原爆バービーと「アメリカ人はなぜ世界で嫌われるのか」

Posted at 23/08/02

8月2日(水)晴れてきた

昨日は東日本では各所で雨が降り、だいぶ気温が下がったようで、当地でも最低気温は19.5度と久しぶりに20度を切った。久々に2階で寝て、それでも汗はかいたのだが、普段の寝苦しい感じとは少しちがってはいたかなと思う。

7月の振り返りと8月の見通しを立てようと思っていたのだけど、最近こういう全体的な把握をする試行みたいなものがあまり集中できなくていけないなと思う。

ただ、いろいろ考えていて思ったのは、コロナが明けて世の中は私が思ってる以上に浮かれてるなということ。どこのお祭りも人ではすごいし、隅田川の花火が百万人を超えたというのもそういうことなんだろうと思う。今年は諏訪湖の花火もかなりやるようだし、ちょっと大丈夫かなという気もしなくはない。

いろいろな商売も今まで我慢していた反動なのか派手に宣伝をしたりしていて、当方のような零細企業はなかなかそういうものに追いつくのは大変なのだが、しばらくこういう浮かれた感じが続くのは世の中の明るさという点ではそんなに悪くないんだろうと思う。

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アメリカのバービー人形と原爆開発者のオッペンハイマーが両方映画化されたようで、そのコラボのような企画がアメリカ的な悪ノリをしていて原爆のキノコ雲とバービー、オッペンハイマーの取り合わせが日本から強い批判を浴びる、というようなことが起こった。日本の公式は火消しに躍起になり、アメリカの公式も謝罪文を出したり(1行だが)していたが、これは日本人にポリコレというものがいかにアメリカ本位で、彼らの手前勝手な事情に基づいて行われているものかということをよく理解させたと思う。

もう一つ思ったのは、原爆の傘下というものは我々日本人はよく理解しているけれども、それは日本の教育の成果であって、世界的にはあまり理解されていないということ。ヨーロッパの中心で起こったナチスのガス室の惨状はドイツが敗戦国ということもあり世界的に強く認識されたが、極東の片隅で行われた原爆投下がいかに大きな被害を出したものだったかということは、我々が思っているより理解されていないということだ。

原爆は大量破壊兵器であり、その使用は人類に対する犯罪であって、その点においては、それを今のところ唯一都市で炸裂させた国であるアメリカは大きな原罪を背負っている。それは化学兵器=毒ガスを使用し、第二次大戦中に数百万人のユダヤ人を虐殺したドイツの原罪とも勝るとも劣らぬものだが、アメリカは戦勝国だったからその断罪を逃れているに過ぎない。

ただ、逆に言えば計画的に数百万人の単位で虐殺を官僚的に遂行したナチスの異常さに比べれば、二発の核兵器で数十万人「しか」虐殺していないアメリカの罪は軽い、と考えている人はいるかもしれない。あるいは日本が中国で行った虐殺(疑問点は多いが)に比べれば、というが、誰かがある人を殺したからといって当人が行った殺人の罪が軽くなるわけではない。そして日本は一方的な極東軍事裁判で既に裁かれているが、アメリカはその追及さえ逃れているということは忘れてはいけないだろう。

また、当時日ソ中立条約によって日本に外交官を駐在させていたソ連は、広島を視察しに行きその惨禍を目の当たりにしているのだが、この報告を受けてもソ連は日本がこれで降伏を受け入れるだろうとは考えなかったという。

考えてみればソ連は独ソ戦で1千万人を超える死者を出しており、日本の死者も1944年以降急増して300万人を超えてはいたが、日本が降伏するきっかけになる程とは考えなかったというのは、戦争の悪のスケールをどれだけのところまで許容するかという思想において、欧米と日本の認識はかなりちがっていたというところはあるのかもしれない。御前会議で陸軍はなかなか敗戦を受け入れなかったということはよく批判されるけれども、本土決戦を叫ぶ彼らの方が実は世界標準だったのかもしれない。

いずれにしても台湾有事が心配される中で、日本人のアメリカに対する国民感情が冷や水を浴びせられたのは中国を利するものであってあまり良いことではない。中国もここぞと日本批判を繰り出してくる可能性もあるが、それはそれで冷静に対処しなければならないだろう。

ただ、今回の事態は「アメリカ人がなぜ世界で嫌われるのか」ということの本質をはしなくも日本人の多くに知らしめたということの効果はあっただろう。彼らはつまり、無神経なのである。自分たちがやった虐殺を自分たちでネタにして笑うという感覚はタチの悪いジョック=いじめっ子そのものだが、それを自覚していない。そしてそれに対する批判が大きくなればポリティカルコレクトネスという網を被せて「これとこれは言ってはいけない」というコードを決めて自分たちがいかにいい人かを演出するが、そのコードに入っていない日本人に対しては平気でからかっていいと思っている。

もちろんどんなに無神経であってもモノホンのヤクザである中国やロシアと対峙している現在においてアメリカから離れることは賢明ではないが、こういうものが積もり積もってアメリカに対する不信が世界で高まっていきつつあるのだろうなと思う。

誰の作品だったか忘れたが、SFで、未来世界でいろいろな国がいろいろな理由をつけて自由に宣戦布告して相手を攻撃して良い、というのがあった。基本模擬戦争みたいなもので実際に人が死んだ利するものではない、という設定だったと思うが、そこで一番世界中の国から宣戦布告される国がイギリスだ、という話になっていた。イギリスはブリカスと言われるだけあって立ち回りが上手いし常に勝者の側にいる。そういういやらしさを攻撃される、という話だったが、イギリスが混迷を深めている今では圧倒的にアメリカがその標的にされるだろうなとは思った。

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7月に買ったマンガは全部で26冊あった。この辺についての感想も時間があってネタがない時にでも描こうと思う。見た映画は「君たちはどう生きるか」一本。読んだ小説は芥川賞の「ハンチバック」1冊。あとはウクライナ関係の本が多め。鈴木春信の浮世絵の本、高浜虚子の俳句、TSエリオットの詩、あたりがちょっと昔の感覚を取り戻してきた感じと言えるかなとは思う。

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