ル・クレジオ『アフリカのひと』/サムライブルー2006

Posted at 06/06/12 Trackback(1)»

昨日はかなり疲れが溜まっていてあまりろくに何も出来なかった。創作を少し進めたのと英語を勉強したくらい。一日中雨が降っていた。夕方それでもだいぶ回復してきて7時過ぎに町に出る。地元の書店に一応行ってみたがやはり不満なので日本橋の丸善に出てプレッセで買い物して帰ろうと思い日本橋に出る。行ってみるともう丸善は閉まっていた。宋だ、日曜日は早いのだ、どうしようかなと思いつつ結局八重洲ブックセンターまで歩いた。佐藤優が入り口近くに何種類も積んであり、特に大川周明を扱ったものが目を引いたが、とりあえずあとに回すことにして買わなかった。

日米開戦の真実 大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く

小学館

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一階の文学書をいろいろ物色。サイードの『文化と帝国主義』を探したのだが見つけられなかった。なんだかまだぼおっとしていたのかもしれない。しかし外国文学の棚でル・クレジオ、ナイ・ポール、クッツェーといった人たちの著作を見つけ、何冊かぱらぱら見てみて一番自分の趣味に合いそうなル・クレジオ/菅野昭正訳『アフリカのひと』(集英社、2006)を購入。集英社を最近見直すことが多い。

何か買って帰ろうと思ったが、もう東京駅の大丸も閉店時間になり、買って帰るより食べて帰ろうと八重洲地下街の中央通り側の終点の和光でロースかつ定食を注文し、麦酒をちびちびやりながらル・クレジオを読んだ。

少年時代のナイジェリアでの自然の記憶は、非常に共感するものがある。今は私も都市暮らしだが、子供のころは自然の中で暮らした時期があり、その自然の激しさ、暴力的なまでの猛々しさは子ども心に記憶に生々しい。白蟻の塚を兄と二人で破壊して回る無意味な子どもの暴力性というのも、自分の鬱屈していた子ども時代の今ではよくわけのわからない数々の無意味で時に暴力的ないたずらを思い出す。

ル・クレジオをポストコロニアル作家と呼ぶべきか否か。彼の家系がブルターニュのケルト系で、フランス革命のときに国民軍に参加し、ブルターニュの風俗を否定されて(市民革命とは国民の創設=地方文化の撲滅の過程でもあった)モーリシャスに移住し、そこでクレオール語を使って生活しているうちにモーリシャスがイギリス領になり、そうした経緯の中で彼の父の代にイギリスに渡り、親戚であった母の一族はフランスに戻る。第二次大戦中は父はアフリカで医者として生活する一方、母と著者たちはニースでドイツ兵の摘発を恐れて息の詰まるような生活を送った。大戦終結後、父の働くナイジェリアに渡った8歳の年の1年余りの期間が著者のアフリカ体験の原点であるわけだ。

彼は家系と彼自身に目のくらむようなさまざまな要素を持っているわけで、しかしこうした経緯を持つ人たちがヨーロッパには少なくないのだと思う。ある種のディアスポラを経験し、また「流れ者」としての植民地官僚の要素とか、植民地争奪戦のうちにフランス語を喋るイギリス人になってしまったり、こうしたさまざまな経緯を持つ中で、自らのアイデンティティは自ら決める、という流儀が確立して行ったのかなと思う。ポルトガルの歴史を読んでいるとブラジル、アンゴラ、モザンビーク、マカオといった海外植民地がポルトガルの歴史に死活的な影響を及ぼしているのが巨視的に見てもわかるのだが、個人のレベルに降りていくとフランスでも相当大きな影響があったのだなと思う。日本でも満洲体験・台湾・朝鮮・南洋などの外地体験がいろいろな面で影響を持っていると思うが、このあたりはまだ十分に日本史になりきれていないのが残念だ。

アフリカのひと―父の肖像

集英社

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ワールドカップがはじまった。ときどきちらちらとテレビを見ているが、それぞれの国がそれぞれのプレースタイルを持ち、応援もそれぞれの国の様子を反映していていろいろと面白い。日本代表の試合ばかり見ているとサッカーとはこういうものかと思ってしまうが、強豪国の試合はそれぞれが結構露骨に狙いが表れていて可笑しい。日本はクールにプレーして、なんだか忍者がサッカーをやってるみたいに見えるときがあるのだが、そういうのもまあ日本らしいということなんだろうなと思う。ぜひ忍者に栄冠をつかんでもらいたいと思う。いや、今回のキャッチフレーズはサムライブルー2006であった。


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