日本の土の問題点

Posted at 20/11/05

藤井一至「土 地球最後のナゾ」読了。ただ、あまりちゃんと理解してないところもある感じで、また勉強しなければという感じが残った。




最終章は日本の土の問題なのだが、まずは代表的な日本の火山灰土壌と腐植でできた「黒ぼく土」について。本来は栄養素を持っているのだが、火山灰起源のアロフェンという粘土は反応が盛んに起こる、つまり吸着する力が強く、腐植を吸着して黒くなるという性質もあるが、腐植にも増してリン酸イオンを吸着し、植物に必要な、肥料の三要素の一つであるリンを手放さなくなってしまうのだそうだ。

少しググってみるとこのアロフェンというのはアルミニウムケイ酸塩であり、アルミニウムや鉄と結合したリン酸はリンを手放さないのだそうだ。これはハワイやジャワ島の黒ぼく土にはない日本の土の特徴だそうだ。(ジャワ島などはアロフェンでなくカオリン=瀬戸物を作る土)

ということは、せっかく土壌に含まれているリン酸を日本の黒ぼく土では使えないということであり、結局肥料としてリン酸や石灰を肥料として撒くことで畑として利用しているのだそうだ。だから日本が貧しい時代には肥料も十分に与えられず終了も少なかったのだが、経済成長とともに肥料がふんだんに使えるようになり、現代では使い過ぎが問題になっているとのこと。

しかしリン酸は将来的には枯渇する可能性があるのだそうで、そんな状況にも対応できるものとして令に上がっていたのがソバだった。ソバは根からシュウ酸を放出することでアルミニウムや鉄を分離させ、リン酸を吸収するとことができるのだそうだ。

ここまで読んできてよくわかったのは、結局農学と言うのは化学的な知識やそれを使う力がとても重要だということ。現象を理解するためにも、対処を考える上でも、化学は重要だなと改めて思った。もちろん岩石が土になる上では物理的な力の影響も大きいから、そちらの方の知識もいる。農学のような実践的な学問は様々な分野の総合科学のような側面があるのだなあと改めて思った。

日本の土壌で、その他重要なのは里山の「若手土壌」と水田の土壌。水田土壌は主にここ数千年で堆積した沖積地の土なので、「未熟土」に分類されるのだそうだ。水田は灌漑水を利用することでカルシウムなどの栄養分が補給され、酸性土壌が中和されるし、水が張られていることで土が還元的になり(どぶが匂うのはそのせいだとのこと)、リン酸と鉄の塩が溶け出してイネがリン酸イオンを吸収できるし、水を張ったり抜いたりすることで病原菌も長くは生存できないと。水田稲作農業は労働が大変だとは思うが、それだけ意味のある農法だということがよくわかった。

しかし水田稲作は大量の水を必要とする農法であることも確かで、日本の気候でも必ずしも十分に水が供給されるとは限らない。江戸時代の村落史などを見ると延々と水争いの記録が残っていたりする。さらに現在では肥料と農薬の使用で収量を上げているが、最近水田が減少しているのは、コメの消費減以外にも肥料価格の高騰があるのだという。なかなか未来に向かってもこれでいいということにはならないようだ。

水田は山から流れ込む水を利用することでカリウムやケイ素や腐植が供給されるとか、杉の針葉や小枝をすき込むことでカルシウムが補給されるとか、田圃に浮かぶ藍藻が空気中の窒素を固定し、肥料の半分近い窒素を固定しているとか、自然が支えているシステムになっているのだそうだ。これらは営々と日本人が築き上げてきたものなわけで、この狭い国に多くの人口を養ってきたのはこうしたエコシステムと近代農学の肥料や農薬の力なのだなと改めて思う。

だから無肥料無農薬と言うのは簡単なことではなくて、おそらくはそのために何倍もの手間がかかるようになる。それは価値のある挑戦だとは思うが、現在と同じ規模の人口を養っていくのがそれで可能かどうかなどはなかなか見とおすことは難しいなとは思う。

人に歴史ありと言うように、土にも歴史があり、世界の人はそれぞれ多様だと言うように、世界の土もまた多様だ。同じ黒ぼく土Andisolであっても日本とジャワとは違う。日本は火山活動や地震も多く新しい土が岩石から常に生まれ、降水量も多いので植物遺体も豊富に供給されるなど、条件としては悪くはないが土が酸性であることと畑作では地中のリン酸が使いにくいというところがネックになっているということだなと。日本の土と農業がこれからどうなっていくのかまではこの本だけでは分からなかったけれども、機会があればまた読んで勉強してみたいと思った。

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