私がまんがブログを書いているわけ(理由)

Posted at 14/04/08

有料記事を読み放題で週160円、というcakesを運営するPiece of cakeが、 クリエイターと読者をもっと気軽に結びつけ、簡単に記事を買える仕組みのnoteというサービスを始めたので、登録してみた。

で、ここで何を書こうかと考えたのだけど、やはり今メインに取り組んでいるまんがブログについて、今考えていることをまとめて書いてみたのだった。今回は無料記事だけど、そのうち有料にもチャレンジしてみたいと思う。

というわけで、今日はその文章を下に公開します。


まんがブログを書いてます。

場所は、アメブロとFC2をお借りしています。

ブログの名前は『個人的な感想です』と言うのですが、自分がそのとき読んだまんがについて、また以前読んだまんがについて、紹介と感想、批評などを書いてます。

まんがは「誰でも気軽に読めるもの」という先入観がありますが、実際にはそうでもありません。日本のまんがの歴史は手塚治虫さんのデビューから数えても70年近く。その間には、本当に多種多様な作品が生み出されてきました。

まんがは基本的に子供のためのものですから、皆さん自分の子供時代に読んだまんがの記憶を持って、まんがとはこういうもの、というイメージを持っています。でも月日が経つにつれてその標準はどんどん変わり、大人になってから新しいものを読んでも、新しい作品の一体どこが面白いのか、ピンとこないということは珍しくありません。

まんがの表現も日々進化していますし、まんがの背景になっている社会や風俗もどんどん変化しています。その変化の中で、子供たち(小学生から高校生くらい)は常に最先端にいますから、いつでも一番新しいものに触れているのは彼らなのです。

まんが表現にはいくつかピークの時代がありました。70年代はじめの、団塊の世代が大人になってもまんがを読んだことによって、大人の読むまんがという新しいジャンルが生まれたこと。80年代、綺羅星のような新しい才能が現れて、「80年代ニューウェーブ』と言われるまんが表現の革新が行われたこと。その流れはいまでもサブカル系・おしゃれ系のまんがとして、子供向けのメジャーなエンタメ系まんがとは違った存在感を持つようになっています。

90年代の「新世紀エヴァンゲリオン』をはじめとするセカイ系、2000年代の萌え絵・萌えアニメの隆盛、そしてその流れの中で屹立した孤高のスタジオジブリと宮崎駿作品。アニメやラノベなど他ジャンルとも絡みながら、まんが表現はさらに豊かになりました。

これだけ豊かなまんがの世界ですから、すべてのまんがを読むことはもう不可能になっているでしょう。そして常に読者は新しい面白さを求め、新しい絵、自分たちにぴったりの表現を求めています。そしてそれに応じて、新しい作家、新しい表現が出てきていますから、それぞれの作品にアジャストできる敏感でフットワークの軽い感性がなければ、多くの作品をフォローすることは不可能なのです。

ただ、せっかくですから、「読みやすいもの」という前提で描かれている、と考えられているまんがという作品形態を、より多くの人に楽しんでもらえるように、出来るといいいなあという気持ちがありました。というよりも、何よりも私自身が、新しい作品たちに触れても、それに向けて感性を開くその開き方がピンと来ない時期がありましたし、また今でもなかなか焦点があわないこともあるのです。

それは、もちろん小説などでもそうですね。芥川賞の選評を読んでいると、大家の先生方の中には新しいものを認めようとしない方が多いのは、昔からのことだと思います。新しいものが出てくるということは、ある意味今までのものが古びて行くということですから、それは自らの存在と尊厳に関わることで、無理もないところもあると思います。

しかし、これだけ多様な新しい作品があるのだから、せっかくこの世に生まれてきて、それらのものを楽しまないというのも残念なように思います。何かガイドのようなものを用意することによって、面白い作品を見つけてもらえるのではないか。今までそのジャンルの作品に触れて来なかった人が読むようになることで、新しい読者が獲得できれば、出版不況と言われている現在でも、作家さんや作家さんたちをフォローする編集者や業界の人々にとってもプラスになるのではないか。そんなことを思うようになりました。

ですから、このまんがブログの目的は、まず第一に私が面白いと思う作品の紹介です。紹介することで、それをすぐに面白いと思ってもらえることもあるでしょうけれども、まずその背景文化のようなものからイメージしてもらわないとわからない、伝わらないものもあると思いますので、ブログの中では作者の方を紹介したり、こういう作品と雰囲気が似ているとか、こういうところがこの作品とテーマが似ている、表現技法が似ているというような話題も紹介しています。

