アンジェラ・アキの新しいアルバム、『LIFE』。

Posted at 10/09/16 Trackback(1)»

アンジェラ・アキの新しいアルバム、『LIFE』を買った。CD店で買うよりもamazonで買った方が安いとなると、どうしてもそうしてしまう。昨日届いたので、仕事を終えて帰宅し、夕食・入浴後自室に戻ってから聴き始めた。ここのところクラシックばかり聴いていたので、最初あまり耳が慣れなくて、集中して聞けない。そして改めて思ったが、彼女の曲は集中して何度も聴かないとそのよさがあまり伝わって来ない。しかも、今回のアルバムは英語の曲が多く、聴いていていいなあと思うのも英語の曲が多いのだ。ライナーを見ながらじっくり聴きたい感じがする。

LIFE(初回生産限定盤)(DVD付)

ERJ

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アンジェラ・アキのアルバムはメジャーデビューしてから4枚目、インディーズの『One』を加えれば5枚目だ。メジャーデビューが『Home』で、初めて聴いた彼女のアルバムがこれだった。何年前の夏だったか、ひと夏ずっとウォークマンで(古)聴き続けたことを思い出す。それ以来、そんなにはまってはいないが、新しいアルバムが出るたびに買い続けた。メジャー2枚目が『Today』、次が『Answer』。そしてその次が今回の『Life』だ。英語一語のシンプルな、それだけに彼女の音楽に賭ける思い、覚悟のようなものが伝わってくるタイトル。

『One』は確かに、「ひとり」とか「孤独」ということが伝わってくるアルバムだった。ボズ・スキャッグスの「We're All Alone」のカヴァー、そして「Rain」。一人で戦い続けている印象。

ONE
アンジェラ・アキ,Boz Scaggs,Leon Russell,Fiona Apple
VME RECORDS

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それは『Home』でもやや引きずっている感じがした。でも彼女の原点と感じられる「Home」や彼女の中の世界の展開を感じさせた「This Love」がとても好きで、本当に何度も聴いた。「Home」は今でも口ずさむとふと涙ぐんでしまうことがある。今思い返してみるとこの曲に、あの頃の自分は本当に支えられていたと思う。

Home (通常盤)
アンジェラ・アキ
ERJ

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二枚目の『Today』はシングルの「サクラ色」も好きだが一番好きなのは「モラルの葬式」で、この曲でアンジェラの今まで知らなかった一面が垣間見れたような気がする。本当に言葉にこだわる人だし、その言葉の持つ世界の広がりのようなものを描こうとする。きっと「モラル」という言葉を考えていて、それが瀕死の状態だということを考えていて、そこから世界が広がって行ったんじゃないかと思う。

TODAY

エピックレコードジャパン

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三枚目の『Answer』では、「ダリア」が好きだ。「手紙」ももちろん嫌いではないのだけど、この曲が大ヒットしたためにアンジェラといえばこの曲・この路線という印象が世間的に定着してしまい、人生応援歌的な方向がどうしても強くなっていったことは私にとっては残念だ。人生応援歌と言っても小比類巻かほるとかみたいな普通の女の子、やる気のある女の子への応援というより、どちらかというと引っ込み思案の、考え過ぎの、内気な、暗い、人生って辛いなあという感じの女の子への応援という感じがある。まあ当然それは市場としてあるし、時代の雰囲気としてそういうものが必要だということもわかるのだけど、自分が聴きたいのはそれに特化した作品ではなくてもっと広がりのある、余裕のある曲なんだなと思った。「ダリア」は一緒に暮らしていた別れた恋人をダリアを見ると思いだすという曲だけど、ダリアというちょっと古い感じの花がその曲想にとてもあっていて、田舎の本屋でバックミュージックにかかっていた時に本当にちょっと泣きそうになった。

ANSWER<通常盤>

ERJ(SME)(M)

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そして今回の『Life』。またすごい題名をバーンと直線的に真正面からぶつけて来た。まだまだ聴き込みが足りないので何か書いてもポイントを外しそうな感じもあるのだけど、ちょっと書いてみよう。

「愛の季節」。朝ドラの主題歌で世間でかかり過ぎて少し食傷した感じもあるが、改めてちゃんと聞いてみると悪くないと思う。「輝く人」。アコースティックギター一本と本人のバックコーラス。アンジェラといえばピアノの弾き語りなのだけど、彼女の声は案外ギターともあう。「Every Woman's Song」。ジャニス・イアンとのコラボレーション。作詞作曲にジャニスとアンジェラの名が並べられているけど、両方とも二人でやったのだろうか。力強い曲と歌詞。多分、アンジェラ一人ではこの歌詞は書けなかっただろうなと思う。女性の人生をうたっている。だからこのアルバムは「Life」なんだな。

