畑にメガネを置き忘れる/月面着陸/アウシュヴィッツ生還者の肩身の狭さ/パレスチナ問題の全体像と日本の貢献/原作者の自殺/「うっちー」と呼ばれた逃亡犯

Posted at 24/01/30

1月30日(火)晴れ

昨日は疲れが出てしまってあまり何もできなかった。力を振り絞って外で枯れ草を集めたり曽祖父が建てた農作業の小屋に絡みつく枯れた蔓草を外したり大きくなってしまった畑に生えた灌木を切ったりしたのだが、もう日が低くなっていて作業がしにくかったこともあり、あまり何もできずに終わった。こういう作業は全体を見渡さないといけないので、近くが見えるメガネと遠くが見えるメガネの、どちらを使えばいいのか、まあこんな作業をしている時にいちいち掛け替えることもできないので、考えてしまう。思い出してみると、父が畑で作業して、畑にメガネを忘れてきてどこに行ったかわからなくなったことがあったのだが、当時はなぜそんなことが起こるのか理解できなかったけれども、自分がそういう目の状態になってみればよくわかるなと思った。

草がぼうぼう生えた畑で作業していると、道具は簡単に見失う。昨日も鎌と山用のノコギリを持って畑に行ったのだけど、小さな枝なら鎌で払えるが少し太い枝になるとノコギリが必要なのだけど、動きながら作業するのでその前にノコギリで作業した場所においておくことになるから、違うことを考えていたりするとすぐ場所がわからなくなる。メガネを畑に置きっぱなしにすることもないとは思うのだが、私以上によく色々なことを考えていた人なので、まあそういうことが起こっても不思議はないなと同じような歳になってようやく親のことが理解できるということはあるのだなと思った。

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良いニュースとしては、月面探査機SLIMが太陽電池に太陽光を受けて発電することに成功し、通信が確立してミッションが再開できたということ。これでこの計画は成功と言えるレベルに達した、ということだと思う。JAXAも予算の少ない中で頑張っているので成果を上げることで予算をより多く獲得できるようになるといいなと思う。それ以前にもっと政府自身が宇宙開発に積極的になると良いのだが。

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イスラエルとガザ地区についてのことについては、いろいろと出てきているし報道もあるのだけど、印象に残ったことをいくつか。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2024/01/29/37092.html

この記事は、アウシュヴィッツの生き残りの人々が、「ナチスに抵抗しなかったという負い目」を背負い、イスラエルでも肩身を狭くして暮らしていたという話で、実は読んでいてかなり仰天した。

「アウシュヴィッツの被害者」というのはイスラエルやユダヤ人が自分たちの「絶対的正義」を主張するときの錦の御旗みたいなものなのに、当事者たちは返って抑圧されていて、また「ナクバ(パレスチナ人が故郷を追われガザ地区などの難民になったこと)」の被害を受けたパレスチナ人に同情して自分たちが入居した家にもともと住んでいたパレスチナ人の家族のために荷物を保管していたという話は人間性というものの存在に改めて感動させられた話だった。

逆に、イスラエルがアウシュヴィッツの被害を言いたて、ドイツでも硬直的にイスラエル支持しか言えなくなっている状況を作っているというのは、やはり健康的なことではないなと改めて思う。この辺りのところは中国や韓国の人たちが大声で戦争の被害や植民地化を攻撃するけれども、それは被害を受けた本人たちというよりはそれを政治的に利用しようとする人たちが言っていることだというのと似ていると思った。

「ナチスはいいこともしたか?」ようなナチス全否定の動きが起こっているのと同様に、日本が中国や韓国でやったプラス面のことに対してもそれを否定する主張が強くなっているけれども、そういうより客観的な動きを封じ込めようとするような政治的な「研究」が行われているということについては注視していかなければいけないところはあるだろうなと思う。

