堀江貴文『ゼロ』を読んでいる:「今ココ」から脱出する手段としての受験勉強と「ゼロをイチにすること」/犬も歩けば棒にあたる:書泉ブックマートで複製原画をゲットした

Posted at 13/11/04

【堀江貴文『ゼロ』を読んでいる:「今ココ」から脱出する手段としての受験勉強と「ゼロをイチにすること」】

二三日、書こうと思ったテーマがないわけではなかったのだが、うまく文字にならないまま書けないでいた。

一番書こうと思ったのは堀江貴文『ゼロ』(ダイヤモンド社、2013)についてなのだが、まだ読み終わっていないということもあるし、読んでいてあまりにもたくさんのことを考えてしまったということもある。

昨日も、自分とマンガのことについてなどをまとめて書こうと思ったのだが、日本シリーズ第7戦を見てしまい、この野球というコンテンツについて書くべきではないかと思い始めて、書く方向性が定まらなくなってしまった。

「見るスポーツとしての野球」というコンテンツとは、それを自覚した中学生のころ以来30数年の付き合いがあり、さまざまな個性の選手・チーム・球団を目撃することでいろいろなことを感じ、考えてきた。

特に昨日のシリーズはもっとも新しく9年前に一からスタートした球団である楽天が、最も古い79年の歴史を持つ古豪ジャイアンツと戦って勝利した戦いであったから、そこには様々な要素が交錯したことは間違いない。

ただ、これについてきちんととらえ直して考えてあるわけではなく、コンテンツ論の一環として書くにはまだ準備不足のように思われた。

ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく
堀江貴文
ダイヤモンド社

今日は主に『ゼロ』を読んでいて、「階層上昇の手段としての勉強」というようなことをずっと考えていた。下流社会論や、階層分裂論などは90年代半ばからさまざまに形を変えて語られてきているけれども、階層性とか地方性とかいうものを打ち破り、「今ここでないどこか」に抜け出すための正当化された手段として、「東大を目指す」というものがある、ということを実際にやってのけたのが堀江貴文という人であり、それはまた私もまたそうだったということについて考えていたのだ。

これは例えば、和田秀樹氏がブログなどでも常に書いていることの一つだ。地方とか階層によっては蟻地獄のようにそこから抜け出せない場所というのはある。勉強するということ自体に迫害が伴う状況というのはあるわけで、それから抜け出す手段としての受験勉強というものを援助したいというのが和田氏が「受験本」を書く強い動機になっていて、これはとても考え方がよくわかる。

その立場から言うと、茂木健一郎氏の言うように受験というものに受験勉強以外の要素、幅広い人間性の評価などが含まれる改革が行われることは、文化資本の乏しい家庭環境・地域環境にある生徒にとっては、本人の努力だけでその状況を抜け出すことがより困難になるわけで、やはり懸念を持たざるを得ないということになる。

私のツイッターのタイムライン上でもやはり同じようなことを感じる人が多いようで、おおむね今回の自民党の改革案や茂木氏の意見には賛同できないという意見が多い。それはおそらく現在の受験成績だけによる選別が不合理でないと言ってるわけではない。それはもちろん不合理でないわけではないのだけど、しかしそれでも地方の蟻地獄から脱出するためにはある意味確立された数少ない方法の一つであるわけで、それを無にすることに対する懸念を多くの人が感じているのではないかと思った。

野球のことを思い出して思ったのは野球もまた階層上昇のために確立された方法の一つだということだ。しかしこれは受験よりもさらに可能性が低い。とてつもない才能を必要とするだろう。1シーズンだけ活躍して消えていく選手だって数少ないが、そこまでもいけない選手の方が多い。しかし確かに、野球や大相撲やサッカー、あるいはAKBのようなアイドルグループもまた、自分の努力次第で泥沼の世界から抜け出す手段になる。

ブラジルのサッカーのように、あるいはタイのムエタイのように、多くの子どもたちがそれに賭け、またそれ自体が産業になっていく世界もある。日本の受験が産業として発達したのは階層上昇というよりは上の階層の階層維持の執念の産物である面が強いかもしれないが、しかしそれによって下の階層の子どもたちの中にも福音となる例はないわけではない。

しかしそれは、堀江氏の本の中でも前半の話にすぎない。後半はその状況から彼が抜け出して東大に入り(彼は私も住んでいた駒場寮の後輩だということをはじめて知った)、塾講師をやり、麻雀に明け暮れる中で、一つ一つの達成体験を重ねるとともにインターネットとの運命的な出会いによって一気に起業に向かって走り出す。在学中にその無限の可能性を理解し、金をためる半年を待てないという理由で600万の借金をして会社を立ち上げ、それがライブドアになった。

