「鎌倉殿の13人」:頼朝の人間的な恐ろしさ/本当に理解者は上総介だったのではないかと言う寂寥感/対象を内在的に理解する/ニホンミツバチの働き方

Posted at 22/04/18

4月18日(げつ)曇り/小雨

昨日は休日だったがなんのかんのと用事があり、それでもマンガを読んだり録画機のハードディスクから過去の録画をBDに移してスペースを空けたり、スパイファミリーのアニメを2回分みたりしていたのだが、昼食後はなんとなくうたた寝をしてしまい、4時前になって仕事の本を買おうと岡谷の書店に出かけて、ついでに夕食の買い物をして、立ち読みしていいと思った永井晋「鎌倉幕府はなぜ滅びたのか」(吉川弘文館歴史文化ライブラリー、2022)を買った。この本は基本的に鎌倉幕府の側から幕府が滅びた経緯と理由を書いてあるようで、鎌倉幕府が背負わされていた問題を捌ききれなくなったことが幕府滅亡の理由、のようになっているのかなと思った。とりあえずまた読んでから感想は書こう。



ギアーツ「文化の解釈学 I」もようやく第1章を読み終えた。人類学の目的はある対象を内在的に理解することにあり、それを理解した上で対象に対処していくための知見を得る、そのために理論が作られる、だからその理論は理解するためのものであって無制限に展開したり一般化したりできるものではない、というのが趣旨だったと思うが、重要な視点であり手法であり科学だと思った。これは歴史学的な史料読解でその出来事の文脈を内在的に理解していくのと基本的には同じことだろう。歴史は過去のことだが人類学の対象は現在もなおそこに存在するものだから、理解がすぐ実践につながる。また歴史学による理解を人類学的な理解に応用することも可能だろうと思うし、ただそこで史料主義の歴史学と人類学が見解の対立を起こすこともありそうな話だし、また史料や書かれた文献や歴史書そのものが現在の政治を動かすものであるのは今回のウクライナ・ロシア戦争においてもはっきり現れているから、それ自体もまた人類学的対象と見ることもできるのだろうなと思った。

https://www.nhk.jp/p/darwin/ts/8M52YNKXZ4/episode/te/X61MGGM64Z/

夕方は早めに帰ってきてニュースを見、「ダーウィンが来た!」でニホンミツバチの生態を見て、これも面白かった。天敵の多いミツバチの働きバチの寿命は1ヶ月くらいというのは驚いたが、羽化して最初の頃は巣の中の仕事をし、生の後半になって蜜や花粉を取りに外を飛び回るというのはなるほどと思った。外回りのハチが死んでも中の仕事をしているハチが代わりに蜜を取りにいくようになるし、そのために女王蜂はひたすら卵を産み続ける。女王蜂というと権力者のようだが実際には卵を産むという役割があるだけで、新しい女王蜂が生まれると前の女王蜂は群れの半分を引き連れて新しい巣に移るが、その時は働きバチたちが斥候に行って良い巣の候補を探してきて、それに賛同者が過半数になると一斉に飛び立って新しい巣に移る、というシステムになっているのだという。ミツバチの生態というのはそのダンスとか子供の頃も読んだことがあるが、研究も進んできたということなんだろうなと思った。

https://www.nhk.or.jp/kamakura13/story/15.html

そして「鎌倉殿の13人」第15回「足固めの儀式」。この回は衝撃の回だとガイドブックにも書かれていたので割とそのつもりで見ていたが、前半の八百長のような反乱劇と、中盤の全ては頼朝と大江広元の策であったことが明らかにされていく中盤の戦慄、そして上総介が梶原景時に討たれる衝撃の場面で「わしに逆らうものは何人たりとも許さん」と宣言する頼朝の恐ろしさ、そして最後に八重が産んだ赤ん坊、後の泰時を抱く義時という場面で終わる。

この回に描かれた不満を持った御家人たちの反乱劇は創作な訳だが、佐藤浩市さんの演技で大変好感の持てる人物として造形された上総広常がなぜ討たれなければならなかったかということを理由づけるための大掛かりなフィクションだったと言えると思う。無私の義時を動かして上総介を反乱側に加えさせ、リーダー格にした上で上総介を討つ。無意識にその策謀に役割を振られた義時が、それを三浦義村に愚痴りにいくと、「お前はもうそれしかないということを本当は理解している」、「お前は鎌倉殿に似てきている。これは褒め言葉だ」と言われ、否定できない自分に気がつく。この辺りの、頼朝の勤勉な側近・下僚だった義時が政治家として「成長」していく過程の重要な画期としてこの上総介誅殺の場面が描かれ、そのためにいわばこの大河ドラマ全体の前半の大きな山場になっていて、そしてその回に後継者となる泰時が生まれ、父となるというもう一つの責任がかかってくるという展開も巧みだなと思った。

