加藤喜之「福音派」を読み始める:「ジミー・カーターのborn again(回心)」とトランプ支持の「終末論を唱える人々」が繋がった/父の蔵書の整理/マンガを探す
Posted at 25/11/04
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11月4日(火)晴れ
今朝は3時過ぎに目が覚めて、流石に早いかともう一度寝ようとしたがいろいろ考えていて起きることにし、4時前からいろいろやっている。考えているうちに川喜田二郎「KJ法」が読みたくなり、父の蔵書を探したが見つからなかったので作業場に自分の本を撮りに行ったのだが、空が目に入って見上げると星が綺麗で、南西の空にオリオン座と大犬座が見え、南東の空に明るい星が見えた。何か惑星だろうと思うのだが。今調べてみると子犬座と双子座の間に木星がいるので、多分木星だろうと思う。冬の豪華な星座の中に明るい惑星がいると本当に華やかである。
父の本棚の整理が全然進んでいないのだが、自分の視点から見た利用しやすさを考えて少しは整理したのだが進まず、肝心な時にみたい本が出てこないというのはどうも整理の仕方が悪いなと思い、父が中心的に取り組んでいたことを中心にして本棚を再編した方が自分にとっても利用しやすいのではないかという気がしてきた。父や祖父の蔵書は他の場所にもあるので、その辺りもそういう視点から自分が利用しやすいようにまた整理した方がいいのかなとも思う。
昨日は早めの時間にブログ/noteが書けたのでいろいろやろうと思っていたのだけど疲れが残っていて休み休みいろいろなことに手をつけたという感じだった。概ね家の中の清掃・整理を少し進めたということと仕事に関するnoteを作ろうと思って職場にパソコンを取りに行って近所の人に会って挨拶したり、そのあと西友へ行ってお昼の買い物をしたりした。結局だらだらした時間が長かったが、それで少しは疲れが取れたのかなと今朝起きてみてからは思う。
夕方、岡谷の書店に出かける前にと思ってマンガの単行本と雑誌を整理していて、実家にあるものを作業場に運んで少し整理していたら「見える子ちゃん」の12巻がないことに気づき、いろいろ調べてみてどうやら買ってない、ということに気がついて、予定を変更してまず近くのツタヤから探すことにした。13巻はすでに読んでいるのだが、よく知らないキャラが出てきていておかしいなと思ってはいたのだった。調べている過程で30日に発売だった「れんげとなると!」5巻、「ありす、宇宙までも」5巻、「BLUE GIANT MOMENTUM」6巻も買ってないことが判明したので、まずは揃っていそうな書店から探すことにしたわけである。
というわけでツタヤに行ってみたら思いのほかサクッと「見える子ちゃん」12巻も含めて全冊買えたので、改めて岡谷に行くかどうか考えたのだが、もう暗くなってるしという消極的な発想が大勢を占め、行くのをやめて近くのスーパーに行って夕食を買って帰ることにした。
暗い中をいつも行かない方向からそのスーパーに行ってみたらなんだか違う場所に来たような感じがして少し面白かったのだが、惣菜はもうあまり残っていなかったのであるものから選んだ感じ。夕食は昼の残りと買ってきたもの、昨日の飲みかけのバドワイザー、という感じになった。まあ十分美味しかったのだが。10時に就寝。
***
加藤喜之「福音派 終末論に引き裂かれるアメリカ社会」(中公新書、2025)読み始めた。福音派については今までもそれなりに読んでみたりはしていたのだが、ネットでこの本についての著者を含めたやりとりを読んでいて、かなり得るものがあるのではないかと思ったから買ってみたわけである。
まだ「まえがき」を読んだだけだが、かなり得るところがあった。
福音派という存在はブッシュJr政権時にテレビでその特集をしているのをみて認識していたのだが、実はもっと前から自分の視界の中にいた、ということをこれを読んで理解した。
新しく知ったことや、自分の中でそういう存在に実は遭遇していた、ということについていくつか書いてみようと思うが、まずかなり重要だと思ったのは、「福音派は宗派(長老派とかバプテストとか)を超えた存在であり運動」であるという点。私は「福音派」というグループが明確に存在し、他の教会から離れた集団として存在していると思っていたのだが、おそらくはその勢力が強い、というかその勢力が支配している、あるいは最初から彼らが設立した教会ももちろんあると思うが、ある意味どの集団にも「福音派」は存在するということで、それはつまり自らが神による救いを自覚し宗教的な回心を体験したら、その意味での福音派にはなるということであるようだ。つまり社会的勢力にはなっているが、起源としては個人の体験が大事だということなのだろうと思う。
もちろんこれは19世紀に起こった大覚醒運動などと同じように自分に近い人が回心を体験したら自分にも起こる、みたいな宗教的・思想的伝染性を持っていると思われるので、その起点になる人の影響力みたいな話は当然あるだろうと思う。
この勢力が政治勢力として台頭したのは1970年代後半だということなのだが、驚いたのは、1976年の大統領選挙の時にジミー・カーターが自らを「born again」である、つまり神の前で宗教的回心を体験して「生まれ変わった」と発言したことが彼らが表に出てくる大きなきっかけになったということだった。
ジミー・カーターといえばドルショック・ウォーターゲート事件・ヴェトナム撤退などアメリカの最不調期に現れた「人権外交」を唱えた民主党の大統領で、現職でありながら共和党のレーガンに負けた、という「パッとしない」印象の強い人で、彼はどちらかというと「人権」という理念の人、もっといえば「福音派」とかよりはwokeなどの「人権派」の祖のように私は思っていた。
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-34006916
As a office holder, Mr Carter was driven by a mixture of born-again Christian spirit, a sense of independence and a liberal tradition. The latter was inherited, not from his father, who was a white segregationist, but from his mother, Lillian, who joined the Peace Corps at the age of 68, and spent two years working as a nurse in India.