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現代パレスチナ問題の淵源は近代においてオスマン帝国の支配下にあったパレスチナにシオニズムの運動によってロシアやオーストリアなどの支配下の東欧からユダヤ人が入植してきたことにはじまるわけだけど、当時の住人としては元からいたアラブ人のユダヤ教徒もいるし、アラブ人のイスラム教徒もキリスト教ともいたという状況だった。東欧のユダヤ人たちはアシュケナージと呼ばれる人たちで、元から住んでいたユダヤ人はセファルディムと言われる人たちだから、同じユダヤ人と言ってもかなり文化の違いはあったということになる。

各国に少数民族として存在したユダヤ人が民族の故地とされるパレスチナにホームランドを作るというのがシオニズムの運動だったわけだけど、ユダヤ教は今ではヒンドゥー教や神道のような民族宗教とされているけれども、元々は布教する宗教であり、有名な例ではハザールのように国をあげて改宗した例もあった。

だから全てのユダヤ人がパレスチナにいたユダヤ人の子孫ではない、というのは最近明らかになってきているけれども、イスラエルでは原則的にその主張は少数派であり、自分のルーツがパレスチナにないということを知ってショックを受ける人たちも少なくない、という話もあった。

第一次世界大戦によってイギリスとフランスがトルコから土地を奪取し、シリアやレバノンはフランスの支配下に、メソポタミアとパレスチナ・ヨルダンはイギリスの支配下に置かれ、イギリスに協力したヒジャーズのハーシム家がネジドのサウド家に追われるとその子孫はイギリス支配下でメソポタミア、現在のイラクの王家になり、またヨルダン川以東の地のパレスチナ、現在のヨルダンの王家になった。

ヨルダン川頭部を切り離されたパレスチナはイギリスの委任統治下に置かれたが、そこではユダヤ人の入植が進み、トルコ支配時代以来の部族的支配が続いたパレスチナ人の側はイギリスの求める近代組織を作ろうとしなかったためにユダヤ人の側のみが国家に準じた組織の形成を進めた。

公平な統治者であろうとしたイギリスはユダヤ人とアラブ人の調停に手を焼き、ユダヤ人テロリストにイギリスの総督が暗殺されたりもしていたが、ユダヤ人の側はイギリスに見切りをつけてアメリカに協力を仰ぐようになったわけである。

結局第二次世界大戦後にパレスチナをどうするかが国連で話し合われた際、パレスチナ分割が決定し、ユダヤ人はそれに応じて従来の自治組織を基盤にイスラエル国家を建国したわけだが、十分な組織のないアラブ人の側は、パレスチナ分割案に反対する周囲の国とともに第一次中東戦争を始め、イスラエルの勝利に終わったために、本来はパレスチナ人の領域とされたところもイスラエルに併合されて、パレスチナ人は故郷を追われ、主にガザ地区に避難することになった。これが「ナクバ」と呼ばれるわけである。

このときの国境線が第3次中東戦争の後の国連決議によって結局現在の国境線として国際的に承認されるラインになっている。オスロ合意で二国家解決が決まり、パレスチナ自治政府が成立したが、東イェルサレムをめぐる合意が成立せず、インティファーダなども始まって現在の混乱に続いているわけだ。

ハマスはそのときのパレスチナ自治政府を握った主流派のファタハに反発して出てきたグループだったわけだが、ガザ地区で実権を握り、援助活動をする国連(UNRWA)とともに実質的にガザ地区の政府機能を果たしてきた。ガザはイスラエル国家によって封鎖され、外部との交流ができなくされたが、国連の援助によって生き延びることはできるという状況に置かれていた。その状況を打破しようとしたのが昨年のハマスの軍事部門と言われるカッサム旅団のイスラエル襲撃で、その中にUNRWAの職員の関与があった、というのが今問題になっているわけだが、UNRWAの職員の多くは現地採用なので、つまりガザのパレスチナ人であり、その中にハマスに共鳴するものがある程度含まれていることは不思議ではないだろう。

