顔/モノローグ

Posted at 11/12/10

   顔

道を行く人がみな幸せに見える夕闇せまる時間、あなたはどうしているのだろう。私が感じているのとと同じように、私がいないことを欠落と感じているだろうか。ざらざらした手触りのこの癒しがたい欠落感。あなたは私と同じように、それを感じているだろうか。

いや、そんなことはないだろう。あなたはきっと、私がいなくても、私がいた場所の凹みがなかったかのように膨らませて、何一つ欠けているもののない、まんまるな心でにこにこしているだろう。そんなあなただから私は好きなのだけど、そんなあなたであることが私は憎らしい。

私と同じように、欠落感を感じてほしい。私のいない私の形をした空洞を、あなたも抱えて、そこから吹いて来るがたがたする隙間風に震えてほしい。いくらあたためても決してあたたまることのない、私の心と同じように。

淋しさを感じていると顔がさびしくなるよとあなたは言う。そうかもしれない。いや、そうだと思う。あなたといないときの私はさびしい顔をしている。鏡をのぞいて、苦笑いする。

昨日あなたに会って、化粧室で鏡をのぞいたとき、思いもしないくらい幸せな顔をした私がいて、私は戸惑い、わけもなく怖くなってしまった。でも心は震えているのに、鏡の中の私はますます幸せそうで、さびしさは影も形もない。

これが本当の私なの?それとも心の中で、理由の分からない怖さに震えている私が本当の私なの?

だから、さびしそうな顔をしている一人のときの私を鏡で見るとき、さびしそうだなあとため息をつきたくなるけど、なんだかほっと安心もする。

心の中の私と、鏡の中の私が、同じ顔をしているから。


【モノローグ】

モノローグを久しぶりに書いてみた。モノローグというのは、基本的に詩に似ている。そういえば、詩を書き始めたとき、自分の戯曲の中のモノローグの部分を取り出して、詩の形に成型してその時初めて作った詩のホームページに掲載したことがあった。

モノローグを書くのは好きだ。まあ、いつもひとりごとを言ってるみたいなものだからな、私は。

物語のネタはなかなか思いつかないけど、モノローグはわりと思いつく。しばらくモノローグを書くのに専念して、材料を集めて小説に成型して行こうかなと思う。

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