石神賢介「おどろきの「クルド人問題」」を読んでいる:「クルド人のこと、僕たち、知らない人に話しちゃいけない、って言われているんで」/「忘却バッテリー」久々の更新
Posted at 25/09/04
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9月4日(木)曇り
今朝は朝から久しぶりに天気が悪い。あまり直射日光が強くないのはいいのだが、なんとなく血圧が低いというか、集中した感じが出てこなくて時間ばかりが経ってしまった。
昨日は共産党の市議に焚書されそうになって紀伊国屋書店がツイートを謝罪したことで波紋を呼んだ石神賢介「おどろきのクルド人問題」(新潮新書、2025)が届いたので読み始めた。石神さんはこのレポートの話を受けるまではこの問題にほとんど関わりのない人だったようで、さまざまな取材のアプローチをしてこの本を書いたのだなというのがよくわかる。そしてそれに協力的だったのは、地元の川口の司会議員の人や、この問題にずっと取り組んできている石井孝明さんなどで、地元のクルド人の人たちやトルコ大使館などはかなり非協力的だったというのが今まで読んだ印象である。
書いてあることは石神さんが取材した印象や、実際に起こった事件など、クルド人たちの解体業のヤードのある地域や、もともと外国人が多い地域でのクルド人の多い店での話などが出てきて、だんだん深いところに入ってきた感じがある。
この本以外のところで読んだのだが、この辺りの地域は市街化調整区域になっていて、開発が制限されているために家屋や商店を建てることができないのだという。農業をするのでなければ荒地になってしまうわけだが、そういう土地にも所有者はいて、それなりに固定資産税はかかるわけだから、クルド人の解体業者らに土地を貸すということはある意味やむを得ない感じもあるようには思った。
住民たちに取材した反応は、困ってはいるけど仕方がないと思っている、ただ女性たちは外に出なくなった、みたいな話で、小学生に話を聞いても特に何もないという感じだったのが、最後に「クルド人のこと、僕たち、知らない人に話しちゃいけない、って言われているんで」と言ったといい、つまりはこういう雰囲気が地域を支配しているのかなという印象はあった。
クルドカー(解体したものを過積載している大型トラック)に追いかけられたという話も、基本的には石神さんが無許可で撮影したことに腹を立ててのことだということで、こちらに非があるということは石神さん本人も認めて書いてはいる。事実を書いて、それは彼らの非ではない、という書き方になっているが、多分そういう書き方が「差別を助長する」という批判につなげるような人たちもいるのだろうなとは思った。
まだ最後まで読んでいないが(第3章86ページまで、全体で190ページ)、私自身としては特に問題を感じるようなところはなく、事実と取材した印象について書いているということだし、彼らの風貌の魁夷さで日本人の女性が怖がるのは仕方がないが彼らが悪いわけではない、というような書き方である。この本をヘイトと非難し書店に取り扱わないように要求するというのは表現の自由とか国民の知る権利から考えて問題が多いし、この本で取り上げられている埼玉医療センターでの100人規模の暴動事件にしても当初はどこも報道しなかったというのはどう考えても異常だと思う。
朝日新聞はそれについて「差別を助長する恐れがあるから報道しなかった」としているそうだが、報道機関はまずは事実を報道するのが使命であり、それをどう受け取るかは受け取る側の判断に任せるべきなはずで、その情報をコントロールすることで世論のあり方を変えようとするのは世論操作であり、彼らがマスゴミと言われ信頼されなくなっている大きな原因であることは間違いない。
大体今の時代に、どんなに情報をコントロールしようとしてもネットを通じてこうした情報はあっという間に拡散していくわけで、コントロールなどは無理なのである。そしてネットの報道はマスコミ側が導こうとしているのと反対の方向にエスカレートしていくことの方が多いわけだから、素直にちゃんと取材して報道した方が彼らにとってよりマシな結果になるのではないかと思う。
問題は、年齢の高い層の中には「朝日新聞でもNHKでもそんなことは報道していなかったから、そんな事件の存在そのものがデマだ」と考える人たちもいるということで、国民の間の情報ギャップがさらに広がってしまうということにある。石神さんのこのレポートは労作だと思うし、これからの外国人問題を考える上でおそらくは一級のレポートの一つになると思われるので、なるべく多くの人が読んだ方が良いと思った。
それにしても、地域の問題の困ったことを取り上げて行政にねじ込むのが常の共産党の市議がそうした苦情を無視して外国人の側に立つのはどういうことなのか、というのはまた別の問題としてあるわけだ。
また違う論点だが、市街化調整区域という強制的に開発をさせない仕組みも、制定された当初は乱開発を防ぐという大義名分はあったとは思うが、結果的に地主の権利を制限し、グレーの業者に土地を貸すしか現金収入に繋げられないなど、返って問題を助長している面もあるようには思った。こうした制度も今後見直す必要はあるのではないかと思われる。
正直論点が多すぎて一冊の本の感想として書くにはかなりハードな感じはあるが、実際の社会問題というのはまあこんなものなんだろうなとは思った。
***
今朝はジャンププラスで久しぶりに「忘却バッテリー」の更新があった。前回の更新が6月26日なので、2ヶ月と少しぶりの更新ということになる。相変わらず面白い。
https://shonenjumpplus.com/episode/17107094910082445808
小手指高校としては一年生投手の瀧の球が打たれているのは氷川側に対策されているからだ、ということがはっきりしない状態で連載が中断されていたのだが、今回はそれを踏まえた上での瀧の投球ということになり、なるほどという展開になった。「褒め専」という言葉が出てきたのは笑ったが、実力のある人に褒められると嬉しい、というのはよくわかるので先に希望が持てる展開になってよかったなと思う。
毎週更新されている「気になる来見さん」もとてもよかったし、「姫死んじゃった!」も思いがけない展開になっていて、その日の更新で面白かった作品を二つ挙げるアンケートにこの2作品をあげた。まあどう考えてもほとんどの人は「忘却バッテリー」に投票しているだろうから、というのもあったのだが。
しかしその後で読んだ「おわんちゃんの波瀾万丈麺」という読み切りが面白かった。なんでも過剰にする演出が得意な作者さんで、以前も「ジーンズを脱がせて」などの作品があったが、こちらは筋肉を鍛えすぎて脱げなくなったジーンズをどう脱がせるか、というドタバタである。おわんちゃんの方はとにかくラーメンを食べてもらいたいラーメン屋のおわんちゃんの店にドラゴンやら異世界人やら宇宙人やらがやってくるというドタバタなのだけど、こういう過剰さを描かせると上手いなと改めて思った。
https://shonenjumpplus.com/episode/17107094910082445714
ジャンププラスも最近、曜日によっては読むものがない日もあるのだけど、今日は充実しすぎていた印象。バランスが取れないかなと思うがまあそういうわけにもいかないのだろうなとは思う。
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