まあさまざまな経緯から、これはどちらが正義だとかどちらが悪だとか言えるようなものではなくて、それこそ未来を見て解決するしかないのだが、イスラエルも右派の主張が強くなり、パレスチナ側でも強硬派が力を得ているので、なかなか解決は難しいのは確かなのだが、解決案としてあり得るのは2国家解決だけだと思うので、それの実現を周囲の国々も当事者も目指してほしいのだが、イスラエル右派と実質的にそれを支援しているアメリカの存在があるうちはなかなか難しいかなという気はする。ただ逆にこの地域からアメリカの存在が全くなくなってしまったらイスラエル国家自体の存続もかなり危うくなるので、その辺のバランスもまた難しいなとは思う。

トルコのエルドアン大統領がパレスチナ問題についてたびたび発言するけれども、最近トルコはオスマン帝国の後継国家であることをよく言及するようになっているので、つまりは旧宗主国としてのポジションを持っているわけである。

シオニズム国家であるイスラエルも、入植が始まった当時の東欧系を中心としたグループ(キブツを作っていたのは彼ら)は建国当初までは主導権を握っていたが、徐々にドイツからの移民の経済力に圧倒されていき、またイスラエル建国によって国を追い出された中東イスラム国家のユダヤ人たちの流入によって右派勢力が強まるなど、イスラエル国家自体もずっと同じものではない。

われわれは中東において、主に石油という資源関係の輸入という経済関係によって交流がなされているわけだけど、アメリカやイギリスはそうした利権とともに宗教的な関係を持っているので、彼らは第三者として振る舞うことは難しい。

アメリカがイスラエルに加担することもあって中立であるべき国連はパレスチナ側に比重を置きがちになり、それをネタニヤフは批判するわけだけど、先日のNHKスペシャルは見逃したがだいぶ評判がいいので、日本は第三者として客観的に事実を積み上げ、この問題の解決に貢献するには悪くないポジションにいると思う。

この辺は利権が絡んでくると複雑になるが、第4次中東戦争以来日本は中東においてはアメリカとは違う立場をとることもあるわけで、田中角栄内閣では独自の石油外交を行い、それがロッキード事件での田中失脚につながったと言われているけれども、より注意深く振る舞うことは当然ながら、研究においては客観的な立場を取りやすいポジションなので、その辺で貢献していけると良いと思う。

どちらかが正しく、どちらかが間違っているというような教条にはなるべく飲み込まれないようにしていかないといけないと思う。

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新聞を見て驚いたが、「原作クラッシャー」問題でTwitterで話題になっていた「セクシー田中さん」の作者、芦原妃名子さんが自殺。そんなに追い詰められていたとは。ドラマ化が原因で自殺なんて、本当にあってはならないことだ。

発言者の多くは芦原さんに同情的だったと思うが、脚本家個人に対して攻撃的なツイートも多く、そのことに対しても自分の意図するものと違うことを感じていたのだろう。

こういうことを相談する相手がいなかったのか、いてもメンタル的に追い詰められてしまっていたのか、事情はわからないけれども、私もこのことに義憤を感じて書き込みやブログなどを書いてはいるので、何ができたのか、考えさせられるところはある。

心よりご冥福をお祈りし、このマンガ原作のドラマ化をめぐる問題について、より良い方向にシステムができていくように関係者の皆様の尽力をお願いしたいと思う。本当にあってはならないことだと思う。

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同じく新聞で知ったことだが、死亡した桐島容疑者と飲み屋でよく顔を合わせた知人男性のインタビューが掲載されていて、酒飲み仲間から「うっちー」と呼ばれていたことなど、その横顔が掲載されていた。その人は25年来の友人ということで、まさか逃亡犯だとは思わなかったといい、実際のところ本当に数奇な運命と言わざるを得ない。自分がやったことについてどういうふうに位置付けていたのか、その辺りも聞きたい感じはするが、どういう情報がこれから出てくるかはわからない。人の運命についていろいろ考えさせられる。

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