「近代についての本質的な批判」と「「日本の」近代主義・リベラリズム・フェミニズムの軽佻浮薄さに対する批判」/「国学によって純粋化される前の神道」に感じてしまう近代の我々の違和感
Posted at 25/08/18
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8月18日(月)晴れ
私自身としては今日はお盆休みの最終日。世の中はもう動き出しているので家の前を高校生が通ったり、ジャンプ・スピリッツ・ヤンマガが発売されたりしているわけだが、自分の仕事としても銀行に行ったり税金を払ったりそのほかやることはある。
このところ左肩が痛かったのだが、今朝車を運転してジャンプなどを買いに行ったりしたときにどうも首筋も痛いなと思い、痛いところが広がった感じ。歳をとってくると常に体のどこかがおかしいわけだが、逆に若い頃よりはそういうことが気にならなくなり、気にしないでいるうちに治ったりすることも多い。人間が生きるということは逆に言えば、常に小さな痛みを抱えながら生きるということだなと思う。そんな言い方をするとちょっと哲学的な感じにもなってしまうが。ただ、首の痛みは気になる。木曜日に整体にいくのでそのとき調整できればいいと思うが、生活の中で変えられることがあったら変えておきたいとは思う。
***
「右翼雑誌の舞台裏」を読み終わったので何か読もうと思い、垂加神道が気になるなと思って図書館で探したのだが、他にも気になるタイトルがあったので2冊借りた。
「日本思想体系39 近世神道論 前期國學」(岩波書店、1972)と「現代日本思想体系32 反近代の思想」(筑摩書房、1965)である。
前者の「近世神道論」で取り上げられている著者は林羅山、吉川惟足、吉川従長、度会延佳、山崎闇斎、増穂残口、藤塚知直、松岡雄渕、「前期国学」では戸田茂睡、契沖、荷田春満、賀茂真淵。後者は冒頭の解説が福田恒存で、「文明開化批判」として夏目漱石、永井荷風、谷崎潤一郎、「近代への懐疑」として保田與重郎、亀井勝一郎、唐木順三、山本健吉、「近代の克服」として小林秀雄が取り上げられている。
とりあえず読み始めたのは福田恒存の解説、「反近代の思想」なのだが、これ自体が相当ボリュームがあって読み応えがある。43ページもあるので所収されている文章と同じくらいの量になる。また、文末に西尾幹二氏への謝辞があり、この本の編集にも相当西尾氏が関わられたらしいことがわかった。西尾氏といえば21世紀初頭の保守の論客、スターの1人というイメージが強いが、その50年前からいろいろな仕事をしていたのだなと思う。
福田恒存の解説を読んでいて思ったのは、この「反近代の思想」というのは大まかに言って今の「保守の思想」ということになるかと思う。ただ、西部邁氏らの本以降取り上げられるようになったエドマンド・バークなどイギリスの保守主義についてはこの本では取り上げられてなくて、近代の本質を問う、みたいな方向に行っている感じではある。バークの保守主義は厳密にいえば反近代主義ではなくて漸進主義であるから、大きくいえば近代主義と言えなくはない部分もある。その辺りがこの本の趣旨には合わなかった、ということかもしれない。
現実問題として、私自身にも反近代科学、反西洋近代主義なところはあるのだけど、科学を完全否定するわけでもないし、科学技術を完全否定するわけでもない。また議会制民主主義を直ちにやめろと思っているわけでもない。だから保守主義という考えは自分に馴染むところがあるのだけど、参政党がやっているような反科学主義みたいなことも、やり方は稚拙だと思うしああいうやり方では素朴な近代主義の人たちの共感は得られないよなあとは思うけれども、やりたいことはわからなくはないところもある。
これは「日本人ファースト」についてもそうだし、「はっきり言い過ぎ」みたいなところはあるが、日本ではまず日本人を大切にすべき、というのも当然だとは思う。逆に言えばあのような形で素朴なパトリオティズムや素朴な反科学主義であれだけの支持が得られるというのはある意味予想外ではあったなとは思う。
