歴史学と政治学はどちらが「格上」か/アイデンティティとリアリズム:アイデンティティ戦争の21世紀に/「池上遼一短編集」「シテの花」「ハーレム勇者伝説」など
Posted at 26/01/31
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1月31日(土)晴れ
今日で2026年1月も終わり。日本にとっても世界にとっても色々と大変な日々が続いているが、個人的にもいろいろ忙しい感じで、長かったような短かったような不思議な感覚だ。
昨日は午前中、というか11時過ぎに出かけて銀行で書類を提出したり記帳たりし、西友に行ってお昼を買ってツタヤに走って「トリリオンゲーム」の最終11巻、「らーめん再遊記」の14巻を買ったのだが、「池上遼一短編集 こぶしざむらい」が出ていたのでそれも買った。今見るとこれは原作がトリリオンゲームの稲垣理一郎さんだということに気づき、初出を見ると2015年と2020年なので、「トリリオンゲーム」以前の作品だと知った。というか、稲垣さん原作の「Dr.Stone」の連載が2017-22年なので「Dr.Stone」以前から書かれていた作品なのだということを今知った。掲載はスペリオールなので「トリリオンゲーム」の前段階とも言えるし、実は池上・稲垣コンビは10年以上前からだというのがわかってへえっと思ったのだった。
中身はまだ読みかけだが主人公が「江戸城が欲しい」とか言い出していて、トリオネアになりたいという野望を持ったり「ククク・・・唆るぜこれは」と言ったりするタイプの主人公だなと思ったし、ガクやリンリンみたいな感じのキャラクターも出てきていて、ある種のプロトタイプかもしれないなとは思った。ゆっくり時間がある時に読んでみたい。
早めに家に戻って昼食を取り、少し休んでから出かけて湖畔の近くのケーキ屋でケーキを買ってから母の入っている施設に面会に行った。昨日は妹の誕生日だということと、今週は病院に行かないのでちょっと調子を確認しておきたいということもあって会いに行ったのだが、まあまあ調子は良さそうなのでよかった。「誕生日だから手紙を書いているのだが、まだ書けてない」ということを10回くらい繰り返していたが、短期記憶はともかく長期記憶はそれなりにしっかりはしているのでまあ年相応ということだろう。10日前に90歳になったということもあり。
一昨日の夜は変な眠り方をしてしまったということもあり、昨夜は夕食を食べた後何もしないで寝たので、まだ「葬送のフリーレン」のアニメは見ていない。時間がある時に見ようと思う。
今朝起きたのは5時前で、ストーブが消えかかっていたので灯油を入れに下に降りて時計を見たら5時前だったから起きることにした。少し寒いなと思いながら洗濯機を回そうとしたら水が出ない。これは結構冷えているなと思ってスマホを見たらマイナス8度台だった。今の所の最低気温がマイナス9.6度なので、かなり冷え込んでいることは間違いない。
5時半をすぎてから出かけて職場で少し用事をして、隣町まで走ってセブン併設のスタンドで給油し、丘の上のデイリーで塩パンとスタバのラテを買って帰ってきた。帰ってから寒いので一度入浴したが寒いとタンクのお湯が冷えるのでぬるいかなと思ったら結構熱くて少し驚いたが、温まったのでよかった。しかし居間でもストーブとファンヒーターの二つをつけているのにいつまで経っても15度以上にならないくらいは家の中が冷えている。
https://www.sunday-webry.com/episode/12207421983322890846
土曜日はジャンププラスの連載の「2.5次元の誘惑(リリサ)」が終わってしまい、読むものが少なくなっているのだが、「サンデーうぇぶり」に移籍した「シテの花」の更新が土曜日なのでそれを楽しみにするかなと思っていて、それでもジャンプ+では「野球・文明・エイリアン」「生活マン」「このクラスにギャルはいない」の3作は読んでいる。
https://shonenjumpplus.com/episode/17107094913779622512
インディーズ連載2回目の「ハーレム勇者伝説」がアクセス数で曜日の2位、コメント数でも2位につけていて、へえっと思って1話から読み直したがめちゃくちゃ面白かった。作者さんは四コマを書いていた人でジャンプルーキーで連載権を獲得したということだろうか、インディーズ連載を始めたようなのだけど、この感じでいくと「幼稚園WARS」や「ラーメン赤猫」のようにインディーズからの連載獲得になるのではないかと期待を持った。「ふつうの軽音部」はルーキーからいきなり本連載なのでもっとすごいのだけど、やはり日本には才能のある人がゴロゴロいるなと改めて頼もしく思った。
