣の部屋が時々物音が気になることはあるが)のだが、あまり帰れていないのが現状だなと思う。
昨日は午前中は借りていた「近代イタリアの歴史」を市立図書館に返しに行ったくらいなのだが、イタリア統一の経緯やその後の南部問題など、またイタリア社会党(ミラノ・リミニ・ジェノバが起源)と社会党の中心の1人だったムソリーニが直接行動派を中心に作ったファシスタ党、など、調べたいことはたくさんあるなと思った。
もともと両シチリア王国の併合はカヴールは考えていなかったのが、ガリバルディが征服してしまったためにイタリア王国の一部にせざるを得なくなったという話は以前読んだことがあったが、そのボタンの掛け違いから、封建的諸制度が廃止された南部では貴族や教会の大土地所有は形式上は終わったが農民への土地所有の移行は十分には行われず、分益小作制(share-cropping)が続き、土地を得ることができず、農民たちのイタリア王国政府への不満が犯行に結びつき、それを王国政府が「山賊狩り」と称して弾圧したために王国政府と南部農民たちの間に決定的な断絶が生まれてしまったこと、また土地を得られなかった多くの農民たちが移民として大挙して新大陸に渡ったということである。
https://en.wikipedia.org/wiki/Italian_diaspora
これは「Italian diaspora」と呼ばれるが、第一次世界大戦前までに1600万人が移住し、1985年までに2900万人が移住したのだという。そのうち1000万人はイタリアに戻ったが、1900万人は海外で永住しているのだという。イタリアの人口は今でも6000万人弱だから、これはかなりの数だというべきだろう。ここまでの規模だというのはあまり認識していなかったし、日本では世界史などでもあまり教えられていないのではないかと思う。当然ながら、イタリア南部の発展や経済成長にかなりのダメージを与えたであろうことは想像に難くない。
南部で政府を信用しない気風が高まったことは、当然ながらマフィアやカモッラなどの犯罪組織の伸長にもプラスになっただろう。ファシスタ政権時代のチェーザレ・モーリは徹底的にシチリアのマフィアを弾圧したことで知られるが、連合軍は南イタリア上陸後むしろ彼らを利用したらしく、戦後のイタリア政界の宿痾の一つともなり、モーロ首相が暗殺されたり、アンドレオッティ首相との関係が取り沙汰されたりということにもつながる。
イタリア人の南米への移民というと有名なのは1880年代に書かれた「クオレ」に出てきてカルピスでアニメ化もされている「母を訪ねて三千里」のエピソードだが、マルコは北西部のジェノバの子供で母親がアルゼンチンに働きに行くわけだが、これもこうした移民群のエピソードの一つではあるけれども、典型的な南部の農民たちとは少し事情が違うので参考にならない部分もあるだろう。
イタリアでは戦後になっても「南部問題」は残ったわけだが、北部のトスカナ語を母体にした標準イタリア語と、南部のシチリア語とでは実はかなり言語系統が違うのだけど、通じないわけではないから一般にはシチリア語はイタリア語の「方言」とみなされていて、標準語を話せない人たちという差別もあったというのはうーんと思った。以前読んだ「ナポリのマラドーナ」なども読み返してみないとなと思ったりした。ファシズムの例だけでなく、イタリアというのは興味深くはあるが難しいところも多いなと改めて思った。
また今回も英語版のWikipediaがかなり参考になったが、日本語での研究本も出てくると良いなとは思う。
***
https://x.com/SugioNIDS/status/1940046060963209720
高橋杉雄さんのツイートで紹介されていた「中国初の偽情報」という文書の内容が興味深かった。
https://www.mod.go.jp/j/approach/defense/infowarfare/pdf/infowarfare.pdf
こういうものは主に動画で配信されているようだが、中国語の情報だとそれは中国人・中国系に拡散されるので、そういう場面で日本が不当に不利になる場合もあるから、対抗的に正しい情報を出していくことは重要だと思った。これは「認知戦」と呼ばれるようだが、ウクライナ関係の偽情報をロシアが盛んに出しているように、中国も日本に対して敵視していることはこういうことでも明確に伺われるなと思う。中国やロシアに接近の動きを見せている政治家にはそういう点においても要注意であるなと思う。それが自民党であるのも困った話なのだが。
***
国会も終わり参議院議員通常選挙も近づき、各党の政治的主張が活発になっているが、首相周辺がズレた認識を示しているということがTwitterで話題になっていた。
https://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/20250630-OYT1T50163/
https://x.com/SatoMasahisa/status/1939666000640975184
これは佐藤さんのいう通りだと思う。自民党の支持が減り、国民民主党や参政党に支持が流れれているのは、彼らの主張が共感を得ているという以前に、自民党自身に問題があるからだということがきちんと認識されていないのは困ったことだと思った。
一番大事なことは、「自民党がリベラル政策をやってもリベラル票は来ない、保守票は逃げる」ということである。自民党はもともと左右のウイングが広い政党ではあったが、その中で「左右のバランスを取る」というようなことをいまだに岸田ー石破ラインはやっているということなのだろう。安倍で右に振れたから左に振るのがいい、というような考えで。しかしこうした考えは現状にあっていない、新自由主義時代が終わり、世界がトランプ時代に突入する中で左や親中親露派、緊縮財政派に振れることの深刻な意味が認識されていないのだと思う。端的に言えばアナクロニズムの発想である。
はっきり言えば、安倍長期政権によって、自民党は「振れ幅の広い政党」から「保守政党」に、「財務省べったりの緊縮政党」から「財政積極派政党」に「「なった」」のである。だから、リベラル寄りだったり緊縮よりだったりしたら「「絶対に」」選挙には勝てない。石破さんが左翼にいい顔をする政策を打ち出したらと言って、「安倍氏ね」とか言っていた人たちが自民党に入れるようになるかと言えば、あり得ないだろう。そのことを自民党所属の議員たち自身が理解しないといけないと思う。「君たちはもうリベラルでは生き残れないのだ」と。
前回の岸田政権下の参院選で自民が勝ったのは安倍さんの弔い合戦の側面もあったし、昨年の石破政権下の総選挙では惨敗した。その前の岸田政権下の総選挙では必要議席数は維持はしているが、議席を減らしていることも注目されるべきだろう。安倍政権終了以降、自民党は選挙に負け続けてるのだ、本当は。その辺を直視しないといけないと思う。左派リベラル政党はいくらでもあるのだから、いくら自民党が左派に色目を使ってもそういうものを好む人は自民党に入れるようにはならない。寂れたスーパーでワインを扱ってても、そういうものが欲しい人は専門店か酒屋に行くだろう。
だから、自民党が日和って左にウケがいいことをやり始めたら、当然ながら「保守だから自民党を支持していた人たち」は離れる。その人たちが参政党支持に回ったことを「これだけの支持があるのは脅威だ」などというのはあまりに他人事すぎるだろう。この辺りは岸田ー石破ラインの「目が曇っている」としか言いようがない。
このままいけば参院選で自民党は負けるだろうし、そのときにどのように連立を組むのかはかなり重要な話になってくる。負けた場合は石破さんは交代すべきだろう。国政選挙で二連敗して政権に居座るのはあまりに常軌を逸しているが、まずは流れてしまった保守票が返ってくるような布陣を敷かなければ、未来は危ういだろうと思う。
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