ワルプルギスの夜から5月祭へ/ナイジェリアの複雑さと面白さ/サイゴン陥落50年とアメリカのトラウマ/現時点でのAIに関する私の感想:AIの「80点性」は「新しいリアル」に育つか
Posted at 25/05/01
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5月1日(木)晴れ
昨日が4月30日で今日が5月1日。いわゆるメーデーだが、ヨーロッパでは夏の到来を予祝する日とも春の始まりの日ともされる。4月30日から5月1日の夜は「ワルブルギスの夜」と呼ばれ、5月1日のフランク王国の女子修道院長聖ワルプルガ列聖の日の前夜祭だが、魔女からの守護を祝うとともにハロウィンのような悪ふざけをする日でもあるそうで、これに触れた作品はゲーテの「ファウスト」が有名だが、冬と春(ないし夏)の境目に魔を祓う火を焚くというのは実際の季節は違うにしろ日本の追儺や節分と考えは同じで、魔は冬でも夏でもない境界に存し、それを抑え込む、ないしは祓うという考えなのだろうと思う。
東京にいると5月というともう暑いという印象はあるが、今は長野県にいるのでまだ朝夕はストーブを焚いている。昼間はひどく暑くなることもあるので着る物に苦労する季節でもある。更衣(ころもがえ)は通常6月1日だが夏めいた服装が増えていくのも5月の声を聞いてから、という印象がある。
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ナイジェリアでキリスト教離れと伝統宗教への復帰が起こっている、という記事を読んで、その背景を知るためにナイジェリアの歴史関係の記事をウェブで読み始めたらかなり底なしで、なかなか簡単に大要を掴める感じでもないのだなと思った。
ナイジェリアというと世界有数の産油国だが油田地帯はニジェール川の河口部のデルタ地帯で、しかしそこはナイジェリアの支配的な民族であるハウサ人(北部のイスラム教徒)や同じく人口の多いヨルバ人(南西部のキリスト教徒)ではなく、イボ人やもっと少数の民族が住む地帯で、石油利権が連邦政府に握られているため貧しく環境も汚染されていて、1967-70年のビアフラ独立戦争を始め連邦政府への反発が強い地域でもあり、反政府独立運動の組織が石油メジャーの幹部を誘拐するなどの事件が多発し、世界の原油価格の動向にも影響を与えている、というのも読んでいていろいろ思い出してきた。
今進んでいるキリスト教離れというのはそうした地域ではなく、比較的裕福なヨルバ人たちなのかなとは思うのだが、さまざまな矛盾を内包しつつ経済的には発展を続けているし、エボラ出血熱の防疫に関してはそのやり方がアメリカにも伝えられるなどの先進性もあって、掴みにくい国だなという印象がどんどん強くなる感じである。今度東京に行くときにいくつか本を探してみようとは思うが、そこまで関心を持ち続けるかどうかはいまいちよくわからない。
ただナイジェリアが面白いなと思うのは、軍事政権時代に権力を握っていたオバサンジョとかブハリとかが文民政権時代になってまた政党代表として大統領に選出されていたりすることで、つまり失脚しても死なないで数十年後に権力に復帰していることだ。クーデタで追放されたり投獄されたりもするのが、他の国だと一巻の終わりになりそうなのに生き延びられるのは、イギリス植民地であったことと関係があるんじゃないかという気は少しした。まあその辺も深掘りできるほどの知識がないので、少しずつ知って行けたらいいなと思う。
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ベトナム戦争終結50年だそうだが、つまりこれはいわゆる「サイゴン陥落」から50年ということだ。南ベトナム政府が倒れ、米軍がベトナムから一掃されたサイゴン陥落/解放が1975年4月30日。アメリカの権威が最も凋落していた時期という感じである。アメリカ史においてベトナム戦争のトラウマというのはそれなりにあると思うのだが、レーガン以降克服されていってベトナムもドイモイ政策以降は西側と協調的になったりもしたから最近はあまりそういうのも無くなったのかなと思ったが、50周年のセレモニーにアメリカ側は参列しないそうで、まあやはりトラウマはゼロではないのだなと思った。民主党政権でなくトランプ政権だということもあるのだろうけど。
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現時点でAIができるのはどういうことか、というのが自分なりにだんだんわかってきたなと思うのだが、つまりは最大公約数的な80点の答案を取るために必要な組み立て方はできる、という感じだなと思う。完全なオリジナルは当然ながら無理で、学習のさせ方によって尖ったものを吐き出す可能性はなくはないとは思うけれども、そこを超えたものを出すのにクリエイターの人たちは呻吟しているわけで、そういう意味では最先端のものを作り出す人たちにはあまり影響ないのかなとは思う。
AIを使った作品について一番感じるのは最大公約数的な「これがいいんでしょ?」を機械的に押し付けてくる感じはあるので、そこに人間的な感動は薄いのだけど、「こんな感じのものを出して」みたいなものは多分簡単に出てくる。「いらすとや」のイラストがが全国のあふれた時代があったことを考えれば、AIで適当に作ったもので十分機能する範囲も当然ながらある。
本質的にはつまり感動させるクリエイティブさは出てこないけれども、「こんな感じでいいじゃん」くらいのものは出せる。人間的な感動という意味での需要には届かないが、大量生産的なデザインの品質向上にはつながるだろう、ということだろう。
つまりAIというのも手段に過ぎないということなんだが、まだその先の可能性を見ようとする人たちもいるし、また使える範囲で適当に使えばいいという人たちもいるし、なんとかうまいことやって商売にしようとする人たちもいるし、よくわからないのに適当に使って混乱させる人たちもいるだろうし、まあ文明の利器ではあるがプラスマイナス結構影響範囲は広いだろうなとは思う。
現実問題、「80点取れる優等生」であれば役に立つ分野というのはそれなりにあるわけだから、まあそういう意味で社会に雑な部分が増えることにもつながるだろうし省力化によってきめ細かさを人間が腕を振るう余地が出てくることにもつながるだろうから、二極化が進行するということでもあるだろう。
もちろん文章にしろ張り紙にしろイラストにしろ素人が適当に作って変なことになるというようなことはこれからいろいろ出てくるだろう、いやもうすでに結構出ているのだろう。それは、これは今までも工業技術の進歩によって「〇〇もどき」みたいなものが簡単に作れるようになったことの弊害の面とおなじだろう。しかしもっと進んで考えれば、逆にそこの「80点性」に新しいリアルを見出す、みたいなことも今後出てくる可能性もある気はするし、そうなったときにこの技術がこの社会に定着したと言えるのではないかとも思う。ある種技術の限界性を愛でるレベルに社会の側が進んできたときに、ということである。
いずれにしても、現段階においてそういうものだと思って付き合えばそれなりに付き合い方もあるなという気がだんだんしてきたので自分自身はまだそんなに使ってはいないがまた試す機会もあるだろうとは思う。
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