東京都議選の選挙結果について:参政党・国民民主党の躍進と自民大敗、当選者ゼロの維新と再生/「江藤淳と加藤典洋」自分自身を参照しながら読む充実/戦後言論空間における保守であることの苦しみ

Posted at 25/06/23

6月23日(月)曇り

今朝はどんよりとした梅雨らしい空。寝苦しいわけでもなかったが3時半ごろ1度目が覚めた。トイレに行ってもう一度寝床に入ったら起きたら4時40分ごろ。神経が張っている部分と休息を必要とする部分が両方あるんだなと思う。

https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/togisen/2025/

昨夜は都議選の開票速報を見ていたがあまり結果が出ないうちに寝落ちしたので今朝一通り見た。投票率は47.6%というのは東京の投票率としては低くない。前回は42.4%だから5%以上回復している。若者が積極的に選挙に行ったのだろうか。世代別投票率は見ていないのだが。

結果から見ると、全127議席のうち自民党が18議席というのは大敗だろう。政治資金問題で非公認になった三人を追加公認して21議席、それでも過去最低を更新した。一方で小池知事の都政与党である都民ファは31議席で第一党に。公明は四人ぐらい落選していると思うが今まで圧倒的な安定感を持っていた都議選で落選者が出ること自体36年ぶりで19議席。自公で47→40と7議席減らした。都政与党3党の合計は71で過半数の64を上回っているから都政運営に影響はないだろうが、都民ファが第一党になったことで小池知事の発言力はより強まるかもしれない。まあ今でも十分強いのだが。

そのほか国民民主が9議席、参政が3議席を初めて獲得。参政は定数の多い世田谷・練馬・大田で議席を獲得。国民民主は23区で9議席とり、参政党が取った世田谷・練馬・大田でも当選させているので、この辺りが今回の選挙では台風の目という感じか。

そのほか、一人区の千代田区で当選したのは元NHK党の人、私が国民に投票した江東区では無所属(自由を守る会)・国民・無所属→自民・公明の四人が当選。「自由を守る会」は元みんなの党の上田令子(江戸川区で当選)が代表なので、いずれにしても江東区は本来の保守地盤の強さが復活した感じ。2年前の柿沢・木村vs山崎の保守分裂区長戦以来低迷していた保守地盤が復活した感じはある。江戸川葛飾などを見ても、東京東部は保守が強いなと思う。

逆に杉並・板橋・練馬の3区では立憲・共産の議員が当選していて、東京西部は左翼勢力が強いのは相変わらずなのだが、先に書いたように練馬では国民・参政も当選していて、まさに多様性である。

七人区の大田区は現職が四人落選。国民、共産、参政が当選。大田区は湾岸もあり空港もあり工場地帯もあり高級住宅街もあり大学もあり池上本門寺もありの多様な地域だが、日本の現状をよく反映した結果という感じだ。落選者が公明2人、維新、再生2人ということでどの党が失敗したのかもよくわかる。

練馬区(七人区)は自民・公明・都民ファ・国民・立憲・共産・参政とオールスターキャスト。立地はかなり違うはずだが大田区と似ている。農業が残っているということで「生産者の立場」に立つ人が一定の力を持っているということもある気はする。

都下(市町村部)は中央線沿線が左派が強いなというのと国民・参政が一人も当選していないというのが逆に印象的だった。落選者は国民5・参政1なので参政は立候補者擁立が間に合わなかった感もっと立てていたら当選したかも。国民は区部では善戦しているが、都下ではダメで、このところの支持者離れも結構響いているだろうと思う。

今回のポイントというか従来の選挙との違いなどを考えてみると、自民の歴史的大敗・公明の全員当選途切れる・国民の中途半端な進出・参政の躍進・維新の全員落選など選挙民が何を求めているのかがかなり明確になったように思う。都知事選2位の石丸元安芸高田市長が立ち上げた再生の道も42人立てて当選者ゼロ。都知事選より地域に密着した都議選では空中戦は通用しなかったということだろう。維新がゼロというのは思わず笑ってしまったが、所得税控除額の引き上げに反対し高校無償化などという無駄な政策を通したことを都民は見ていたということだろう。もともと「自民党にお灸を据えるため」に入れる政党というのが関東では強かったのに、国民や参政にその座を奪われたということが大きいようには思う。

いずれにしても岸田元首相の安倍派切りによって自民を見限った層が国民・参政に流れ、国民のチョンボによってさらに参政に流れたという観測は多分間違ってない。参政は30代以下の支持がかなり強い。

