『米軍再編』とか/松風庵で涼んだり

Posted at 10/07/07

一度PCの前に座ると、なかなかそこを動きたくなくなってしまう。別にPCの前に座っていれば楽しい、というわけではないのだけど、つい必要もないサイトをのぞいたりスパイダソリティアをしたりしてしまう。PCには、余計なことをさせる「磁場」のようなものがある。たしかに、PCを日常的に使うようになって、ほかのことをする時間はかなり削減された。集中力をPCに投じてしまうと、ほかのことをやる気力が減退するという面もある。原稿を書いたりするのも確かに便利な面はあるのだけど、便利なだけじゃないな。付き合い方をもっと自覚的にしないといけない。

米軍再編―その狙いとは (岩波ブックレット)
梅林 宏道
岩波書店

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梅林宏道『米軍再編』(岩波ブックレット、2006)読了。もう4年前の本なので、再編の現状はこの本に書かれているよりだいぶ進行しているだろう。他の本も調べてみたが大体2005年ごろのもので、2010年現在のトランスフォーメーションの現状がわかるものはまだ見つけていない。だから、この再編は基本的にブッシュ政権の戦略だと思うのだが、報道で見る限りではオバマ政権も再編の方向性自体は肯定しているようだ。ブッシュ政権、すなわちラムズフェルド国防長官のプランニングは、なんだか夢幻的というか、変な感じがして、こんな方向性でいいのかなと思っていたのだけど、それはつまり世界の現状自体がある意味夢幻的だからなんだろうと思う。冷戦時代には敵がどこにいるかということは自明の理だったわけだけど、現在の敵、少なくとも米軍再編の思想が想定している敵はテロリストなど「どこにいるか分からない」敵だ。「世界中のどこにいるか分からない敵に対していつでも戦闘に入れる態勢を作り上げる」というのは、すごい話だ。敵の本拠に近いところに軍を置けばいいという今までの思想とは全く異なる。そういう理解自体は、民主党も共和党も共通して持っているということになるのだろう。

日本も、冷戦時代の名残で自衛隊の大部分が北海道に集中しているという現状があって、でも地元では「地域経済に壊滅的な打撃を与えられるから、自衛隊に出て行ってもらっては困る」という何のために自衛隊があるのかよくわからない状態になっているという話を聞いたことがあるが、米軍も冷戦構造の時代の名残で北東アジア・ヨーロッパに過剰に軍を配置していたのを見なおし、多くの部分を米本土に移動させるというのがメインの動きだ。一番大きな移動がドイツから35000人、韓国から12500人の米本土への移動で、次に大きなのが沖縄からグアムへの8000人の海兵隊の移動だ。

沖縄からの移動というのは知ってはいたが、ドイツや韓国からそんな規模の移動があるということはこの本を読むまで知らなかった。その一方で、ブルガリアやルーマニアと基地使用協定を結び、ポーランドにMDの基地を置き、中央アジアでもキルギスで基地を確保している。一方で、ウズベキスタンの基地は上海協力機構=中露の圧力もあり、アフガン戦争時に出された使用許可も取り消された。ブルガリアやルーマニアって、NATOに加盟してるっていうこと自体を初めて認識した。私の頭の中はだいぶ遅れている。自衛隊と米軍の一体化も相当進んでるということも、ようやくはっきり認識した。SAPIOなどで断片的に読んだことはあったけど。

で、米軍の海外の基地の役割も、その地域での脅威に対抗するというよりもそこから世界中に飛んでいくための「前進作戦地」で、必要に応じて米軍は蓮の葉を蛙が飛び移るようにぴょんぴょん飛んでいくというイメージなのだそうだ。それを「蓮の葉戦略」というのだそうな。

まあ、1960年に新安保が結ばれた時とは相当状況が違うのは当たり前だが、今までアメリカは自分からなるべく遠いところで相手をやっつけようとしていたのだけど、2001年の911テロでニューヨークが攻撃されたことによって、そういう受け身の態度というか消極的な態度をかなぐり捨てたということだ。なんか、911以降の米軍って、昔に比べて残虐性というか残忍性というか、洒落が通じない感じというか、露骨というかあからさまというかオブラートに包まない感じというか、そういう印象が強くなってきている。昔だったら敵の要人を「殺害」するなんていう行動や表現はしなかったような気がする。なんというか、米ソの対立というのはある意味陰湿なゲームで、朝鮮戦争やベトナム戦争も底意地の悪い感じの戦争だったが、その後も陰気な対立がスパイ合戦的なイメージを形作っていた。現在の米軍の在り方は、テロリストと剥き出しの暴力の応酬をしている血生臭い感じが強い。フセインを捕まえた時に「We got him」なんていったのも、ほんとに品がないと思う。結局、「人は、その敵に似る」ということなんだろう。テロリストと闘うために、その次元に身を落としている部分があるんじゃないかという気がする。そういう軍が世界を「守って」いるというのも、あんまり気持ちのいい世界じゃない。

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昨日書くのを忘れたが、月曜日の昼間、銀行に用事をしに行くついでに区役所に行って参院選の期日前投票を済ませてきた。東京選挙区(定数5)のトップ当選は、たぶん蓮舫だろう。5番までにはいればいいので2番でも駄目じゃないけど、まあの勢いなら蓮舫かなと思う。私は立ちあがったりすわったりしながら拉致事件解決に熱心な議員とかに入れたが、結果は謎だ。定数5だと言っても、なんだか今回の東京選挙区、不作な印象がある。だれが当選する見通しなんだろうか。

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<帝国> グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性
アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート
以文社

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ネグリ・ハート『<帝国>』、現在23/517ページ。調べてみるとアントニオ・ネグリという人、赤い旅団や元首相誘拐暗殺事件への関与が疑われて結果的に有罪になり、パリに逃亡したりしているのだという。1997年に帰国し入獄、5年以上獄中にいた。原著がアメリカで出版された2000年、同時多発テロの2001年も獄中にいて一気に注目を集めたということなんだろう。日本で出版されたのは2003年1月。4月になってようやく出獄している。

まあそういう人だから、極端に言えば「テロリストの視点」とでもいうべきものもあるような気がする。いや、記述に過激な点は特にないんだけど、グローバル資本主義に対する徹底したアンチであることは確かだろう。アンダーラインを引きながら読んでいて、ときどき「?」と記すところもあるのだけど、この手の本としては大変読みやすいと言っていいと思う。マルクスが19世紀半ばの産業資本主義を分析したように、ネグリは20世紀末のグローバル資本主義=<帝国>的国際状況を分析しているんだなと思う。

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昨日帰郷。上記のように、特急の中では主に『米軍再編』を読んだ。仕事は暇だが夜10時まで。水曜くらいから少しずつ忙しくなるものと思われる。今日は「ゲゲゲの女房」を見た後、松本に出かける。帰りに開運堂の松風庵に行ってお使い物を買い、喫茶室で涼む。抹茶と和菓子。いつも空いているが、こんなにいい空間はなかなかない。帰りは「あがたの森」の方から山麓線に乗って帰ってきた。

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