ランドリオール:物語の中の圧倒的な存在

Posted at 19/06/02

今日は体調がいまいちな生もあって、かなり長い時間『ランドリオール』の古い巻を読んでいた。どの巻も面白いし、なんというか昔のあたりは読んでいて心が静かになるところがあって、ああ、この感じが私は好きだったんだな、ということを思い出した。
昨日は33巻の感想を書いたのだが、その前に感想を書いたのが30巻で、31・32巻が抜けているのでこのあたりの感想を書こうと思ったのだけど、まあそれもいいけどトータルで見てのランドリオールという作品について考えてみてもいいかなという気がしてきた。

最近は何というか身近な、というか身の回りに起こっていることがエピソードとして取り扱われていて、なので連載数回で終わる短い話が続いている感じなのだけど、クレッサール編のように何巻も続く物語を読み続けていた読み手からすると、ちょっと物足りない感じがするかなと思った。

この感じ、どこかで感じたことがあったなと思ったのだけど、思い出したのは『ドリトル先生』シリーズだった。『ドリトル先生』は『アフリカへ行く』などは丸ごと1巻で一つの大きな話、特に後ろの方の『月へ行く』『月から帰る』は2巻で一つの話になっているのに対し、ラストの『楽しい家』は短編集になっていて、なんだか小ネタが続いて終わり、みたいな感じになっているところだった。

今はアカデミー編から読み返し始めてクレッサール編の途中まで来ているのだけど、やはりものすごく面白くて、ずっと読んでしまうところがあって、改めてこの作品はいいなと思ったのだけど、それはなぜだろうと考えてみると、多くの物語で「圧倒的な存在」が描かれているからだなということに思い当たった。

今までのところ、この物語最大の「悪役」はクエンティンなわけだけど、考えてみると最初から善悪を問わず圧倒的な存在はこの物語の一つの柱になっている。

最初のマリオン編(ネーミングは私が雰囲気で付けている)はもちろん火竜。ここでの「戦い」はもちろん命がけで、この戦いの末、DXは竜創を得、ずっとその因果は続くのでこの物語が一面竜の物語でもあることの根本を形成している。

最初に読んだときは戸惑ったけれども、4巻からはエカリープを離れて王都フォーメリーでの学園マンガになる。アカデミー編でもカイルとの腐れ縁の始まりも面白いが、最初の山はDXが聖名をめぐって危機に陥る話、圧倒的というには小悪人だがタリオ夫人、商人リスデン、というよりは彼女の依頼を受けて登場するクレッサールの呪い師の方が強烈な魅力を放っている。

平穏な?エピソードが続いたと思うと次の山はウルファネア編で竜胆が後継ぎ争いに巻き込まれ、圧倒的な存在として竜胆の兄である竜葵が出てくる。滅茶苦茶強い。そしてDXたちがフォーメリーを離れている間のエピソードがアカデミー騎士団編。ここではイオンは大活躍だが強敵はスピンドルという小型モンスターの群れ。DXという主人公がいない中でこれだけの物語を紡ぐのは本当に凄いなと思った。

そして夏休みの平穏の中に現れたのが今のところ物語最大の仇役、空虚な暗さを持ち美貌と弁舌を持つクエンティン。どんな怪異よりも恐ろしいのは人間だ、というけれども、このキャラクターの存在が物語の基調である「革命の真実」をめぐるアトルニアの暗黒史を象徴する人物だ。そして馬上槍試合編、終わったと思ったらクエンティンの連れてきたアブセントプリンセスの娘・ユージェニーの登場と、緊張感が広がっていく。

そしてついに最終的にDXたちとクエンティンたちの戦いが起こり、決着がつくのがクレッサール編ということになり、ここまではそれぞれの場面で圧倒的な「敵」、ないし乗り越えるべき対象が描かれていた。

そしてDXとディアの甘酸っぱい失恋篇の後、こうした圧倒的な存在のいない物語が始まることになって、そのあたりが読んでいて最近は少し物足りないんだなと思った。

DXが王の位につくまでは、まだまだいくつも山があるだろうと思うけど、やはりそこに行くまでの間の、圧倒的な力を持つ存在が、早くでてきてほしいなというところが読者としては私にはあるんだなと思う。

新王の即位とともに国内が治まったとしたら、あとは対外関係しかないのかなと思っていたけど、地下王城という文字通り何かをダンジョンを掘り起こす物語が続いていて、さてこの話はどこまで行くのか、という感じで読んでるんだなと思う。

だから33巻ラストでクエンティンが出てきたのは、もう以前と同じような強烈なキャラとしての登場は望めないのかもしれないけど、何か物語を揺り動かす存在として再登場してもらえると嬉しいなと思っている。

まあ、この「常に強力な敵がいる」というのは少年マンガのパターンで、ランドリは必ずしもそうではない、ということなのかもしれないのだけど、やはり乗り越えるべき強大な何かが、立ちふさがってくれるといいのにはと思う。

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by Luke Peterson

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