Twitterを見ていると自民を見限った層が国民に流れていたのに山尾・須藤擁立で激震が走り、それでも「参政はなあ」という感じの意見が多いが、これはTwitterの政治クラスタが比較的高年齢層だからだろう。参政の支持者は若い層を中心に確実に増加しているので、左よりの高齢者層が退場すれば一気に伸びる可能性もある。参政の主張にはいろいろ問題が多いところがあるのだが、これを増やしたのは去年の自民党総裁選での岸田前首相の石破推しにあったと言えるだろう。安倍自民党が支持を集めていた若年層の右寄りの層が急激に離れた責任は現前首相にあるのは間違いないだろう。

***

昨日は夕方いろいろやっていたら遅くなったが7時前ごろに家を出て岡谷に。この時間になると夏至直後とはいえもう暗い。さっさと書店まで車を走らせ、少し立ち読みなどしたが、買わなかった。一番面白そうだったのが「源頼信」(吉川弘文館人物叢書、2025)だったが、今読んでいる本を優先しようと思って買わなかった。ただ摂関期と院政期では武家貴族の動き方が違う、というくだりが興味深かった。頼信・頼義の時代と義家の時代の後半以降とでは確かに世の中の動きが変わってきている感じがする。平正盛が院の近臣として活躍する一方、義家は後三年の役の私戦を理由に逼塞させられたわけで、摂関期はまだしも「朝廷」の合議制が生きていたのが院政期になって独裁化したことは時代に大きな変化をもたらしたのだろうなと改めて思った。

帰ってきて夕食、テレビをつけると都議選速報をやっていたので寝落ちするまで見ていた。

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昨日の日中は與那覇潤「江藤淳と加藤典洋」を167ページまで読んだ。ようやく半分越えである。この辺り、いろいろと思うことはあるのだがまだまとまってないのでまた後ほど書きたい。

ただ思ったのは、こういう本を読んでいると自分の調子が良くなる部分があるということだ。與那覇さんの論旨には自分としては結構異論はあるのだが、文学や政治にまたがって自分が今まで読んだことや調べたこと、思ったことと照会しながら読むことになる。それはある意味自分の中身を総動員して読んでいる感じになる。これはイタリア近世史を読んでいたり哲学の本を読んでいたりするときには得られないもので、自分が現代という時代、戦後という時代の後半を生きてきたことそのものが参照対象になるので、読書経験・政治経験・政治に向かう姿勢、特に左右の方向性の変換、保守の思想と革新の理想、父が言ったこと、周囲の人間が言ったこと、その時代その時代の自分の周りの政治的雰囲気、そのほかひっくるめて自分の生そのものが参照対象になる読書経験になっているということである。

その中には知らなかったこともあるし、自分が知っているのに敢えてかどうか與那覇さんが言及していないことなどもあり、それについて考えたりもするわけである。江藤淳という人の保守のスタンスが戦後の言論空間の中で保守的に生きることの自己欺瞞の不条理に耐えながら生きること自体を肯定的に評価していた、というものだという指摘を読んで、彼のスタンスについての見方が整理された気がした。

私はどちらかというと「1946年憲法 その拘束」みたいな右派の論客として彼のことは見ていたし、ウォーギルトインフォメーションプログラムみたいなものの告発者として見ている面が強かったから、彼の内面のナイーブさみたいなものにはそんなに関心はなかったのだけど、彼の著書の中で唯一読みやすかった「妻と私」は文藝春秋に掲載されたときも単行本化され手からも買って読んだので「生きるのが大変な人」だという印象はあったのだが、その二つがどのように結びついているのかはあまりよくわかっていなかったなと思う。

戦後の言論状況への絶望というのは保守系の思想家が繰り返し表明し、かなり多くの場合に自殺に結びついているわけだけど、林房雄・福田恒存・黛敏郎・石原慎太郎のように黙々とその主張を繰り返すことによって存在感を保っていた人たちもいる。自裁した人と言うと三島由紀夫・江藤淳・西部邁と言うことになるが、福田和也や政治家で言えば安倍晋三元首相もそうだけど、生を全うできなかった人も残念ながら多いなと思う。

石原慎太郎のようにそうした絶望とは無縁に見える人も、晩年の曽野綾子との対談でかなり虚無的なことを言っていて驚いたことがあり、保守を看板にこの時代を生き抜いていくことがいかに困難なことか、或いは困難なことだったかを改めて感じるのだが、私自身1995年の阪神大震災とオウム真理教事件への対応において左派を見限って以来、なかなか生きづらいと言うか向かい風の強さを感じていたので、これ自体はよくわかる。そうした右派の生きづらい空間がついに80年経って参政党のようなものを生み出したのかと思うとある種感慨深さがある。

私は参政党の主張には賛同できないところが多いけれども、こうした主張を持った政党が出てくること自体はとてもよく理解できる気がする。彼らの主張を吟味して、より民主政治と適合的な保守の政治集団にしていくにはどうしたらいいかなどは考えてもいいテーマだなと思う。

***

「ふつうの軽音部」71話についてももう少し考えてから書きたい。


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