自分が世界に存在することに対する「軽さ」と「不安」:「ドリブルヌッコあーしちゃん」の涼と「Change the World」の藤沢
Posted at 25/04/28
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4月28日(月)曇り
昨日は9時ごろ寝て、朝起きたら4時ごろだった。二度寝しようとしたが寝床の中で伸びなどしていたら割と活発になってきて、起き出してコンビニにジャンプを買いに行った。帰ってきても色々なんだかんだとやっていたらブログを書き始めるきっかけが掴めなくて遅くなってしまった。最近どうもそういう傾向が強い。
「存在の軽さ」というようなことがマンガのテーマになることが時々あるけれども、今朝更新のウェブ漫画でそういうのが二つあった。
一つはジャンプ+の「ドリブルヌッコあーしちゃん」。
https://shonenjumpplus.com/episode/17106567265435705971
ここに出てくる「秤涼」というサッカーの天才キャラが、サッカーを辞めようとしてボールを捨てようとしたら主人公の桜野あしなに拾われ、ドリブル勝負をすることになるが、あしなの言葉の熱さに「重てえなあ」と拒絶感を示す。今度はあしなに注目していた新堂(涼とは同じチームだった)に勝負しようと言われ、「どいつもこいつも重てえなあ」というわけである。
しかし、その涼が実は「自分の存在の軽さ」について悩んでいた、というのが明らかにされた。今回は「俺の人生は軽い。それはもちろん悪い意味での軽さだ」というモノローグから始まる。自分が誰かにとって重要な、つまり「重い」存在になること、最初は母親だったのがだんだんそうは感じられなくなり、中学に入ってサッカーをやめて彼女を作り、そこに「重さ」を見出そうとするのだが、陰で「重い」と言われているのを聞いてしまう。そこで偶然出会ったあしなが「現代サッカーにおける個の軽さ」という本を読んでいるのに驚いて、自分でも読んでみるが、「誰しもが代わりの聞かない存在になりたい」ということに共感して涙を流す。
涼は新堂とあしなに「3人でボールを蹴らない?」と誘われ承諾するのだが、「俺の人生は軽い。でも俺にそう思わせないようにしてくる奴らもいる。それは俺の人生に重く関わってくる奴らだ。でもその重さはもちろんいい意味での居心地の良い重さだ」と思う。
どちらかというと文学的な意味での「人生の軽さ/重さ」という感じである。
もう一つはマンガワンの「Change the World」。
https://manga-one.com/viewer/289666
こちらは有料なのだけど、とてもよかった。(2週間後に無料)
この作品は作演出の浜野と女優の村岡を中心とした高校演劇のマンガなのだが、もう1人演技は素人だが浜野の熱さに共鳴した藤沢という男子が出てくる。地域の大会で浜野と村岡は高く評価され、東京での合同公演によばれるが藤沢は選に洩れ、すぐに審査員にどこがいけないのか聞きにいくのだが、「体幹ができていない」と指摘をされる。
そこで浜野に相談すると鈴木忠志のメソッドを紹介され、また演技の見本として野田秀樹が紹介される。前々回には別役実の言葉も出てきたが、80年代に演劇をやっていた私としては誰も懐かしい存在だった。
で、藤沢は鈴木メソッドで体幹をよくする稽古を1人で自主練するわけだが、その甲斐あって試験期間の部活禁止期間の終了後にはただ立っているだけで浜野に「いい演技するなよ」と言われるようになる。また藤沢は再び審査員のところへ行って演技を見てもらい、「合同公演に出たい」と直訴する。その結果は描かれてはいないのだけれども。
藤沢もまた自分の存在を確かめられない悩みを抱えていた。これは私自身にもわかる気がするが、舞台に立っているときにどのように舞台にいればいいのか、ということが舞台経験のない人間にはわからない。これは感覚とか体の持ち方とかそういう話なのだけど、体幹をしっかりさせる、という方法論は一つあると思う。私はどちらかというと東洋体育系の方法論の劇団だったからその感じを思い出すのだが、いずれにしてもある種腰を落とすというか、能や歌舞伎の方法論みたいなものが日本人の身体には適している感じはある。まあそれを新劇では欧米的に体幹という言い方をするのかなと思うが、これはスポーツでいう体幹の重要性とは少し違うと思う。
私の実感として、大学生の頃の自分というのはどういうふうに世界にあればいいのか迷っている、悩んでいる感じがあったが、舞台上で立てるようになるとそういう感じが消えていったのを思い出す。その辺を体得した藤沢が「舞台に立つってことは、世界に立つってことなんだな」と言っているが、この感覚を掴めると、実際世界でも生きていけるようになるんだよな、と思った。
「居心地の良い重さ」とは、「自分が世界に存在していいという感じ」だと言い換えられるだろうし、「悪い意味での軽さ」というのは「自分が世界に存在することが許されるのかという不安」だと言い換えられるだろう。
藤沢が感じたような実感としての感覚は理解できるが、涼が感じたような文学的な意味での軽さみたいなものはどちらかという観念的な感じはするが、理解はできなくはない。まあ少年マンガとしてはそれを表現する方が王道だろうとは思うけれども、演劇ではそれだけでは軽くなってしまう。
久しぶりにそんなことを考えたなと思った。
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