彼の人生がすごく自分と重なる点がありながら、その1995-6年のスタートダッシュによって彼は4年後に上場する会社を立ち上げることができたのだ。

そこから多くの学びがあると思うのだが、彼はやはりその時の状態をこのままではまずいと感じていたことに間違いなく、インターネットに賭けるということがそこから脱出する手段になる、と理解できたことが大きかったわけだ。

なるほど後から振り返ってみると、当時は本当に現代のネット社会が始まったまさにその時であって、とても現在のような社会は想像できなかった。私もパソコン通信をやったり、ネットで図書の検索をしたりのサービスがアメリカで行われていることは理解していたが、パソコンというものは基本的にスタンドアロンで使うべきものだと思っていたし、ネット上に現在のようにオーソライズの有無にかかわらずこれだけの膨大な情報が溢れる時代がやってくるとは思わなかった。当時はまだ、ポケベルから携帯への移行期で、私自身も携帯を持っていなかった。

時代の風に乗って社会を変える仕事に参加できるというチャンスはそうそうあるものではない。彼は見事にそれをつかんだわけだ。

この本の後半、彼の言っていることは、「働くことは自由になることだ」ということだ。そして働くということは「自分で考えて仕事をする」ということだ。考えて働いて、『ゼロ』を『イチ』にする。私はたまたま横浜の有隣堂で彼のサイン本を買うことができたのだが、表紙の裏には彼のサインと、ゼロのわっかの中に『イチを足そう!』という文字が彼の似顔絵とともに描かれたスタンプが押されている。イチを5にするには、4働くという手段と5をかけるという手段、つまりショートカットする技術があり得るが、ゼロをイチにするにはイチを足すしかない、つまり働くしかない、というのが彼のこの本でのメッセージで、つまりそれはライブドア事件によって最終的に刑務所に入り、会社も手放し、再び『ゼロ』になっても立ち上がれるんだという経験をしたのちに初めて放つことができたメッセージなのだ。

普通の成功者はなかなか、特にプライドの高い成功者はそうそう自分の成功の要因を「努力」だとは言いたがらない。ふつうそれはかっこ悪いこととされている。というのは、成功者にとっては努力はあまりに当たり前のことで、取り立てて言うべきことではないと感じられるからだ。彼もそういう経緯があって初めてそれは「取り立てて言うべきこと」なのだと感じるようになったのだろう。ゼロをイチにしようというリスクへの挑戦、一歩を踏み出す勇気と、まさにその地道な足し算としての努力、そして成功、というステップを踏むしかない、というメッセージを送るようになった彼は、やはりライブドア時代とは大きく変わったのだと思う。もちろん、彼の言うように、それは「何を伝えるべきか」ということを理解した、ということにすぎないのかもしれないのだが。

まだ読了していない時点で感想を書くのはどうかと思っていたのだが、結局かなり書いてしまった。あと36ページ残っているのだが、残りのページでまた新たなメッセージを感じたら、読んだ後で追加することにしよう。


【犬も歩けば棒にあたる:書泉ブックマートで複製原画をゲットした】

今日は変な天候で4時過ぎにはもう暗くなっていたのだが、傘を持って外出し、神保町に出かけることにした。普段と経路を変え、大手町で一度外に出て新しくオープンした「大手森」を散策してみた。ほぼ飲食店街という印象だったが、成城石井が入っていてそこで飲みものを買った。寒くなるにつれて乾燥して来ていて、思ったよりも体が水分を要求しているように感じた。

これからコンバット 1 (芳文社コミックス)
森尾正博
芳文社

半蔵門線で神保町に出て、すずらん通りへ行く。忘れていたが今日は神保町ブックフェアをやっていたのだ。中小出版社が屋台を出して、いろいろな本を安く売っていた。私はいちいちのぞくのが面倒で買わなかったが、探せば掘り出し物があったかもしれない。いつものように書泉ブックマートをのぞき、芳文社のマンガの複製原画展を見て、該当のマンガを買えば複製原画プレゼントの抽選権を得られるということで森尾正博『これからコンバット』1巻(芳文社、2013)を買った。抽選は12面体?のさいころを転がして1が出たらプレゼント、というものだったが念を込めて振ったら1が出た。『これからコンバット』はもう売約済みになっていて、私は『ピアノのムシ』の原画がもらえることになった。「犬も歩けば棒にあたる」である。

ピアノのムシ 1 (芳文社コミックス)
荒川三喜夫
芳文社

そのあとがいあプロジェクトでカンパーニュを買ったら半額にしてくれたし、地元に戻ってきて「てんや」に入ったらJAFの会員割引で50円安くなったし、案外今日はそういう日だったのだなと思った。

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