福祉国家を成り立たせる「同胞意識」という危うい条件/「シテの花」:「お能」についてと「負の感情の浄化」/ガソリンがやや下がり、米はさらに上がる/アメリカ通の陸軍軍人の沖縄戦/秀吉の出自

Posted at 25/05/17

5月17日(土)雨

今朝は朝から雨が降っている。目が覚めたのは4時ごろでその時には家の中では雨は感知しなかったのだが、外に出てみたら少し降っていた。作業場に行って車を少し入れ替える。最近乗ってなかったせいかウィンドウに黄砂が付着していて、ワイパーで除去したり。戻ってきて家の中のことを少ししてから車で出かけて職場の鍵を開け、ガソリンを入れにいく。ワイパーは最初は少し動かしていたのだが、だんだん本格的に動かすようになってきた。大降りというほどではないけれどももう小降りではない。

いつものスタンドに行くと185円でアプリ7円引きが使えたので178円。このスタンドで170円台は久しぶりだ。原油価格が下がった影響がようやく少しは出てきたか。さらに車を走らせて丘の上のデイリーで塩パンとフルーツケーキ切り落としを買う。東京駅Suicaの残高が300円になっていたので帰りに川沿いのセブンに寄って入金し、キリマンジャロを買って帰った。

昨日は午前中母を病院に連れて行った後、西友で買い物をしたり銀行でお金を下ろしたり。調べると今日が「シテの花」の2巻の発売日だったので、ツタヤへ行って1、2巻の両方を買った。家に帰ってから仕事をいろいろやり忘れていることが判明し、昼食後に郵便局に出かけて税金を払い、郵便窓口で記念切手を買ったが窓口の端末の調子が悪くてSuicaが使えずクレカもなかなかうまく反応しなくて変に時間を食った。その後駅前のスーパーに行って米と茶を買おうとしたら米は皆無。高いのはともかく、ないというのは困るなと思う。

仕方ないのでATMでさらに必要なお金を下ろした後また西友に行って米を見たら5kg3000円台の商品が全くなく、税込4590円の北海道産夢ぴりか5kgを買った。ないより高い方がまだましだが、それにしてもどこまで上がるのか。備蓄米とはなんだったのか、と皆思ってるのではないか。

ただ、次回の備蓄米放出では集荷業者(JAとか)→卸し→小売という流通経路の中で集荷業者や卸しをショートカットして直接消費者に近いところに出す、みたいなことを政府がやろうとしているようなのだけど、余計混乱するのではないかという気もするがどうなのだろうか。ということはつまり政府はこういう中間のところで米が滞留しているとみているということなのだと思うけれども、米はどうしても国策に左右されるため完全な市場食品ではないから拙速なやり方をして大丈夫かとも思う。

米の価格については消費者は高いといい、生産者はコストが高騰してるから当然なんだ、今までが安すぎたんだという対立になってしまっているけれども、本当の問題はその間にあるのだろうと思う。この辺がなんともブラックボックスになってしまっていて、政権は今回かなり踏み込んだとは思うがシステムの改善にはつながっていないようには思う。なし崩しで破壊するのも危険なことだから、良く検討してもらいたいとは思うのだが。

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少年サンデー連載の「シテの花 能楽師・葉賀琥太朗の咲き方」1、2巻を読んだが、とても面白かった。能楽を題材にした漫画作品というのは初めて読んだが、「花よりも花の如く」という少女マンガがあったことを調べて知ったけれども、少年マンガのジャンルでは多分初めてなのではないかと思う。主人公の琥太朗はダンスグループの名手だったが、舞台上の事故で大火傷を負い、顔にも傷を負ったために芸能界を引退する。そして大好きな祖母の引出しから能のチケットを見つけるが、能こそが彼が祖母の部屋で踊り、踊りが好きになるきっかけだった、という設定がいいなと思った。

能を見に行った琥太朗はその舞台に出ていたシテ方宝華流の若宗家・宝華至龍に「能楽師ってどうしたら慣れますか?」と尋ねる。そして彼に紹介された師匠の元で修行が始まる、というストーリーである。

2巻では宗家の見守る中で初舞台を踏むところまでが描かれていて、彼にしかない花が表現されていてすごいなと思うのだが、その途中で終わってしまった。そのあとは「サンデーうぇぶり」のアプリや残してあったサンデーのバックナンバーで最新話まで読んだのだが、どんどん引き込まれた。

古典芸能の世界はもちろん知らないことが多いからその一端を知るという楽しみもあるけれども、物語自体が面白いしキャラクターもいい。また絵や書き文字にも迫力があり、そして羽衣を舞う琥太朗の、負の感情を浄化した澄んだ花を表現する絵に、謡の「施し給ふ」という詞章がスッと差し込まれているのがかなり粋だった。

