インプット過多/『となりのトトロ』

Posted at 10/10/21

このところ少しインプット過多だなと思う。何というか、書籍だと自分でそのあたりはコントロールが出来るのだが、映像はコントロールが難しい。より受け身なメディアだからだ。その分、作り手は音と映像とストーリーとで立体的にメッセージを伝えられる。より受け身なメディアとは言っても、身を入れて見なければその映像が発しているものを過不足なく受け止めることはできない。問題は時間管理で、書籍というものはそこが融通が利くので便利なのだ。持ち運びも簡単だし、ちょっとした時間で少し進むことが出来る。しかし映像はどこでもというわけにはいかないし、間合いもすべてお任せだ。

学生時代は映像を見るのはほぼ必ず映画館に行っていたので気持ち的にもすべて向こうにお任せだったが、DVDをパソコンで見ているとこちらに時間的な自由があるような錯覚に陥る。しかし、120分の作品を見るのには結局120分かかるのだし、気になるところがあったら少しバックして見なおしたりしているので結局トータルでは120分では済まない。自分が芝居をつくっているときは上演時間というのはそんなに厳密には考えなかったけれども、受け手になってみると上演時間というのはかなり重要なファクターだ。その世界に浸りたい時に短く終わってしまうと物足りないし、物語や言いたいことの先が見えてから延々続けられるとちょっと困ってしまう。興味を最後まで切らさないというのはこういう作品の重要なポイントだ。そういう意味では、小説というのは他の書籍と違って映像作品と似ている。慌てて読んでも意味がない。

昨日は午前中に新しい作品を書こうと四苦八苦していたが出て来ず、昼前に綿半に出かけて鯉の餌と裾上げテープを買い、蔦屋に行って書籍のコーナーを一周した後、宮崎駿『となりのトトロ』と『千と千尋の神隠し』を借りた。そのあとガソリンを入れて家に戻り、両方とも少しずつ見てから昼食。

昼食後は『となりのトトロ』を50分くらいのところまで見てから仕事に出る。昨日はいろいろ仕事が立て込んで、情宣関係のこととかも。本来の仕事はまずまずの忙しさというべきか。少し気が落ち着いていなかったので最初はどうもうまくペースに乗れない感じがあったが、途中から普通になってきた。10時前まで仕事をし、帰宅、夕食、入浴。自室に戻って『となりのトトロ』を最後まで見て寝る。

朝は母が東京に行くので駅まで送ることになっていたのだが寝過して、部屋を飛び出す。駅まで母を送り、帰宅途中のローソンでモーニングを買った。自室に戻って少し読み、庭の手入れをしてくれている植木屋さんに挨拶して、鯉に餌をやって仏壇で父の遺影に線香をあげ、パンをトースターで焼いて牛乳をチンして朝食。少なめに。自室に戻ってモーニングの続きを読み、読み終わってからモーニングページを書いた。もう一度モーニングを読み、おもむろにこのブログを書き始める。

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『千と千尋の神隠し』は想像していたよりもずっと不気味。まだ30分くらいのところまでしか見ていないが、何というか「怖さ」を表現するのが上手いなと思う。私は高所恐怖はないので最初階段の上でなぜ千尋が怖がっているのかわからなかったのだけど、見ているうちにそうか怖いんだということに気が付き、そこから怖さが広がってくる感じがあって、そうなると普通の気持ちで見たら滑稽に見えるだろうお風呂の客の化け物たちが怖く見えてくるわけで、なるほど怖さの誘導というのはうまいなと思った。もちろんその場面の前にもいろいろと誘導する要素はあったのだけど、そこまで来てそれがそういうものだったということをようやく認識したと言ってもいい。『トトロ』を並行して見ていたからその作りの違いがより鮮明に見えたということもあるだろう。まだこれから。

『となりのトトロ』は見終わった。思っていたよりもずっと面白い。徹底的に子ども向けなのだが、手を抜いていない。『もののけ姫』に出てくるのは太古の森で、『ナウシカ』に出てくるのは遠い未来の想像上の森=腐海なのだが、『トトロ』は屋敷森、鎮守の森、いわゆる里山と言った身近な森が舞台になっている。そこにトトロというお化けだか珍獣だかよくわからないものが住んでいて、という設定はありそうなんだけどとてもうまいと思う。あの楠の木がいい。私は大きな木が好きなので、ああいうものが出て来る話はやはりいいなと思うな。実際には、木は大きくなりすぎると、特に人家に近いところの木はいろいろと問題があって最近ではあまり大きくなり過ぎないように途中で切られてしまうことが多いのだけど、私はそういうのがとても残念で、何とかならないかとは思う。

