「多くの人の話を聞く政治家の凄み」と「相手の尊厳を尊重しつつ日本の自己像を受け入れさせること」:麻生太郎「自由と繁栄の弧」と先崎彰容「知性の復権」/阪神大震災31年と第6回共通テスト
Posted at 26/01/17
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1月17日(土)晴れ
1月17日と書くと、1995年の阪神大震災を思い出す。関東大震災の1923年9月1日、東日本大震災の2011年3月11日と並んで、地震国日本で起きおくすべき日だろう。2024年1月1日の能登半島地震ほか、地震とともに生きていかざるを得ない日本で、こうした日が記憶されていくのは大事なことだろうと思う。
また、今日は第6回大学入学共通テストが始まり、多くの受験生が最初の試験に臨む。昨日は東京で大規模な交通機関の混乱があったし、受験票の各自プリントアウトや写真付き身分証持参など変更点も多い。落ち着いて実力を100%発揮できるように頑張っていただきたいと思う。
それにしても今年で共通テストも6回目。初年度の2021年はコロナ2年目、一番コロナの影響の大きい入試であったと思われる。入試制度を変更していくのも良いが、こうした様々な不測の事態が起こったときに一番影響が大きいのは受験生なので、その辺りも関係者は大変だなと思われる。
***
昨日は午前中に母を地元の病院に連れていく。ちょっとトラブルはあったがとりあえずは受診を終わり、施設に送り届けたあと、コンビニでSuicaをチャージしてお昼をかい、ツタヤに「龍と苺」の24巻を買いに行ったら棚に「応天の門」の21巻があり、明らかに買っていなかったので一緒に買った。調べるとすでに8日に発売されていたことがわかり、見落としていたことがわかった。時々そういうことがある。帰りにクリーニングに寄ってズボンとワイシャツを出した。それにしてもローソンで買い物をするといつも麺類のお買い得クーポンが付いてくるのはなぜなのだろうか。麺類を買わないので使ったことがない気がするのだが。
昼食を食べた後、「知性の復権」を読んでいて興味がでたので隣町の図書館まで車を走らせて麻生太郎「自由と繁栄の弧」(幻冬舎文庫、2008)を借りた。少し読んで、この人は頭のいい人だなと思った。
特に印象に残ったのが、「いろいろな人がこう言っている、こう考えている」という描写の仕方で、これは学者であるとか市井の人たちではあまり言わない言い回しで、とても政治家らしい言い方だなと思ったのである。政治家、特に保守政治家は、人の話を聞くのが大きな仕事の一つであるなと思うし、その聞き方というか、こういうことを人々が言っているという説得力というか、凄みがあるなと感じたわけである。
もちろん人間であるから話を聞ける範囲は全てではないわけだけど、政治家というものは様々な陳情がやってきてこれはどうにかならないかと相談が持ちかけられる。私も近い親戚に政治家がいたからいろいろ相談に乗ってもらったこともあるし、彼らは基本的に真摯に話を聞き、対応を考えてくれる。親戚だから何かを周旋してもらうことなどはないけれども、一般的にこれはこう考えておけばいいのだ、という基準を与えてくれるので、非常に考え方が整理されやすくてありがたかった。支持者であれば、何かをこちらのためにうごいてもらえるということが有難いとは思うけれども、こちらの立場としては話を聞いてもらって世の中ではこうだ、ということを教えてもらえるだけで十分有難いことだったなと亡くなってから思うことは多かった。
その人は地方政治家であったけれども、国政の政治家であれば人の話を聞くその幅はもっと広いだろうし、まして麻生さんのような存在であれば本当に様々な人、皇族から実業家、政治家や役人だけでなく地元の人たちの声、また工場や炭鉱の労働者の声まで、もちろん外国の人たちも含めて、様々な人の話を聞いていただろうと思う。
もちろん運動家の話であるとか学者でも政治家を罠にはめてやろうというような話をする人の話は丁寧には聞かないだろうし、本当に困っている人たちの声などをどこまで聞いているかと言えばわからないけれども、かなり多くの日本人の最大公約数の声を、ずっとじっくりと聞いてきているという印象が、少し読んだだけで感じられた。
「知性の復権」では日本人の自己(アイデンティティ)像をどう作るか、というテーマについて書いているときにこの麻生さんの著作が出てきたわけだが、そこで述べられている話は、2001年の同時多発テロの時にアメリカがイラクを攻撃した際、麻生さんは第一次世界大戦の時を思い出し、苦境のイギリスを援助しなかったために戦後、日英同盟が解消されることになって、それが第二次世界大戦の敗北の遠因になっているということを想起し、アメリカが困っているときにしっかり支援しなければ同じようにアメリカが日本に対し不信を抱くかもしれない、ということからつまりはイラク派兵に踏み切った、というスパンの長い発想をしている話だった。