新しい、今流行っている作品について、その面白さを理解し、話題をたくさんの人たちと共有することは楽しいことですし、また人の知らない自分だけの楽しみと出来る作品を探して、それを熟読することもまた格別です。そういう面において、文芸作品と変わることはありません。ですが、未だに残念ながら、日本社会においてまんがの地位は文芸作品と同じというわけにはまだ行っていないと思います。それがまんが文化に取っていいことか悪いことかは一概にはいえないかな、という面もありますけれども。

私自身の動機として、このまんがブログを書く原動力になっていることは三つあります。

一つは、多くの人とまんがについての情報・感想を共有すること。上記のような状況でありながら、日本の出版界においてまんがの売り上げ的な意味での重要性は、圧倒的なものがあります。電子書籍でも、まずまんがから売れる、という状況はあると思います。ですから、多くの人が今現時点でまんがに関心を持っていますし、新しい作品を探したいという意欲も強く、また自分と同じ好みの人がいないか、探している人も多いのです。こうした作品を読むことは、ただ読むだけでなく語り合うことがその読む喜びの大事な一部であるからです。

私も10年以上ウェブで文章を書いてきて、やはり多くの人に読んでもらうことがいかに楽しいことかということを常に感じてきました。ですからまんがのことについて書くことで、その喜びもまた感じることが出来るのです。

二つ目は、新しいまんが、あるいは面白いのに埋もれかけているまんがなどについて、「これは面白い!」と声を大にして言うことです。私のブログの影響力などまだまだ対したことはありませんが、繰り返し言っている間に読んでみようと思う方が一人でも出てきたら、それは文章を書いているものに取って、大きな喜びに違いありません。そしてその作品がこの時代の文化の一員として認知されて行く。やはり、自分が面白いと思う作品が評価される文化というのが、自分に取ってよいことであるには違いありませんから、世の中の傾向をそうして行くためには、まず自分から声を上げて行くべきだと思うのです。

三つ目は、今まで自分に多くの情報をもたらしてくれ、また人間について様々な洞察とものの見方を与えてくれたまんがというものに、少しでも恩返しをしたいと言う気持ちです。私は自分でいうのもなんですが、呆れるほどたくさんのまんがを読んできました。まんがに関わることが生業でもなく、いわゆるおたくでもないのに、なぜ私はこんなにまんがを読み、また持っているのだろうと自分でも呆れています。

でも、それだけ多くのことをまんがから学び、また考えるテーマすらまんがからもたらされている面が、とてもたくさんあるのです。

たとえば、細野不二彦さんの『ギャラリーフェイク』という作品があります。美術と美術界をめぐる話題やスキャンダルを描いた作品(フィクション)ですが、テーマがテーマなのでアートに関わる様々なことが、その中で紹介されています。先日第10巻を読み返していて慄然としたのですが、この中の『ロンドン編』と題された3回連載の作品の中で、オークションのサザビーズやターナーの絵を展示しているテート・ギャラリー、世界中の植物を収集した王立キュー植物園や、歴史に残る名車アストンマーチンなど、よく考えてみたら私はまさに「この作品で」最もイギリスらしいイギリスの文物を知ったのだということに気づいたのです。

ということは、私がこの作品を読んでなかったら、今でも知らなかったかもしれない。イギリスに対する理解は、今よりずっと貧しいものになっていたでしょう。これはこの作品に限らず、そういうことはいくらでもあるのです。

また、現在大ヒットを飛ばしている『進撃の巨人』の作者、諫山創さんのインタビューはいつでも新鮮な驚きがあるのですが、その中で幼時のトラウマこそが創作の宝物だという趣旨の発言がありました。これは全く思いもかけなかった発言で、諫山さんが他の追随を許さない新しい世界を作り出し、展開して行くパワーの秘密が、少しわかったような気がしました。

幼時のトラウマが諸悪の根源だ、と考えるような平凡な発想では、もう新しいものは作り出して行けないのではないか、と創作に対する考えそのものを揺さぶるインパクトがありました。

これも、『進撃の巨人』のような新しい作品に触れていなければ、そういう古い創作観に未だに縛られていたかもしれないということでもあるのです。

『大事なものはみな、まんがから教わった』と言えば言い過ぎではあるのですが、でも本当に多くのものをまんがから与えられたことは確かなのです。

これからも私はマンガを読んで行きたいし、楽しんで行きたい。まんがについて書いて行くこと自体が楽しいことなので、そのことだけでも続けられますが、でも新しいまんがの面白さ、読んだことのないまんがの面白さの一端を少しでも伝えることが出来、手に取ってもらえるということを想像したら、それは本当に素敵なことだと思います。

そんなわけで、私はまんがブログを書いてます。

よろしければ一度、遊びにきていただければと思います。

『個人的な感想です』 アメブロ版 http://ameblo.jp/kous377
『個人的な感想です』 FC2版   http://kojintekinakansoudes.blog.fc2.com

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