雁琳さんのスペースを聞く:ナチス絶対悪体制としての現代世界と近代日本の「国体」と「政体」/「ミワさんなりすます」13巻と「れんげとなると!」4巻/「創作の目で見ること」の弊害
Posted at 25/05/31
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5月31日(土)晴れ
今日は5月31日か。もう5月も終わり、明日から6月か。なんだかどんどん月日ばかりが経っていくが、季節も確実に動いてはいるのだが、なんとなく肌寒くて今朝もストーブをつけている。ただつけているとすぐ熱くなるのですぐ消したり、座って同じ姿勢でずっとパソコンのキーボードを打っていると寒くなってきたり、という感じである。
昨日は午前中母を病院に連れていく。雨の予報だったので母を車椅子に乗せたり下ろしたり、車の乗り降りが大変だなと思っていたが、到着したときはほんの少し降っていたけど帰りは上がっていて、助かった。帰りに母を連れて買い物に行くつもりだったがトイレが近いようだったので先の施設に送り、セブンでお金をおろして会計事務所に届け、戻ってきてスーパーで買い物をして施設に届け、その足で蔦屋へ行って「れんげとなると!」4巻と「ミワさんなりすます」13巻を買った。帰ってきて昼食を摂ってからお金の出入りをつけていて銀行に行く用事を忘れていたことに気づき、出直して銀行に行って書類を届けてお金をおろして帰ってくる。やることが多いと忘れがちだということはあるが、母を病院に連れていく日はそっちに神経が集中してしまうので他のことは忘れがちになる、ということはあるなと思った。
***
「ミワさんなりすます」13巻はオリジナルでの連載昨年24号分まで掲載されていたので去年の11月末に出た分だろう。今時々オリジナルで読む内容に比べるとだいぶ昔のものだなと思うが、ミワが思いがけず俳優として舞台に立ってしまったり、パワハラ監督のオーディションを受けたりする内容で、以前の家政婦編も面白かったが今の俳優修業編も私はとても好きだ。まあ自分が演劇をやっていたということもあるが。
ミワさんは自認としてはただの映画オタクなのだが、実はめちゃくちゃ記憶力が良くて開幕でいきなり間違ってスポットライトを当てられても冒頭のセリフを言えたり、オーディションで何も聴いてないのにいきなり「ゴッドファーザーの冒頭のセリフをいえ」と言われてすらすら言ったりして周りの度肝を抜く、という読者の側に「これはミワさんならできるだろう」と思わせて作中人物が驚愕しているのがなんとも言えないカタルシスになる、という構造がよくできてるなと思う。連載ではついに俳優になる決意を固めていて先が楽しみなのだが、単行本ではまだ迷いがある状態なのもいい。まあ29歳で何も素養がない(と本人は思っている)俳優になろうという人は、確かに普通はいないだろう。ただ本人は自覚していないが、年間1520本映画を見る人は絶対普通ではない。蓮實重彦のゼミでも参加の条件は「年間100本映画を見ること」だった。
「れんげとなると!」4巻はスペリオール連載で25年8号分まで掲載なので3月末に出た内容ということになる。れんげの過去、食べログの低評価のワケ、カブでの北海道遠征、なるとを誘惑するシオリ、と盛り沢山な感じの内容だが、ギャル中華と根暗系モブ男子に酔っ払いと肉感系の大人女子も絡んでくる、ある種のハーレム物かなとちょっと思ったがいや結局はなるととれんげのことをこの2人は応援してるんだよな、と気が付く。4人とも社会人ではあるが、後の2人は大人なのだよな。
次々に突飛な創作料理を作ったりいきなりの企画を思いついたりするギャルのれんげに振り回されるモブ男子のシンジ、という構造だが、読む側としてはシンジの心理状態に共鳴して、トラブルに巻き込まれがちなシンジの日常に心が冷えたり、れんげの明るさに心が暖かくなったり、という感じになるのも上手いなと思う。
***
https://x.com/ganrim_/status/1928447332707668444
夜は仕事から帰ってきて夕飯を食べながら雁琳さんの「ナチスの右翼性と左翼性論争について語ろう」というスペースの最初の方を聞いていたのだが、面白かった。かいつまんで面白かったところをあげると、