***
外交史家・国際政治学者の入江昭氏が亡くなり、その経歴がアメリカでは例えばWikipediaなどでも「historian」となっているのに対し、日本ではWikipediaでも「国際政治学者」になっていることがTwitterで話題になっていて、それはつまり日本では「歴史学」より「政治学」や「法学」が格上になっているから、という指摘がされていて、歴史学専攻だった私などは心外な気がしたのだが、それは「法学部」の方が「文学部」より格上だと思われているからだ、という指摘があって非常に腑に落ちるところがあった。
私は高校時代もともと就職とかあまり考えずにやりたいことを考えた結果歴史学を大きな候補として捉えて最終的に西洋史学科へ行ったのだが、自分として法学部の方が文学部より格上だとかは思ったことがなかった。東大ができたときも法学部と文学部は理学部と医学部と並んで当初からあった学部であり、格の遜色があるということを考えたこともなかったのだが、大学生の時に総合図書館はもちろん、文学部や教育学部や教養学部など他の学部の図書館も基本的に自由に使えたのだが、法学部だけやたら使いにくく、法学部にあるフランス語の本を借りられなかったので仕方なく原書を大枚はたいて買ったことがあり、その時から法学部にはちょっと含むところがあったのだが、これはつまり法学部が「威張っている」ということの表れであるのだなと後になって気がついたわけである。
私は基本的にそういうスクールカースト的な考え方に基本的に疎いところがあって、今更そんなことに気がついたのかと思われるだろうけれども、むしろ自分としては「歴史学は諸学の王である」、くらいに思っていたのでなんとなく威張って見せている文科I類や法学部の学生がそういう態度なのも偏差値や合格最低点が高いから威張ってるのかなくらいに思っていたけれども、そうしたヒエラルキー的な感覚で威張っていたのかと今になって思い当たっていたりするわけである。
こちらは法学部なんて実務家の学問で学問本来の深遠さがないよね、くらいの感覚で「でも他の学問を見下すのは良くないよね」くらいの感じで「法学部なんだへえすごいね」と接していたのだが、どうも本気で威張っていた人たちもいたんだなと今更ながら思ったりする。それは官僚の威張り方とかと基本的には同じなんだなと思ったり。
しかし、世界的に見てみればおそらくそんな木端の政治家や官僚なんかより歴史家や歴史学の方がずっと尊敬・尊重されている、ということも多いと思うし、例えば中国などでは伝統的に「経史の学」として「儒教古典」と同様に「史書」も重んじられている。それは儒教の祖である孔子自身が「書経」や「春秋」などの編纂に関わったとされているということもあるし、その伝統から「史記」以来、王朝が交代するたびに前代の王朝の歴史書が編纂されるということを繰り返してきた、ということもある。そういう意味で中国は世界でも一番、少なくとも伝統的には歴史意識が強い国であると言ってもいいと思う。
イスラム世界やキリスト教世界でも様々な歴史書が古典として書かれてきていて、それらの上に乗っかって文明が存在しているから、歴史というものの重要性が理解されているということなのだと思う。それに比べると、日本では歴史というものの重要性があまり強くは意識されていない、ということになるのだろうと思う。
これはずっとそうだったわけではなくて、特に国際関係を持つようになった当初からは日本とはどういう国かを明らかにするためにその成り立ちから歴史を説くための史書がいくつもあったわけだが、それが国家事業として編纂されたのが日本書紀だということになる。古事記の位置付けは難しいが、ある種の私撰であってもそれなりの背景があって編まれたものであろうとは思う。そういうこともあり、我が国の歴史書において記紀は別格の存在でもあるわけである。
その後は「六国史」が平安時代の半ばまでは国家事業として編纂されたが最後の「日本三代実録」が藤原時平や菅原道真の手によってなされた後は国家的な修史事業は行われなくなり、そういう意味で参照すべき先例がなくなったために、貴族がいわば私の史書として日記を残すようになったわけで、史書の必要性というもの自体がなくなったわけではない(私選の史書も大鏡や栄花物語など平安後期にもある)のだが、これはおそらくは「史書を国家事業として編纂して残す」ということ自体が「中国の文化であり日本の文化ではない」ととらえられたところもあるからではないかという気がする。
つまり、「修史事業」は「漢才」であり「やまとだましい」「やまとごころ」はもっと応用実務的なものであって、オーソドックスを残していこうという意欲が国家として失われたということなのだろうと思う。よく言えばイデオロギーよりリアリズム、ということであり、これはこの時期からの日本のメンタリティとして今尚受け継がれている部分があるのだろうと思う。
それはつまり他国との交渉があまり必要でなかったからであり、元寇などの後には北畠親房が「神皇正統記」を書いたり、「歴史を学ぶこと」の重要性が説かれているわけで、つまりは「歴史」というのは民族・国家・国民の「アイデンティティの確立」の上で重要なものだからである。
