「ふつうの軽音部」67話:「ふつう」に生きられない人と「ふつう」に生きたい人が引き裂かれる表現活動/「引きこもり、家を出る」:映画のような鮮やかな読み切り/黄砂と雨中の草刈り/米価格と農家
Posted at 25/05/25
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5月25日(日)曇り
昨夜は今のソファでうたた寝していて、気がついたら11時55分だったので起き出して、「ふつうの軽音部」の更新を読んでから寝たのだが、1時は過ぎていた。日付が変わる前ごろから雨が激しくなっていたけど、寝た頃にはかなりのざあざあぶりで眠れるかなと思ったのだが、とりあえず普通に寝付いて起きたら5時前だった。外に出てみるとまだ雨は降っていたのだけどちょっと出かけたくなり、車で出かけて南の方へ走った。山麓を東西に延びる道を曲がって川沿いの道を走ると、雨の中で地元の人たちが川辺の草刈りをしていて、ついそちらの方に注意を取られてしまい行こうと思っていたファミマを見逃して、大社の前のコンビニでUターンして別の道から行こうと思っていたファミマに入った。特に何があるわけでもないのだけどボスのカフェオレと津南の天然水を買い、国道まで戻って帰って作業場に帰ってきた。雨はずっと降っていた。
作業場に止めてある軽に乗り換えて家に戻る。作業場の駐車場は屋根があるのでここに止めっぱなしにしておくと雨に濡れないのはいいのだが、黄砂が相当付着していて一度雨の中を走らせようと思ったのだった。家に戻ってきてしばらくしたら雨が止んでしまったので、あまりきちんとは落ちなかったが、少しはマシになったかなというくらいの感じである。ちゃんと洗車すればいいんだけど。
***
https://shonenjumpplus.com/episode/17106567265952706941
「ふつうの軽音部」67話「在りし日々に揺れる」を読んだ。(以下ネタバレ多し)主人公鳩野ちひろたちの校内のライバルバンド、「protocol.」のギターボーカルであり、目下最大の敵orライバルキャラである鷹見項希の過去回。扉は現在の鷹見のアンニュイな表情のカラーページ。
鷹見の中二時代(作中の今現在は高一)、兄の竜季のバンドが大阪で少し人気が出て来た当時のエピソード。前回は小学生時代で、友人に兄のバンドの動画を見せたらウケないよ、と批判されて、帰り道に1人で泣いていたりしたが、人気が出ていてあいつは間違っていた、と嬉しく思う鷹見。ライブハウスの後ろの方には高一の喜田と山添がみて盛り上がっている。楽屋でバンドメンバーたちとわちゃわちゃするのを見ていつか自分でも「趣味でいいから」バンドを組んでみたいと思う。
また同じ時期に学校の音楽室でアコギかクラギをを弾いていて田口に声をかけられたのをきっかけに、仲良くなる。帰り道話している時に兄のバンドのベースの糸に声をかけられ、田口が「あんな大人のお姉さんと付き合っているなんてすごい男だ」と鷹見のことを認識して「こいつについていきたい」と思うのが笑うけれども、コメント欄などでも「動機が浅い」と擦られていたけれどもそれが全て好感の方に出るのが田口の良さで、鷹見が闇堕ち(鼻持ちならない人の心のわからないスケコマシ状態)する前から田口が友人であることが、おそらく鷹見にとっても貴重な関係だったのだと思われる。
糸に声をかけられたのは糸が竜季の状態を心配していたからなのだが、竜季は項希には弱みを見せず、「アホやけどすごい兄ちゃん」を演じていたので項希は糸の心配を理解できず、逆に糸が項希のその様子を見て心配のしすぎだと安心してしまう、というのは多分よくあることなんだよなと思った。
あるライブを成功させた打ち上げでバンドメンバーのギターとドラムが就職が決まったといいだし、彼らの卒業とともに上京して勝負をかけるつもりだった竜季は梯子を外される。項希に「あいつアホやけどあたしの神やから」と言った糸もまた高校卒業後は竜季と同じようにフリーターで上京に備えていたので2人の言葉に動揺するが、「俺らくらいのバンドは腐るほどいるしバンドで食っていくのは正直難しいと思う」という言葉に真顔になった竜季は「クビや」と言い捨てるが思い直し、「俺が出ていくわ」と店を出ていってしまう。
糸は竜季の跡を追いかけるが、竜季の頭の中にあったのは幼い頃、母親が兄弟と父を捨てて出ていってしまった時の記憶。そして、大学生だった2人にバンドに誘われた時の記憶。お前たちに誘われたから自分は本気で頑張ったのにその自分を捨てるのか、という思いだったのだろうか。
家に帰った竜季は項希が弾いているギターの音に耳を傾け、嬉しそうな顔をしたあと「まあまあギター上手くなったんちゃうか」と褒める。褒められて本気に嬉しそうな顔をする項希の顔が読者には切ないしこの顔ができなくなった現在の鷹見のことを思ってしまう。
ライブハウスに再び聞きにいった兄のバンドは観客も減り、兄も苦しそうで、観客はこそこそ「一瞬ちょっと人気出たけどまあ、上に行けるほどのバンドじゃなかったよな」と心ない会話をしている。項希は小学生の頃の友達の陰口を言われた時に戻ってしまった、いやそれよりも悪い状況になっていることに愕然とする。
