ノーベル医学生理学賞と「はたらく細胞」:制御性T細胞をめぐる学問的業績とフィクションのありうべき関係/「自分を取り戻す」というテーマ/フィジカルな消化不良
Posted at 25/10/10
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10月10日(金)
昨日は午前中松本の整体に出かける。早めに出たし道も順調だったのだが、途中のセブンで大丈夫だろうと思ってトイレにより、水を買って道に戻ったら思ったより時間を食っていてギリギリになった。昨日はナビを使わないで行ったので、「到着予想時刻」が出てなかったと言うこともある。まだ試行錯誤だなと思う。
あまりよく眠れなかったせいもあるが操法を受けている間に一瞬眠ってしまった。どうも最近食べ過ぎだなと言う自覚はあったのだが、それを指摘されてみるとそうだよなあと思う。前回は本をいろいろ読みすぎて頭のつまりメンタルな消化不良を指摘された感じだったが、今回は物理的な、フィジカルな胃腸の消化不良を指摘されたと言う感じか。
帰りに南松本のイオンに行ってみたのだが、整体の指導室からは10分ほどのところだった。だから実家からは大体1時間ちょっとと言うことなのだと思う。帰りも高速を使ってみたが塩嶺トンネルの手前から渋滞し、抜けるのに20分ほどかかった。下道とどちらが早いかは難しいところだなと思う。
帰ってきて昼食後はやはり疲れが出た感じで少しうたた寝してしまった。
***
「自分を取り戻す」と言うテーマで少し書こうとしているのだが、これは考えてみると2008年ごろ読んで感銘を受けた「ずっとやりたかったことを、やりなさい。The Artists' way」と同じことを言っているのだなと言うことに気づいたり。またそう言う言葉にならないことを言葉にしようとしていると言うことに関しては、若い頃KJ法に求めていたことと同じだなと思ったり。「自分の主体」と言うものと「やりたいこと」と言うのはかなり関係があるのは確かだが、それが全てではないと言う面もあり、主体というのを言葉にするのは難しい、といつも思う。「実存」みたいなものをそれに関連づけてみたりもしたわけだけど、なんというかそういう「語り」が自分にとって納得的か、という問題はあって、まあその辺のことを考えるのはまだこれからかな、という気はする。
Artists' Wayのそれぞれのレッスンに出てくることが「取り戻すべき自分」と関係あるなということも今気がついたので、その辺のところを読み直してみるのもいいかもしれないと思ったり。
今作業場に行って本を取ってきてみたら章立ての各項目が「〜を取り戻す Recovering 〜」になっていて、なんというかなるほどと思ったり。この本を初めて読んだ17年前は「失われた」とか「取り戻さなければならない」みたいな切迫したものがあるというよりは言ってることが面白いな、という程度の感覚で読んだのであまりいろいろ自覚されてなかったところはあるかなと思う。「取り戻す」、というのは強い気持ちだから、その強い気持ちが持ててないとなんとなくスルッとした感じになるのだろうなと思った。
***
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2510/07/news058.html
ノーベル医学生理学賞を坂口志文氏が受賞したことに関連し、制御性T細胞を擬人化した「はたらく細胞」が話題になっていた。これは月刊シリウスで「進撃の巨人 Before the wall」が連載されていたときに少しだけ読んだ覚えがあるが、細胞の擬人化というのは秀逸な考えだと思っていたけれども、アニメ化・実写化もされているというのは知らなかった。
ノーベル賞の受賞内容によって改めて制御性T細胞が注目されたことでこの作品も注目されたわけだけれども、こういうことが起こると「こういう作品が学ぶ入り口になるのはいいがこれを読んでわかった気になるのは危険」という指摘が必ず出てくる。
こういう指摘に関しては私は以前からいろいろ感じることがあるのだけど、擬人化されたフィクションなんだからそれを楽しめばいいのであって、あれこれ言うのは無粋、と言うのが基本的な考え方ではある。
当然ながらフィクションだからその流れに沿ってその個性が表現・描出されているわけで、この細胞についての全てがわかるわけではない。しかしそれを言えば全てそうなわけで、例えば学校を舞台にしたマンガや小説を読んでいると教員を経験した立場からしてみればこの描写はおかしいとか、そう言うことはありえない、みたいなことはたくさん出てくるし、設定自体がおかしいと言うことも多い。特に都立高校とか限定されると都立にはこう言うことはない、みたいなものがたくさん出てくるので、ついSNSなどにそう言うことを書いてしまい、作者さんがそれを読んで変なアクションを起こすことも多く、そう言うことはなるべく自重しようと思っている。フィクションはフィクションであるのだから。
