ドイツのイスラエル支持と日本の歴史認識問題

Posted at 23/12/01

12月1日(金)

今日から12月。今朝はけっこう冷え込んでいて、夜中に目が覚めた時に気温を調べたらマイナス2.2度だった。まだ水道管が凍結するほどの気温ではないけれども、そろそろそういうことも意識しないといけない時期になってきた。冬支度そのほか毎年12月は忙しいが、それに囚われているとメンタルがマイナスになりがちなので、一つ一つ仕事を片付けていこうと思う。

昨日はあまり本を読めていない、というか銀行に行ってやることに気づいて家に帰って用意してもう一度銀行に行ったらハンコを忘れていることに気づいてもう一度取りに帰る、というけっこう馬鹿なことをやらかしたり、変なところで時間を消費してしまって余裕が無くなったりした。職場に行く時に携帯を忘れたり、帰りもするつもりだった仕事を一つし忘れたことに後で気づいたりして、どうもまいったなと思っている。頭の中が散らかって片付いてないということなんだなと片付いていない居間を見ていると思うのだが、まあぼちぼちやろう。

先ほどドイツはなぜパレスチナ側に多大な被害が出ている状況になってもイスラエルを支持しているのかという解説記事を読んでいたのだが、1980年台に歴史家論争というのがあり、ホロコーストを社会主義(スターリン政権かということか)下での虐殺と比較することで相対化を試みた歴史学者がいて、それをきっかけにホロコーストは「唯一無二の歴史的犯罪」であり、他との比較や相対化を許さないという規範が打ち立てられたのだという。その後ホロコーストは「過去の克服」や「想起の文化」(負の過去を想起する営み)というドイツが戦争を反省するための方向性の中で特別の地位を与えられた、という過程があったようだ。「ドイツは反省している。それに比べて日本は」とよく言われるアレは、このことを言っているのだろう。

しかしそれは行き過ぎというふうにこちらからは見えるのだが、パレスチナとの関わりでイスラエルを批判する学者らもキャンセルされるようになり、イスラエル批判は許されないという空気になっているのだという。

この辺りは、似たような時期に起きた教科書論争によって左派の戦争認識がより強固な押し付けに傾いていった日本の状況とある程度はパラレルであるように思われる。いずれも戦争を知らない戦後世代の過去認識がいかに難しいか、戦争経験者が後継に退いて戦後世代が前景になった時に何が起こったかということを示す例であるように思う。

その評価自体は置いておくが、現在起こっているのは「ドイツ人は反ユダヤ主義を他の人種主義と区別して特別視するあまり、イスラエルへの批判も反ユダヤ主義として封殺してしまう」という問題提起であり、これはイスラエルによるパレスチナへの入植を欧米による植民地主義の一環と見る見方からきているのだろうと思う。これは近年アフリカ諸国などから欧米の過去の植民地主義を批判する動きが出てきたことと関係しているのだろうと思う。つまりはポリティカルにコレクトであろうとしてポリティカルにコレクトである思想から批判されているということになるのだろう。

ドイツやフランスなどのヨーロッパ諸国は、イスラエルに対する批判の矛先が鈍りがちなのはこうした状況があるのだろうと思うし、逆に反移民の右派勢力が伝統的な反ユダヤ主義を転換させて親イスラエルの姿勢をアピールし始めるなど、ある種の価値観の顛倒みたいなことが起こっていることもロシアとウクライナの戦争のような分かりやすい正義のありかとは違う複雑な歴史性に伴う亀裂を彼らの国内に生んでいるということなのだろうと思う。

また亡くなったキッシンジャーの名言として「イスラエルには外交政策はない。国内政治だけだ」というのが挙げられていたが、現在の状況とそれへの方針もネタニヤフ政権の主張と右派強硬派におもねる生き残り策の反映だという面は強いわけでなるほどと思うのだけど、欧米諸国の対中東政策も歴史認識をめぐる国内問題が反映しているということなのだろう。

日本ではイスラエルのキブツ共同体への憧れとか、パレスチナゲリラを支持し反イスラエル闘争を行った日本赤軍とか、第4次中東戦争後の石油ショックによりアラブ重視に舵を切った田中外交とか、その後の湾岸戦争、テロとの戦いなどにおけるアメリカとの協調政策とか、さまざまな経緯はあっても日本国家としてこの地域にそれほど深く関わってきてはいない。日本でこの地域のことに言及されるのは、石油関係の関心が大部分を占めてきたと言えるだろう。

近年研究が進んでツイッターなどでも情報が入ってくるのはありがたいが、それだけにこの地域の解説をなさる研究者に特定の政治主張から攻撃の矢が飛ぶような状況になっているのは副反応のような物ではあるけれどもご迷惑だろうと思う。

状況の推移をよく見ていくと同時に、日本とこの地域の関わり、あるいは日本外交のあり方や戦争に対する考え方なども改めて考える材料になるようなことが、ウクライナ戦争ともども怒っているのだなあと思う。

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