死と生/音と意味
Posted at 08/04/18 PermaLink» Comment(0)» Trackback(0)»
昨夜。仕事は7時半ごろから急に忙しくなるという最近のパターン。昨日は雨がかなり強く降っていたので、帰りは傘がおかしくなった。
| 詩学 (1968年)西脇 順三郎筑摩書房このアイテムの詳細を見る |
西脇順三郎『詩学』を読みつづける。amazonの中古で1968年発行のものを入手したが、これは表題が『詩學』と旧字体になっている。図書館で借りた本は新字体の、1969年発行の筑摩叢書版。原本はケース入りのハードカバーだが、ケースも灰色だし、西脇らしいモダンな装丁。1968年といえば一斉に全共闘文化が咲き始めた時期になると思うが、当時この本はどのように受け入れられたのか、興味が湧いてくる。西脇はモダニズムの詩人だから、いわば戦前派だ。戦後の詩壇は荒地派などかなり傾向が違ってきているし、60年代後半には寺山修司や唐十郎などのアングラ系が出てくる。そう考えてみるとこの時期の文化もそれなりに重層的なのだなと思う。
10章が「原始主義」。ここは生と死の問題を扱っているが、「すべての存在は復活であるという説は、マラルメでもボードレールでも信じていた。」という言葉があまりピンと来ずによく考えてみたのだが、つまり「生」とは「再生」である、ということで、「生」は「死」を前提としている、ということのようだ。「一粒の麦もし死なずば」とか、輪廻転生的な思想、大地母神のイメージ、冬に死して当時に復活する不敗太陽神のイメージ、豊饒の女神デメテルと娘の冥界の妃プレセポネーの関係などがそこに暗示されているのだろう。生は死があるからこそ成り立つ、というのは宗教的な観念であるが、これは神話時代から、あるいはその前の文字が発生する前の段階から生まれていた、「死」というものを受け入れるための人間の思想的葛藤が生み出した観念であり、またそのように生と死をとらえるのが西脇によれば「原始主義」ということになるようだ。そしてここに原始的なポエジイがあるという。
西脇は「ポエジイは新しい関係を発見することである」とするが、この「復活」の考え方は、「死」と「生」の不可逆的な関係を「復活」という概念を編み出して新たな関係を発見したわけだから、非常に本質的なポエジイだということになる。そこから、西脇は「ポエジイは悲劇的である」と結論付ける。そこにはいくつか意味が含まれよう。
11章が「音の世界」。詩作における音楽的な性質。音の強弱、高低、長さ、リズム。詩はもともと韻文として発達したが、(定型詩に対する)自由詩が生まれてリズムは変化したが、カダーンス(イントネーションが生み出す音の高低)はあるし、「子音と母音の結合」が生み出す「モザイクの文様」はなおある。「言葉の意味が明確でないほど、言葉の音だけが浮かび出てくるから固有名詞をヨーロッパの詩人は好んで使った。」という指摘はなるほどと思った。漢詩を読むのは現代語訳でなく、漢文の読み方がよい、というのもその通りだと思う。詩において音をあまり重視する考え方には西脇は賛成していないが、「言葉の音と思考は互にその音と意味を調和させている」としている。やはり詩において音の問題は大きな位置を占めているが、西脇にとってはやはり思考を重視したいという主張が滲み出ているように思った。
雨はとりあえず上がっている。今日は多分、一日降ったり止んだりなのだろう。
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