まあそれは脱線だが、昭和30年くらいの東京からそう遠くない田舎、療養所のあるような田舎をある意味ワンダーランドのように感じて育って行く二人の姉妹。姉はしっかり者で妹は思い込んだらどこまでも行ってしまうのですぐ迷子になってしまう。「迷子になる」ことが話が進む推進力になっているというのもなるほどこれはいい手だなと思う。子どもは迷子になることによっていろいろなことを学ぶ。親にとっては気の休まることのない話だが、連絡がそう簡単につかない時代で、両親はメイが迷子になったことを最後まで知らない、というのもなんだかいいなと思った。私もまたしょっちゅう迷子になる子どもだったので、なんだかそういう設定は好きだなあと思った。贅沢をいえば、メイが少しデフォルメされ過ぎていて、発声とかがややわざとらしいと思った。のちの作品のように声優でなくプロの俳優を声に起用するという作戦は、子どもの声に関しては難しいかもしれないので、こういうふうにしかできないかな、とも思うのだが。

ジブリといえばトトロ、という感じに今はなっているのは、どうなのかなと思う面もあるのだけど、そういうふうに受け止めるのが現代日本社会というものなんだなと思う。トトロがシンボルマークになっているし、「トトロの森」が話題になるし。ディズニーのミッキーマウスのようなシンボル的なもの。でもディズニーと違って連作にはしなかったのは宮崎監督のグッジョブだと思う。これはこの86分という比較的短い佳品で終わっているのがいいのだ、と思う。

『ラピュタ』まではストーリーを追うのに急で一つ一つの場面を掘り下げる感じが少なかったけれども、『トトロ』はいわば小津などの日本映画の場面をじっくり描く伝統に回帰していて、アニメでこれだけの場面を見せた作品はそれまでなかったんじゃないかなという気がする。そういう意味では『トトロ』は単に子供向けであるだけではなく、日本的な映像美をアニメにも持ち込んだという画期的な作品だったということになるんじゃないかな。まあこういう分析は当然今までもなされているんだろうけど、初見の感想として書いておきたいと思う。

それにしても、キャラクターの魅力。よく書けていると思うのはメイとカンタなのだが、基本的にもう心の底からイイ!と思ってしまうのが猫バスだ。(笑)あれはいい。サツキは気を使っているしちょっといい子すぎるように見えてしまうところも時にあるんだけど、まあああいうのが「お姉ちゃん」というものなんだよな、とも思う。それにしても姉妹そろって五月なのはどうなの、と思うけどね。(笑)誰か猫バス、本当に作ってくれないかな。ああそうか、あれは何か「ますむらひろし」的なんだ。だから「宮沢賢治」的でもある。すごく(私にとっては)日常的に見える田園の風景が、宮沢賢治的なちょっとした異国情緒がはさまれることによってすごく活性化している。そういえば、転校生がやってきて話がはじまるところとか、地元のほかの人はなまっているのに先生が標準語のところとか、ちょっと『風の又三郎』的なところもある。

それから、あの外に開け放つことのできるお父さんの書斎。理想的だなあ。もし家を建てる機会があったとしたら、ぜひああいう書斎をつくってみたいと思う。まあ実際には、虫がたくさん入ってきて往生するとは思うけどね。

何というか、子ども向けの安っぽい作品が横行する中で、宮崎駿は子どもの情操を高めるという鈴木三重吉の『赤い鳥』以来の伝統をちゃんと実践しているんだ、と思うと頭が下がる思いがした。『ナウシカ』も撮れるが『トトロ』も撮れる、というのは本当に巨大な才能だなあと思う。

それに比べると『千と千尋』はちょっと小川未明っぽいかもしれない。

しかしまあ、こういう作品を見ると心がスッキリするところがある。

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今週のモーニング。次回以降の展開にちょっと期待が高まる感じがある。巻頭が「かみにえともじ」の本谷有紀子のポートレートから始まる。連載100回だそうな。「宇宙兄弟」飛行訓練。何か今週は、「生きろ」的なメッセージの作品が多いがこれもそう。「島耕作」尖閣問題に踏み込んだ。「ジャイキリ」達海対佐倉。どんなサッカーを見せてくれるのか楽しみ。「ReMember」うーん。「主に泣いています」追っかけ命。「ルシフェルの右手」いい。「リーチマン」夜中の競技用自転車は危険だなあ。「きのう何食べた?」ゲイっていろいろ大変なんだなあと思う。ゲイっぽい趣味からゲイだということを察知されないように趣味自体を隠すというのは大変だと思う。特にゲイにはそういう感覚に繊細な人が多いし。「クレムリン」ピーターボールドってどんな猫なんだろう。「ラキア」これも「生きろ」なんだが、ちょっとどうなの?「誰寝」岡ちゃんとヤーマダくんのお互いの思い。「ピアノの森」ふーん、ここでパンウェイが。どう展開するのか?作者は実際のショパコン取材かあ。いいなあ。「美童物語」。先週は少し理屈っぽくて嫌だったのだが、今週のはいいな。「へうげもの」太閤の臨終に何を企む織部。

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