テーマに沿って言えば、「ナチスは左翼」と言われると左翼の人たちが怒るのは、現代世界においてナチスは「絶対悪」とされているからだ、という議論はまあ良くされているわけだけど、その例として侵略者であるプーチンでさ「ウクライナはネオナチだからだ」と正当化し、ハーバード大学を弾圧しているトランプでさえ「パレスチナ擁護派は反ユダヤ主義≒ナチスだ」と攻撃を正当化していると指摘していたのがなるほどその通りだなと思った。
また田野大輔さんの「ナチス実践授業」に対する批判がなされていたけど、つまりは心理的浸潤ということへの配慮に関して、ということだである。確かにあれはある種心に変な残り方をするだろうなという意味においてはロシアンルーレット(「ディアハンター」に出てきたような)とかいじめ(「フルメタルジャケット」にも出てきた)とかに共通するものはあるかなという気はする。
ああいう心の変形を伴いそうな訓練というのは、警察官であるとか自衛官であるとかなら仕方ないだろうなと思うし、また俳優の訓練として感情解放とかがあるように、ある種の専門性を育てるための訓練としてなら許容できるとは思うが、大学の授業でやるということは一般の市民としての教養の一環としてナチスのヤバさを体験するという趣旨だろうから、行き過ぎと言えなくはないだろうなとは思うし、許せないと思う人もいるだろうなとは思った。
それから、2時間くらいのところで話し合われていた国体を定めた五箇条の御誓文と政体を定めた政体書以降の帝国憲法・日本国憲法という議論は、もう一度ちゃんと聴いて自分でも調べてみようと思った。日本近代がバーク的でなくルソー的だ、という指摘はツイッターで読んだ時にはちょっと賛成できない(バーク的ではないことは確かだがルソー的だというのは正確性というか価値中立性を欠く)と思ったが、五箇条の御誓文で「天地の公道」と言ってるからルソーやモンテスキューの言ってることや人権みたいな「普遍的」原理みたいなものはなんでも取り込めるんだ、と雁琳さんが指摘してて、なるほどね、とは思った。まあ明治日本は「ルソーの一般意志的」と言ってもいいかなとは思うが、「ルソー的」というと社会契約説的な日本の国体との齟齬が現れてしまうというのは今でも思うけれども、そういう部分は政体に過ぎず国体ではないんだ、という言い方は成り立つという主張も不可能ではないかもとは思った。
ただ、最初の1時間くらいROM=匿名で聴いてて面白かったのだけど、朝起きてから録音データを見たら7時間11分とか書いてあって、この人たちは・・・となった。途中で切り上げて良かった。そんなの聞いていたら4時や5時には起きれない。(まだ継続中だったということになる)生活サイクルと年齢の違いは如何ともし難い。
***
https://x.com/tanaka_kuu/status/1928583135547240531
ジャンプ+で「タテの国」を連載し、今は「人喰いマンションと大家のメゾン」を原作担当で連載されている田中空さんの上のツイートがとても納得のいくものがあった。
これは大きな違いがあって、日常生活を「詩を作る」という観点から、つまりはある意味での「仕事」の面で見るようになってしまうと途端につまらなくなる、ということはあるなと思う。谷川さんの詩にもそういうことを感じたことがあって、それからあまり読まなくなったということはあった。
まだ仕事になってるわけではないが、私もマンガを読んでいてブログのネタを探そうと思って読むときはやはりあまり面白くないし、面白いところも見つけられにくい。ただ単に読んでいるときの方がずっと楽しいし、面白いことを見つけられる。創作に必要な姿勢はある意味虚心だということは、少なくとも私の場合は肝に銘じておかないといけないと思った。
5月も終わり/「ミワさんなりすます」13巻:共犯関係の読者が感じるカタルシス/「れんげとなると!」4巻:シンジの感情の上下に共鳴する構造/「ナチスは左翼論争」についての雁琳スペースを聞く:ナチス絶対悪体制としての現代世界と近代日本の「国体」と「政体」/日常生活を捜索の目で見てしまうことの弊害
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