これはだから江戸時代後期になってある意味日本人としてのアイデンティティを「意識しなければならなく」なった、あるいは「アイデンティティが動揺してきた」のを受けて「国学」が盛んになったのと同じ理由で、だからこそ同じ時代に頼山陽による「日本外史」が大ヒットしているのだろう。また「大日本史」を編纂していた水戸藩が幕末維新において大きな役割を果たすのも、ナショナルアイデンティティとしてのイデオロギーが一番明確だったからということも大きいわけである。
当然ながら明治維新の後には帝国日本のアイデンティティを再確立するための修史事業が再開されるのだが、結局はヨーロッパ方の実証主義的・科学的な歴史学の方向性と水戸学的な方向性がバッティングして「神道は祭天の古俗」発言だとか「南北朝正閏論争」などのイデオロギー的な対立から最終的には頓挫してしまい、「日本編年史」編纂の大業を担うはずだった東大の史料編纂所も文字通り史料を蒐集・保存・編纂する機関になってしまってそれ以来国家事業としての修史は行われていないわけである。「明治天皇紀」なども宮内庁の所管であり、国家事業というよりは宮中の事業の感が強い。「大正天皇実録」「昭和天皇実録」も同様に宮内庁書陵部の事業である。
そういうこともあって日本では国家・民族アイデンティティ、ないしイデオロギーに歴史学が関わる部分があまり強くなく、むしろ教育勅語のような本来は民衆訓導のための勅語のようなものが国家主義イデオロギー文書として代替されてしまったわけである。勅語は当然ながら思想的な内容しかないわけで、それを裏付けるための歴史的内容が欠けている。その後も司馬遼太郎をはじめとする私人の手によるいわば稗史が国民的な読み物になってしまっていて、重厚な史書が教養人としての大人の読み物にならなかったことが日本におけるアイデンティティのぐらつきとか保守思想の確立度の弱さみたいなものに現れているのだろうと思う。
そう考えてみると歴史学より政治学の方が偉いと思われるような倒錯が起こるのは明治政府内でアイデンティティ主義的・イデオロギー主義的な派閥よりも伊藤博文らの実務主義的な、つまり源氏物語的な意味での「やまとごころ」的な派閥が勝利を収めたことの反映でもあるのだろうと思う。そういう意味では(社会)科学が思想に優越した、というある種の健全性を反映していると言えなくもない。
ただ歴史学というのは本来は血湧き肉躍るような物語的なものではなく、淡々とした事実の羅列であって、そこからアイデンティティ的なものを読み取るのはその史料の充実の上に立っての歴史家の役割であって、すぐに思想に短絡するような方向性は本来の持つ「歴史の保守性」みたいなものとは両立しない。「歴史は大人の知恵」であって、過去をすぐ否定したり乗り越えたりしたがりがちな若者や左翼のものではないからである。
だから歴史家の側としては、というか自分はもはや歴史学という業に従事しているわけではないから外側からの視点になるけれども、こうした日本の国民的なアイデンティティの変動要素の強い時期に、大人の知恵としての歴史を説くことがまさに重要なのだとは思う。
逆に言えば法学部や政治学者の傲慢もまた歴史の1ページとして記録していくことこそが歴史あるいは歴史学の本質的な強者性というか深淵であるわけで、こちらが深淵を見ているときには深淵もまたこちらを見ているわけである。
実際「縄文ナショナリズム」のような奇天烈なイデオロギーが出てくるのも歴史が軽視されているからに他ならないわけで、歴史学の最近の研究の深まりがそういったよくわからない妄想系ファンタジーを地に足がついたものに交換していくことに役に立てば良いのだがとは思う。
プーチンのロシアのように自らが立てた自国の歴史像にハマりすぎてついには大殺戮に及ぶというのも困った話ではあるのだが、ウクライナが自らの歴史を更新しようとしているように、また中国共産党の中華民族イデオロギーに対して台湾が新たなナショナリズムを発展させているように、歴史というのは21世紀に主戦場となりつつある、というかすでになっているアイデンティティの戦いにおいて主戦場でもあるわけである。
「歴史戦」という言葉は今まで反韓反中のような日本が不利に作られた戦後国際秩序に対する反発から出てきたことが立ったわけだが、中国の東アジアにおける支配拡大の意図がより明確になってきている現在となっては、むしろ彼らによる侵略(精神的なものも含めて)に対抗するための戦いという別の意味合いも出てきていると思う。高市首相の台湾有事発言に対する日本大使館や中国外務省のツイートなどを見ていると彼らは本気で戦いを仕掛けてきているのだなと思うし、それに一歩も引かずに反論している多くのツイートは非常に頼もしいなと思う。
私自身もさらに勉強し、本にまとめていきたいと思う。
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