「毒々しい女性らしさ」の問題について

Posted at 21/04/08

「毒々しい女性らしさ」の問題について

最近の事件から見えてきたフェミニズムの問題について、昨日教えていただいて読んでいたレイチェル・シモンズについての文章から、「毒々しい女性らしさ toxic femininity」の問題が取り上げられ、そうした観点からも今回の顛末を再検討すべきところがあるなと思ったのだけど、その中でも特に印象に残ったところを書いてみる。


ここで重要なのは、

「シモンズの意図は、女の子たちがいじめに立ち向かい、よりよい人間関係をつくっていくためには、自らの内にある「攻撃性」から目を背けてはならないということだ。」

ということで、著者のレイチェル・シモンズは政治学と女性学を専攻し、奨学金を得てオックスフォードで心理学を学び、女性の攻撃性についての研究を始めた人だということで、彼女の本は読んでないのではっきりとはいえないが、フェミニズムを否定する立場ではなく「女の子の生きやすさ」のためにこの研究をしている人だということだ。

女の子どうしって、ややこしい!
鈴木 淑美
草思社
2003-06-15

 

女の子の攻撃性というのは私などには割とわかりにくいもので、シモンズはそれが「環境を支配するため手段」としての男の攻撃性に対して人間関係と愛情を確認するため、すわなち「共感力」から生じる」という。

「共感力を利用したいじめ」というのは私などにはわかりにくいのだが、例えば先のトラブルの中でもかなり譲歩する一方に対し、自らの思想への共感共鳴を強要する言動があり、こういう操作性というのは例えば昨日は李王朝朝鮮の閔妃のマニピュレーター的性格について少し議論があったのだが、この辺りはシモンズの議論でも取り上げられていた。

つまり「共感力」というのは「素晴らしい面」だけではなく、「悪魔的な側面」も持つということであり、歴史上の独裁的な女性の中にもそうした面が発達した人物がかなりあるように思われるということだ。

男性の「毒々しい男性らしさ」はフェミニズムによって批判されてきている、それは主に男性の「暴力性」「支配性」についての批判だと思うし、その批判には妥当ではないと思われるものもかなりあるようには思うが、今まで取り上げられてこなかった「毒々しい女性らしさ」が「共感力」を利用した「精神的な暴力性、支配性」によるもので、それらが女性自身を生きにくくしているという問題を取り上げているわけである。

「10代の女の子たちにとっての理想は、「自分の感情を抑え、他人を操作することで自己表現できる子」なのだ。」

というのはなんというか私などには少女マンガに出てくる世界のように思えるが、実際には日本の女子生徒にとっても同じようなものなのだろう。言われてみればこういうタイプは女子のクラスにはそれなりにい流ように思うし、女子が極めて緊密にグループ化する理由もわかる。攻撃をするグループと、それを防御するグループに大きく分かれるとは思うが、下の方の学校ではそれに入りきれない子もいるし、上の方の学校、特に男子多めの学校ではあえてそういうグループに入ろうとしない子もいる。

それにしても、

「廊下をひとりで歩いていて、みんなに見られている感じがするのは最悪です。ひとりでいると憐れまれるけど、誰も人から憐れまれたくないでしょう。それはつまり、まわりから孤立しているということ。何か変なところがある、ということなんです」

というのは私には、特に自分自身の共感という点においてはわからない話だなと思った。私などはむしろ一人でいる子に対して「群れない強さ」を感じ、魅力的に思っていたのだが、それは男性視線なのかもしれないとも思う。

女性が自らの性的な画像をSNS等にアップしたり交換したりするいわゆるsexingの問題は、こうした女性間の人間関係の中で自らにパワーを与えるためにしているという面があるという指摘もあり、こういうのは単純に自己表現であるとかないしは男性の搾取性に迎合した行動であるとかの従来の議論には収容しきれない複雑な面があるのだなということも思った。

そして、これが女性だけの問題に限定されないと思われるのは、特にリベラルな界隈において直接的な暴力性・支配性が強く拒絶されるようになってきているという傾向があり、男性の間でもこうした共感力を使った間接的ないじめ・支配・操作が増える傾向にあるということがある。これは先進国の男性にとっての問題でもあると同時に、いまだに直接の暴力・支配が主流の中国やロシア、ミャンマーやイスラム世界等に対してより認識ギャップを拡大し相互の理解不可能性をより高めていくことにもつながっていると思う。「毒々しい女性らしさ」についてはさらに研究が進み、またそれを改善していく方策についても議論されいくと良いのではないかと思う。

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