古典芸能というと自分は歌舞伎に主に関心を持っていて、能に比べてのその大衆性が魅力だと思っていたのだけど、現代においては歌舞伎が圧倒的に世襲制であって他所からの人がなかなか大きな舞台で大役を演じられないのに対し、能はむしろ開かれているというか、ある意味「お稽古事」の世界でもあるし、武家の式楽でもあるからか返って開かれていて、個性豊かな演者たちがいるということなのかなと思ったりした。まあマンガだから実際はどうなのかは良くわからないが。

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来年の大河を当て込んだ部分もあるのかもしれないが、黒田基樹「羽柴秀吉とその一族」(角川選書)という本が面白そうだったのでメモしておく。最近は中世後期の研究が進んで北条早雲も全く新しい人物像で描かれるようになり、マンガでも「新九郎奔る!」としてその成果が出ているけれども、豊臣秀吉についてもその出自について新しい研究が進んでいるようで興味深い。人生の多分後半になって(多分120歳まで生きることは難しいだろうから)こういう研究の進展を見ると日本史が新しい姿になるのを全ては見られないのだろうなあと思うとちょっと残念な気持ちではあるが、少しずつでもその姿を見ていけることはむしろ幸運だと思うべきかもしれないとも思った。東京に帰ったときに買ってきたいと思う。

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沖縄戦の参謀だった八原博通という人物についてツイートで読み、少し調べてみるとかなり興味深い人だなと思った。旧制中学から陸軍士官学校という経歴だから、英語ができるのでアメリカに留学してアメリカのシステムや工業力に精通している。幼年学校では英語はやらないから、陸軍のエリートたちは米英に対して疎くなっていた。だから八原は少数派だったはずで、彼の見識も十分日米戦に行かされなかったところはあったのだろうと思う。こういう人を知るということは意義のあることだなと思う。

私は陸軍に関しては一番注目してきたのが永田鉄山なので昭和10年の彼の暗殺以降、とりあえずは日米開戦までの経緯にはそれなりに関心があるのだが、その後の戦争の展開についてはあまり良く知らない、というか関心が持てないでいた。しかしこういうアメリカ通の陸軍軍人の視点で戦争を見直してみると新しい発見があるのではないかという気はする。

しかしまあ、沖縄戦における首里放棄・南部撤退についてはやはり批判はあるようで、それは仕方のないことだと思う。生き残ったために批判の矢面に立たされてることは気の毒だなとも思う。彼の作戦立案についてはむしろ米軍側からの評価が高いというのも複雑な感じだ。民間人保護については不十分なことになってしまったことは彼の過失だとは言えるが、それだけ軍や参謀というものの持つ責任は大きい、ということだとも思った。

探したら中公文庫に手記があったので読む余裕が出たら読んでみたいと思う。

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https://digital.asahi.com/articles/DA3S16213671.html

noteで言及されていた安藤馨さんの論考が興味深く、正鵠をついているように思ったので少し。

特に大事だと思ったのは、以下の指摘である。

「(1)政治共同体を共有する国民は、お互いの間でのみ自分たちの民主的決定に服従する政治的義務を負う。(2)この義務を成り立たせる前提として、自身が少数派に属する場合でも生存を脅かされないことをお互いに保障する義務を負う。したがって福祉国家は、国民と国民以外の間で道徳的地位の差異が存在することを前提とし、日本国憲法25条が保障する日本国民の生存権も、政治共同体を共有する「国民」の同胞意識抜きには成立困難である。」

簡単に言えば、福祉というものを成り立たせているのは「国民の同胞意識」であり、これが分断されると同じ日本人の困窮者に対しても「同じ日本人だから助け合うのは当然だ」という意識が働かなくなる、つまり「同じ日本人だ」という意識こそが現在の福祉国家を成り立たせているのだ、という主張で、これは全くその通りだと思った。

wokeの跳梁跋扈によるアメリカの分断がトランプを産んだように、日本でも左右の分断(お互いに「ネトウヨ」「クソリベ」と糞をぶつけあう状況)、男女論という名の男女間の分断、「逃げ切り世代」「氷河期世代」「若手現役世代」の世代間の分断など、国民の分断は煽られるばかりでそれを統合しようという動きが乏しいのは大きな問題だろう。私は基本的には右寄りの保守ではあるけれども、最終的に国民の統合を確保するためには中道寄りの保守の思想を国民間に普遍化させる必要はあるのではないかと思う。

この辺りのことはまた書いていきたいし、また安藤馨さんの様々な論考にも注意していきたいと思った。


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