反乱を起こした御家人たちはどのような咎めがあるのか、一方で自分たちの意思は頼朝に伝わったのか、ということを気にし、老人たちは政子にそれを訴えて政子もそれを受け止めるわけだが、頼朝は義時と連携して反乱側の中心に加わった上総介といういわばアサッテの方角の大物を誅滅し、度肝を抜かれた御家人たちに上総の所領を分け与えることで共犯者にし、また木曽や平家を討つことでその所領を実力で勝ち取れと檄を飛ばすことで御家人たちにはっきりとしたモチベーションを与える。平家の所領を与えよというのは作中では時政に示唆された義時の進言なわけだが、それを頼朝への畏怖とともに与えることでより頼朝に逆らえないようにするという構造が凄い。「御恩」と「奉公」は実際のところ綺麗事ではない、ということもよくわかる。

割とこの頼朝、大泉洋という役者の本質をうまく引き出しているのではないかと思う。この頼朝はどんな役者よりも大泉さんが演じなければこの心底からの恐ろしさは出なかっただろう。三谷脚本の凄まじさだろう。威厳のありすぎる頼朝ではこの「せこいが故に恐ろしい、小心かつ手段を選ばない」頼朝のある種の本質を描き出せない、というか三谷さんはこの回のために頼朝を大泉さんにしたのではないかと思った。

この頼朝の「人間的な恐ろしさ」は、普段は女好きだったり抜けてたりするくらいの方がギャップが際立つ。そしてその頼朝に「にてきている。これは褒め言葉だ」と言われる義時も、その将来が暗示されているわけで、今までの人の良すぎる義時が今後どのように立居振舞っていくのか、注目はされる。そして八重の「小四郎どのにしかできないことがあります」という言葉がどのような意味を持っていくのか、も気になるところである。

昨日はこうした展開に衝撃を受けて、Twitterのタイムラインや感想を検索して読んでいたのだが、同じように衝撃を受けた人は多かったようだ。タイムライン読んでから録画を見直したのだが、やはり上総介は絶命する前に義時の方を見て少し笑ってる。頼朝に裏切られたという絶望感の中で、なお小四郎、お前じゃなかったんだなという安堵とお前も大変だなという笑顔、みたいな感じだろうか。佐藤浩市さんの死に芸は凄いと改めて思う。

上総広常という普通なら割と地味な役なのだが、そこに佐藤浩市さんを当ててこういう作劇をするというのはほんと凄いと思った。まあ北条義時自体が今までなら主役になるような役じゃなかったわけなのだが。そこにスポットを当てることで千葉・三浦の「爺さんたち」にもスポットが当てられ、彼らの演技の深さも味わえる。そして頼朝のある種の孤独もまた浮き彫りにされる。頼朝の本当の理解者は上総介ではなかったか、という寂寥感がこの回の後味を決定しているのだろう。

また、タイムラインを見て気がついたのだが、ラストシーンの嬰児・泰時の泣き声が、「ブエイ ブエイ」と泣いている。というかそういう声に加工してるんだろう。これは泰時が上総介の生まれ変わり、的な意味が持たされたと考えていいのだろうか。

それにしても、源平の乱後に活躍する義時の弟・時房はもう8歳くらいになっているはずだが、一度も出てきていない。大姫より3歳年長なのだが。まあ、この登場もまた何か工夫があるのだろう。のちに泰時と二人で活躍することになるので、その登場も待ちたいと思う。

それにしても、なかなか夜眠る前に重いものを見るとなかなか寝付けないという経験を久しぶりにした。一番覚えているのは「北条時宗(和泉元彌主演)」の父・時頼(渡辺謙)の死の場面だろうか。「遺言のように長時を殺せ」「時輔を殺せ」という場面。業病に取り憑かれて凄い状態での迫力。時宗が心底びびっていた演技は今でも目に残っている。

まあ、この死に方もフィクションなのだけど、大河ドラマというのは綺麗事だけではないし、歴史の恐ろしい側面も描いていくというドラマだったのだよなということを再認識させられた回だった。

それにしても義村の「お前は鎌倉殿に似てきている。これは褒め言葉だ」という言葉は耳に残るが、これは義時にとってのある種の「呪い」なのだなと思う。兄宗時が死の場面で「頼朝なんか本当はどうでもいい。関東武者の世の中を作って、その頂点に北条が立つ。その時までの辛抱だ」みたいなことを言うのに続いて、義時の今後を決定していくのだろうなと思う。また、上総介の意思のようなものも恐らくは泰時にまで反映されていくと言う話になるのだろう。

そのほか範頼が「意外に頼りになる」と言う実衣のぶっちゃけとか語りたい人が多そうな場面は多いのだけど、ここまでにしておこう。次回は木曽討伐に向けての義経と梶原の対立などが描かれそうでそこもまたこのドラマにおいては重要になってくるのはよくわかるから、もう少し軽めにしてもらいたいと言う気持ちもありつつ、どう描かれるのかと言う期待もまた止められないのが、三谷さんの術中にハマっているのだろうなとは思う。

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