「サイン」。彼女の曲のなかにちらほらある「予感」に満ちた曲。彼女にとって幸福というのはこういう「予感」の中にあるのだなと思う。「Remember Me」。ピアノのベース音の連打が力強い。途中で入って来るベースのベースラインもいい。曲の世界を支えているのが低音の重みなのだということを実感させてくれる。そして鐘が鳴る。誰のために。呪文めいた、ある種の祝歌。彼女の声も伸びが素晴らしいが、高音の部分だけでなく、低い方向に伸びて行く音も気持ちいい。この曲を聴いていると、音の作りが思ったよりずっと複雑な構成になっていて、ちょっと感動した。

今回のアルバムの一つの特徴は、前奏の長い曲が多いということだな、と思う。「Unbreakable」。この曲、どこかで聞いた気がする。「One」だっただろうか。今手元にないので確かめられないのだが。「What are the Roses for?」。この曲も。ワルツっぽい。ああ、この曲でワルツを踊ると暗示的だ。映画のワンシーンに使ってみるといいかも。それもこれから出征する若者とその恋人みたいな場面で。アンジェラ自身がピアノを弾いて歌ってくれると最高かもしれない。「愛と絆創膏」。心の叫びシリーズ、という感じだが、共依存という感じでもある。

「Mad Scientist」。心の中を彼女独特のセンスで切り開き、描いて行く。その独特さを面白いと思うかどうか。私は好きだけど。「The Truth is Like a Lie」。こういう曲のこういう歌詞がリアリティがあって私は好きなのだけど、英語なので…「Bop Bop Bop」。パーカスとギターが気持ちいい。「母なる大地」。なんだか分からない楽器の音があってなんだろうと思ってライナーを見たら琴だった。傷ついて故郷に戻り、癒されて再び歩き出す。テーマは「Home」に近いけど、もっと大人になって、落ち着きがあって、美空ひばりにも歌ってほしいなと思う感じの曲。「Life」。表題曲をラストに持ってきた。言いたいことがここに込められている感じがする。この人は本当に正直な人だなと思う。心を持ち上げて行こう、という曲も歌うけれども、でもごめん、今の自分はここにいるの、ということを必ずどこかではっきりと言う。真実は、正しいと間違いの間にある。真実は、出会いから別れまでの間にある。

音楽の世界で走り続けることは下積みの長かった彼女にとって夢のようなことであり続けると思うし、求められるものに答えようと一生懸命やっているし、自分の歌いたいことを譲らずに歌い続けているけれども、でもごめん、今の自分はこうなの。と、はっきりさせていく。音楽の世界で行き、新しい作品を作り続けているうちに、彼女は確実に強くなっている。今回のアルバムを聴いた実感は、そんなことかなと思う。

初回生産限定のシングルベストDVDがついている。懐かしい映像がいろいろ見られて楽しい。私はPVでは「This Love」が好きだ。と思っていたけど、こんな地味だったっけ。ちょっとびっくりした。「サクラ色」は傑作だなあ。メイキングも面白かったことを思い出した。「孤独のカケラ」のセットもいい。「Again」のクラシカルなピアノもいいな。「愛の季節」と「輝く人」のPVは初めて見たけど、「輝く人」は思ったよりいいなあ。聴けば聴くほどよくなってくる。泣きそうになる曲じゃないけど、いい。

どの曲か分からないが、ライナーを読むとアメリカで録音した曲がかなりあるようだ。サウンドが乾いた感じのする曲が多いなとは思っていたけど、そういうことなのかもしれない。ずっと前のことになるけどさだまさしが「飛梅」の入っている味戸ケイコのジャケットのアルバムをアメリカで録音していて、音がはっきりと違って驚いたことがあったけど、やっぱりそうなんだなと思った。

今日は一本まるまるアンジェラ・アキになっちゃった。他にも書こうと思ったことがあったのだけど、こんな日があってもいいかもしれないな。アンジェラ秋祭り。

***

一言だけ書いておくと、今週号のモーニング。「宇宙兄弟」の「It's a piece of cake」という言葉が心に残った。楽勝だよ。あ、それから今朝聞いた『バロックの森』に取り上げられていたクリストフ・グラウプナーという作曲家の作品がよかった。あとで探してみたいと思う。

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