ほぼ実況してしまったが、ハロウィンライブの演奏中の挿入エピソードなのだけど鷹見の闇落ちの過程を描いているからどうしようもなく鬱展開である。田口と知り合ったことがギャグ的に描かれているのが唯一の救いである。そして、鳩野が同じバンドのベースの厘に「神」と崇められているのを知っている読者は、否応なく糸のセリフと厘とを比べてしまうわけだが、厘が鳩野を神と崇める理由がいまいちわからないまま彼女らの存在をある意味信頼している読者としては、それに比べての竜季の状態や糸の竜季を「神」と呼ぶ感情に危ういものを感じざるを得ない。厘はむしろ鳩野を神としてプロデュースする教祖的なヤバさを感じさせるが、彼女が壊れる危険はそんなに感じないけれども、糸は竜季の存在にすがるような危うさがあり、竜季のためならと自分もフリーターになって後がなくなっているわけである。
竜季はおそらく双極性障害で、高校にもバイトにも適応できずにバンドだけ続けて来た人で、だから「ふつう」に生きようと思っても生きられない、バンドで生きるか無かという極端な選択しかないという人だから、信頼するメンバーたちが「ふつうに就職して趣味としてバンドをやって生きる」選択をした時に彼らを許すことはできなかった。今ならアマチュアとして動画にどんどん曲を発表していくようなやり方でも成功を掴める可能性もあるとは思うが、竜季はおそらく姿勢としてそういうものがなかったのだろうと思う。
今現在、兄とは音信不通になっていることが今までも語られているから、これから起こるのは破局しかないわけでコメント欄やTwitterなどでもそれを想像すると心が痛い、という声が色々と上がっている。そして、そういうもの間近でみてしまった多感な時期の鷹見にどういう変化が起こったのか、ということもストーリー上は大きな意味を持つだろうと思う。
私自身、学生時代は演劇をやっていて、プロを目指すか否かの別れ道を経験しているので、この文章を書いていてもいろいろと考えることはある。ただその辺はまたの機会に書きたいと思う。
まあ、そういうわけでアマチュア、特に社会に出る前の学生として様々な表現活動をやっていた集団が表現し続ける道を選ぶのか地に足がついた「ふつうの生き方」を選ぶのかというのは自分ごととしてもよくわかる。他の漫画では「ブルーピリオド」でもちょうど今、「作家になる」道を行くという選択をした八虎と、「趣味で絵を続ける」という選択をした森先輩とのある種の切なさを感じさせるエピソードが展開されているけれども、表現を続ける人にとっては常にどこかでやってくる別れ道なのだなと思う。
***
ジャンププラスでもう一つ、金曜日に読切で掲載された「引きこもり、家を出る」がよかった。
https://shonenjumpplus.com/episode/17106567265952706715
ちょんまげをした大男が家の中で大声を出しているのだが、母が倒れて死んだ。次の場面は母の葬式で、母の弟だろうか、おじさんに殴られ、「姉さんが死んだのはお前のせいだ!」と怒鳴られる。次の場面では家で料理をしている男の周りに妖怪たちが現れ、話しかける中で、男は「働きに出る」と宣言し、その次の場面では男が引きこもった事情が無言で語られ、そして決意して外に出る様子が描かれる。そして次の場面はバイト先のヴィレヴァンらしき店舗。という、なんというか良いテンポでどんどん進むとても映画的な場面構成の作品だった。
そういう男と「教育係」の無表情な「椎名さん」の関係が、「椎名さん」に気がある「鼻ピアス男」との関わりの中で進展していくのがいい。というかこれもすごく映画的である。
本当にこんなことが起こるのかといえばやはりそう意味でのリアリティはあまりない、というか第一ちょんまげで丸々太った男が引きこもりを脱するためにヴィレヴァンでバイトするって設定自体があまり考えにくいわけだけど、ただこれはコメント欄に書いている人がいてなるほどとは思ったけど「ヴィレヴァンならギリ採用されるし客にも受け入れられる」というのは確かだな、とは思った。というかヴィレヴァン以外でちょんまげでバイトできるところはちゃんこ屋くらいしかないだろうなと思う。しかも力士の「大銀杏は結えないけどちょんまげ」のちょんまげでなく、江戸時代のマゲ以外は全部つるつるのちょんまげである。
しかしこの設定でも映画なら成り立つ。フィクションだから。もちろん妖怪の存在だってフィクションだから受け入れられるわけだけれども。
とりあえず読んでもらいたいのでラストは書かないが、本当に感動させられた。ジャンプラアプリでの閲覧数は金曜の3位で日曜13時20分の時点で41万5000強、同じ読み切りの「尻デカ大名、江戸へ行く」(これも面白かった。ナンセンスギャグとでもいうか。ジャンプラ漫画賞初の入選作でもある)の57万アクセス弱に比べればもう一つなのだが、コメント数が2500を超えていて、これは連載作品では一位の「ダンダダン」の2400(閲覧数は183万強なので4倍以上)をも超えて一位になっている。いかにこの作品を読んで感動を伝えたい人が多かったかということがよくわかる。
https://x.com/honnokinomori/status/1926500821040034185
本当に心が温かくなる話である。実写映画化を期待したい。
***
米価格についての農家の実態。これは本当だと思う。農家の出荷時の価格で5キロあたり二千円くらいはないと成り立たないだろう。中間過程でかかる費用や利益を上乗せさせて三千円前後が生産者・消費者どちらもが納得できる価格ではないかという気はする。
https://news.yahoo.co.jp/articles/cd248078d37edab3c03fc5d0cae3f26ff308f8f6
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