このことは例えば岸田さんのアメリカ議会での演説にも引き継がれているわけで、「アメリカは孤独ではない」と演説したことがアメリカ議会で党派を超えて歓迎ないし感動されたということはある。それを考えると、日本の政治家がことあることに「日米同盟は堅持される」「日米同盟は揺るぎない」と強調するのは、「日英同盟破棄の轍は踏まない」と言っているのだなと改めて感じた。
ここはまだ麻生氏の著書で読んでいない部分ではあるのだが、日本が日頃馴染みの薄い国々であっても、「厳しい競争環境の中、国家の誇りにかけて、自分らしさを打ち立てたいとも思っているでしょう」という指摘について、先崎さんが日本がいかにそれらの国々の尊厳を重んじながら、日本の自己像に賛同してもらえるかが外交の鍵になる、と指摘しているところが重要だと思った。
それを考えると、高市さんが体当たりで横須賀の軍艦でトランプと仲のいいところを表現したり、韓国の大統領とドラムを叩いたり、イタリアの首相とハグしあったりしているのは言葉だけでなく態度でそうしたものを表現しようとしているのだなと理解できる。
もちろん中国のような潜在的な対立国、いわば仮想敵国について同じようなことをするのが妥当でない場合は多いだろうと思うが、垂大使が中国の政府内に多くの「話のできる相手」を作っていったのと同じように、国としては対立しても個人としては尊重し合える相手を作っていくことは大事だろうと思った。
「相手の尊厳を尊重することで日本の掲げる自己像を受け入れてもらう」というのは大事なことだとは思うがそう簡単なことでないことは、韓国との長い間の関係を考えるだけで理解できるだろう。そしてまた、台湾人が日本人に苦言を呈するときに、台湾の尊厳についてどれだけちゃんと考え尊重しているかは考えなければならないことだなとは思った。
トランプのアメリカやプーチンのロシア、習近平の中国のように軍事力や経済力、イデオロギー的な指導力によって力任せで他国の態度を変えさせるやり方は、今の日本にはできない。しかしかと言って今の日本の国力を考えればそんなに卑屈になることもないのであって、尊厳を尊重しつつこちらの自己像も受け入れさせながら世界戦略を浸透させていく、というやり方がベストであることは間違い無いだろうと思った。
そして問題になるのが「日本の自己像」であるわけで、その辺りはこの先で考えていきたいと思う。
***
「人の話をよく聞くのが政治家の仕事」という点では、日本の保守政治家は本当に多くの人の話を聞いていると思うのだけど、それは例えば麻生さんの曽祖父にあたる牧野伸顕もまたそういう人だった印象があり、宮中に入るまでの間は人の話を聞いて最適の対応を導き出す才能が非常に光っていたように思うし、それは彼の自伝などを読んでいても他国に対する対応においてもそうだったように思う。
しかしその彼ですら、満洲事変やそれ以降の陸軍の動きについては全く動転した対応をしているわけで、つまりは牧野が多くの人の話を聞いているにもかかわらず軍人の、特に昭和陸軍軍人の話をちゃんと聞ききれていなかったのだろうなという気がした。おそらく彼の経歴から言って薩摩閥や長州閥の多くの軍人の話などは聞いていたのだろうと思うけれども、それのアンチとして成長してきた昭和陸軍というか、上原勇作・宇都宮太郎・それに一夕会のような藩閥時代には非主流派・反主流派であったグループが陸軍で発言力を強めるようになってからの軍人たちはすでに彼に反感を持っていたため、ちゃんと話を聞けていなかったのだろうなという気がした。
今でも政治家たちは永田町や霞ヶ関の話、せいぜい地元の人たちの話はちゃんと聞いても、多くの現場で働いている日本人たちの声がどのくらい届いているかはわからないところが多い。例えていうなら、統一教会の話は聞いても統一教会に被害を受けている人たちの話がどのくらい聞けていたかどうか。もちろん人間としての限界はあるにしても、上手の手から水が溢れるのは話を聞けてなかった人たちの思いがけない動きからなのだろうと思う。政治というのは大変な仕事だと思う。
***
昨夜は11時から「葬送のフリーレン」の第二期第一話を見てから寝たのだが、どうも疲れが出てしまって朝起きたら6時を回っていた。それでその後の予定が押せ押せになってブログ/noteを書き始めたのが9時半ごろになった。というわけで今日は少し短いがこの辺で。
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