あざといということ/「辛いこと」と向き合うためには
Posted at 06/05/18 PermaLink» Comment(0)» Trackback(0)»
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昨日。朝のうちはそうでもなかったが、昼頃から雨が降り始めて、夜までずっと降っていた。家の入口のところの生垣にあやめが植わっているのだが、花が咲くとその重みで道路の方に倒れてしまい、みっともないなあと毎年思っていたのだが、父がやったのだろう、竹で低い垣根を作って倒れないように花を支えるようにしてあった。これがとてもさわやかで気持ちのいい印象になっていて、やはり自然素材というものはいいなあと思う一方、「竹」というものの持つ魅力を再確認したように思った。
行きがかり上ある英語教材を一月ほど使用することになったのだが、やってみるとこれがなかなか良く、自分にとってちょうどよい訓練になっている。英語を読むときなかなかスピードが上がらずまた把握力も低いのが問題だなと思っていたのだが、しばらくこれをやったら力がつくかもしれないと思った。自分を訓練する感じというのが久しぶりで、ちょっと気持ちのよいものだと思った。
『マエストロに乾杯』。結構読んだつもりだったが、今確認してみると昨日読んだのはホセ・カレーラスとペーター・ホフマンだけ。声楽家というのは他の音楽家に比べても独特な感じがする。やはりオペラにおける演技者という側面があり、演奏技術だけではないものがあるからだろう。かといって俳優とは当然違うわけで、ちょっと面白いと思う。
『小僧の神様・城の崎にて』。「赤西蠣太」「十一月三日午後の事」「流行感冒」「小僧の神様」「雪の日」と読んで「焚火」が読みかけ。時代劇、陸軍演習に出くわしたこと、娘を大事に思うあまり無神経な女中に腹を立てたこと、小僧への善意が自分自身に決まりが悪かったこと、友人たちとの交歓、といった「こと」を描いている。話としては二番目三番目が印象に残るが、「小僧の神様」はちょっとあざといかな、という感じがした。そういえば「あざとい」とは「悪敏い(わるざとい)」という意味だろうか。これが評価されたというのは分らないでもないけれども、ちょっと違うのではないかという気がする。ただそれが当時の人たちの「短編小説」感だったのだろうという気もする。
『わたしを離さないで』。あまり進んでいなかったのだが、寝る前にちょっと読もうと思ったらはまってしまい、1時過ぎまで読んでしまった。今第16章、228ページ。残りは120ページ弱だが、話がどう展開するのか見当がつかない。最新作だからネタばれになるようなことは書かないが、表紙がカセットテープの絵であることに昨日初めて気がついた。作中あるカセットが重要な役割を果たすのだが、それもまだ読んでいる最中だからそれが最終的にどんな意味を持つのかまだわからない。こういうわくわく感がイシグロの作品にはある。翻訳がかなり丁寧な日本語なのでそれに違和感を持つ意見もどこかで読んだが、その上品な感じが実は結構辛い話であるこのストーリーに明るさをあたえているのだと思う。
そう、読んでる最中に思ったのは、辛い話だよな、ということだった。考えてみたら、イシグロの書く話は『日の名残り』も『わたしたちが孤児だったころ』もとても辛い話なのだ。しかし語り口が明るいので、とても明るい印象が残る。しかしみんな辛い話だ。辛いことってなんだろう、と思う。そしてその辛いことに向き合うためにはどうしたらいいのか。もちろん解決策が明示されるわけではないが、読み終えると何か暖かい感じが残るのがある種の解決になる、という感じの作家だという気がする。中身は書かないが、主人公の女の子がポルノ雑誌を一生懸命に見ていて、それを見ていた友人の男の子とあることについての話をする、そのあたりのややコミカルだがしばらくするとある辛さが読んでいるものに形成されるエピソードなど、性に関わる問題が出てくるのも前に読んだ二作にはないことだ。現代人にとって性というのはある種の深刻な問題なんだなと改めて思わされる。生物の発生のときから続いていることであるのにね。
今朝は雨は上がっている。靄がかかって、遠くの山の峰が見えない。さわやかではあるが、少し肌寒い朝だ。
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