福田恒存を読んでいてなるほどと思ったのが、「反近代主義」と言っても二つある、という話。一つは「(西欧)近代」そのものを問い直す、自由とか民主主義ということそのものを問い直す本質的な議論であり、もう一つは「西欧から直輸入された日本の近代主義」に対する批判というものだ、ということだという。福田に言わせれば日本の近代主義の中身は前近代、つまり「封建時代」への批判・攻撃だけでできている軽佻浮薄なものとしていて、まさに今の「日本のリベラリズム」や「日本のフェミニズム」の現在の醜態と同じだなと思ったりした。
ときに起こる「保守的に見えること」や「男性中心的に見えること」に対してリベラルや(和製)フェミニストは嬉々として集団で襲いかかるわけだが、反論されるとすぐに馬脚を表して「非モテだから」とか差別的な言辞を弄することが多いわけである。つまり彼らは「封建制の残滓」「日本帝国主義の残滓」「家父長制」などの敵を見たらすぐに襲いかかる肉食獣みたいなもので、反撃されると出てくるのは口汚い差別的な言葉がほとんどなわけで、それらが本質的にどんな意味を持ってるかさえ理解してないわけである。
これは日本企業などが従来事なかれ主義なことが多く、総会屋などにつけ込まれがちだったのと同じで、一度謝ったら無限に叩く姿勢になるわけである。
福田恒存はそれに対し、西欧では近代の本質的な問題について深く考えらててきたから日本の軽佻浮薄な近代主義者とは違う、みたいにいうのだが、現代では欧米もフェミニズムや行き過ぎたポリコレなどによって社会が分断されつつあり、日本と似た状況になってきているのは皮肉だなとは思う。
ただ、「近代」を問い直す問いが深い本質的なものになるのと同様に、「リベラリズム」や「フェミニズム」に対する運動レベルでない哲学レベルでの問い直し、批判は、今後ともずっと必要な作業だろうとは思う。
***
「近世神道」の方を読んでいた思ったのは、神道のことなのに漢学者である林羅山や山崎闇斎が「神道とは何か」みたいなことを延々と研究していたりするのがなんだか不思議というか違和感を持つわけなのだけど、江戸初期においても「東照大権現」の神号を定め朝廷に勅許を願い出たのも天海僧正の働きだし、神道の本のなかに侶や漢学者がたくさん出てきて、なぜ自分たちの本務と関係ないことについてこんなに書くのかと戸惑うわけなのだが、そういう感覚自体が漢学や仏説を漢意として退け、純化された日本の信仰を記紀から読み出そうとした国学以降の決めつけのもたらしたものではあるのだよな、と思い直した。
我々はすでに本居宣長以降の時代に生きているので彼の漢意(からごころ)批判を読んで、そうしたものを排除した形で純粋な日本的な考え方を取り出す、というのが当たり前だと思っているからそういうものに対して違和感を感じるのだよなと思う。
神道はもともと経典宗教ではないので平安時代の理論化の段階からすでに仏教僧がになっていて、その後吉田神道など神道の解釈の流派は様々出てきてはいるけれども、直接には垂加神道などの儒者が関与した江戸初期の神道が国学者らの神解釈といろいろに関わり合って結果として国学が純粋主義を推進するようになったわけで、ただ本居宣長はそうした削る方向での解釈になっているけれども、平田篤胤の復古神道になるとまた青人草とか新しい概念が出てきていて、明治の国家神道の形成と民間神道(教派神道)との分離に至ったりするわけである。
具体的には林羅山の「神道伝授」が取り上げられていて、これは彼が神道を朱子学的に解釈したもの、とされているようだが、ある意味合理的な朱子学とは違う神道にある神秘主義みたいなものをどう表現するか、が読んでいて面白い気がした。まだ少ししか読んでないのだが。
まだ左肩が痛く、全体的に普段の疲れとお盆の疲れ、夏のバテが取れていない感じがする。今日はゆっくりやろうと思う。
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