こう言う指摘をする人は概ねその分野の専門家、あるいはそれに近いところにいる人が多い。制御性T細胞について全く間違った描写なら問題はあるが、そうでないならば必要以上にコメントしないのが嗜みではある気はする。ただ専門家の立場から言えばもちろん理解できるところはあって、例えば「リエゾン」と言う子供の精神科を舞台にした作品がスタートしたときに、関係者の間で「間違った認識が広がらないだろうか」と言う懸念の声はあった。ただ実際には様々なケースがフィクション化されて取り上げられていて、20巻以上続いたから概ね好評だったのではないかと思うのだが、マンガやドラマの影響力の強さに対してそうした懸念が起こること自体はわからなくはない。
特にそう言うことが起こりやすいのが歴史の分野であることは確かだ。歴史というのは史実を知り歴史の流れを考えるという正統的な歴史学の分野としても人気はあるが、歴史を題材にしたフィクションというのも昔から人気のある分野であって、その描き方もなるべく忠実に史実を取り上げる人からフィクションの度合いが高い人もいて、フィクション度が高いと誤解は少ないが、史実に近いと全てを史実と考える人が出てくることがいることもまた確かだからだ。
特にそれを指摘されたのは司馬遼太郎で、彼の描き出す人物たちが「考えたこと」が、そのまま実際の人物たちが考えたことだ、となる誤解がとても多いのだろうと思う。主人公として取り上げる人たちはある意味主人公補正されているから、必要以上に英雄的に描かれるわけで、その辺りで坂本龍馬が過大評価されているとか、そういう指摘はそれなりには正しいのも確かである。
ただ坂本龍馬の存在は同時代よりも明治の途中から注目されるようになったということもあり、坂本という個人の魅力そのものはあるのだと思う。その魅力を表現しようとしたらフィクションが入るのもある意味仕方のないことで、これは当事者・関係者の話や自伝の記述だけを集めたところで「○○伝説」みたいなものは必ずできる。日本史の分野では特にそうだと思うが小説が面白かったから歴史学を専攻してみたけどやってみたら思ったのと違う、という人は多いだろう。私もNHKの「シルクロード」をみて中央アジアに関心を持ったが少し調べてみて相当大変(言語をめちゃくちゃたくさんやらないといけない)だということがわかって諦めたことはあった。
大学院に通っていたときも、ローマ史の人の話を聞くと社会人大学院生とか聴講生とかの形で退職後のおじさんたちが参加することもあるとのことで、そういう人たちは塩野七生さんの書いていることをそのまま史実だと思っている人が多くて困る、ということを言っていた。学部生ならそういうフィクションや作家の書いたものを読むのもいいがまず基本文献から読め、という指導もできるけど功成り名遂げた人たちが20代の若者に頭から否定されたら可哀想だということもあるし、そういう人たちを怒らせたらそういう方面の予算にも影響する恐れがある、ということすらあり得るわけだから、基本文献の講読とか地道なことをやっている間に「なんか違う」と思って貰えばいいのだけど、そういう人たちに限って「こんな学習はコスパが悪い」とか言い出すわけでなかなか相手が大変だ、ということはあった。
ただ、だからと言ってそういう作品を書く塩野七生さんを非難するのも話が違うわけで、彼らをローマ史などという仕事にも人生にも直接関係ないような世界につなげている功績というものは非常に大きいわけである。その辺のところは正当に評価すべきなのだけど、ローマ史の歴史家や文献学者の売り上げと塩野さんの売り上げでは桁がいくつも違うということもあるのか、なかなかちゃんと評価されないのが気の毒だと思う。フィクションの制作者であり、作家としての人物論評を書くことは正当な行為なのだけど、その作品それぞれをこういう点で良くないと批判するならともかく、全否定から入る人が専門家の中に結構多いことは良いことではないと思っている。
だから「はたらく細胞」に関しても擬人化された細胞たちなどというのはフィクションに決まっているわけで、「サンタクロースはいない」ということに気がつく年代になったらこれはフィクションだということは誰にでもわかるだろうと思う。だから描写や叙述に「こういう問題がある」と指摘するならいいのだけど、「読んでもちゃんとした勉強にはならないよ」という指摘はなんというか余計なお世話というかマウント取りのように感じられてしまう。
世の中にはその分野を極めるための勉強というものと、教養としての勉強や余暇としての勉強というものはあるので、余暇としての勉強の分野にあまりめくじらを立てるのもどうかということをよく思う。日本人は基本的に勉強好きなので特に手軽に勉強してそれなりにわかった気持ちになれるマンガやフィクションは余暇としては良いものだと思う。
ただまあ、書いているうちにこれは割と大きい問題だということをだんだん自覚してきたので、まあここでこれはこうだと結論を出すのではなく、こうした作品と学問的な業績というもののありうべき関係みたいなものについてはまた改めて考えてみたいと思う。
こういうのは学者の立場からの主張だけが正しいというものではないし、読み手その他の関係者など多角的な立場から考えるべきことだろうと思う。
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