このBBCの記事をDeepLで訳してみたのが以下の文章である。
「公職に就いたカーター氏は、生まれ変わったキリスト教徒としての精神、独立心、そしてリベラルな伝統という複合的な動機に駆られていた。後者は、白人分離主義者だった父親からではなく、68歳で平和部隊に参加し、インドで2年間看護師として働いた母親リリアンから受け継いだものだった。」
カーターは白人分離主義者(白人の血統的純粋性を重視するということか)の父親と社会奉仕活動に従事した母親がいて、独立心とリベラルな伝統を重視する姿勢は母親から受け継いだ、というわけである。
私は実は90年代にカーターに会ったことがある(以前も書いた覚えがある)のだが、当時彼は故郷のジョージア州プレーンズという人口500人余りの田舎町に住んでいて、日曜日に教会でスピーチをしていたのに、当時その隣町に留学していた私の元妻と一緒に聞きに行き、終わった後は行列に並んで握手して写真を撮ってもらったりしたのである。その時は「初めて出席した人」が一人一人どこからきたかを自己紹介していて、私たちが名前をいい、「From Japan」というとおお、という声が上がったことを覚えている。
直接会ったことのあるアメリカ大統領は彼だけなのだが、当時の私の認識はもう引退したおじいさんがボランティアで社会活動をやっている、程度の認識だったのだけど、「福音派を世に出した」きっかけになった人でもあった、というのは私に撮ってはかなりの驚きだった。あれはつまり、彼にとっては老後の老後の楽しみみたいなものには留まらず、「個人的」に北朝鮮外交に乗り出したりするのと同じような宗教的・政治的活動の一環だったということなのだなと認識を改めた。
この本によると、カーターの発言をきっかけに行われた調査で自分が「born again」であると認識している人が、実はアメリカ人の34%にも上ることが明らかになり、強い驚きとして受け止められ、NewsWeekはこの年を「福音派の年」と呼んだのだという。
この頃から福音派は徐々にアメリカの政治シーンで存在感を高めていったわけだが、彼ら福音派の目的は「古き良きアメリカ文化を守る」ということではあるが、その背景にあるのは彼らの持つ「終末論」であり、黙示録で示された終末に向かって世俗化や道徳的大敗との戦いが義務と感じられている、ということなのだという。
福音派にとって、こうした社会的な「悪との戦い」というのは社会の具体的な問題との対峙であると同時に「悪」の背後にある超自然的な悪(サタンや悪魔)との戦いでもある、というのは知ってはいたが、こうした学問的な本にまでそう書かれるのかと思うとちょっと驚いたのが正直なところである。
上にも書いたように、私が「福音派」という集団をマスコミ的に認識したのは、2000年総選挙でブッシュジュニアが当選したときに支持層として取り上げられていたのをテレビで見たからなのだが、考えてみると90年代にはすでに元妻から「友達に大きな教会に連れて行かれたが、みんな牧師の説教を聞いて涙を流していて、彼らのような信仰の強いアメリカ人にはついていけない」ということを聞いていて、なるほど90年代にはすでにそういう感じだったのだなということを思い出したりした。
つまり、よく言われるように福音派がトランプの支持基盤になる以前でも、すでに共和党候補の支持基盤ではあったということである。それを考えると、911同時多発テロを受けてのブッシュジュニアの「悪の枢軸」などの表現も、こうした宗教的背景からきていた部分はあるのだろうと思ったりもする。ネオコンとの関わりはまだ読んでないが、これから出てくるのだろうか。
福音派は当初はエリートから見向きもされなかったわけだが、68年革命から続くアメリカ文化の多様化への対抗軸として勢力を伸ばした彼らは現代ではアメリカ文化の一極を担うようになっているわけで、民主党側から見れば分極化を深めている元凶になっていると考えられているわけである。
彼らがイスラエルを支持するのも「終末までの日程」みたいな信条からパレスチナにおけるユダヤ人国家の成立が必須とされている面があるというのは読んだことがあるけれども、そうした終末論的な世界観というものを理解する必要はあるだろう、というのは以前から思っていたけれども、カーターのような一方でリベラルでもある福音派=born againとの関係はどうなっているのかとか、もっと知りたいことも結構ある。
福音派の影響力を分析することは現代アメリカ社会の対立構造を理解する糸口になるという著者の主張はもっともだと思うので、この辺りは読んでいきたいと思った。
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