『ショパン 人と作品』/ニーチェ『悲劇の誕生』
Posted at 09/07/31
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『ショパン 人と作品』読了。ポーランドからパリに出て、その多くの時期をサンドと過ごし、分かれたあとはイギリスに渡ったがイギリスの風土に馴染めずパリに帰って死んだ。ショパンという人の人生にはいろいろと考えさせられることがある。
ショパンがイギリスの社交界で受けた印象は、「ここでは音楽家は職業ではあるが芸術家ではない」というものだったという。これはなるほどなあと思わされる。社交界、というものは基本的に貴族の付き合いの社会だけれども、芸術家はもちろんその重要な構成要素だろう。18世紀にはサロン文化が発達し、学者もその重要な構成員だったが、大学が制度化すると学者は貴族の援助を必要としなくなったから社交界に出入りする必要がなくなったのだろう。また19世紀になってブルジョアが社交界に進出したりするのも大きな変化があっただろうけど、時代だけでなく国による違いもかなりあるんだろうなあと思う。フランスは革命で旧貴族が没落し、ナポレオン時代に叙爵された新貴族やブルジョアも進出して、かなり雰囲気が違ってくるのではないか。そういう雰囲気の中にヨーロッパじゅうの芸術家が集まってきたわけで、それがパリの社交界がもっとも華やかである所以なのだろう。
イギリスは文学の国、ドイツは音楽の国、イタリアは美術の国だとすれば、フランスはそのどれもが同じような比重で幅を利かすことが出来る、のではないかと思う。コスモポリタンといえば現代ではアメリカ、ニューヨークという感じだが、誰もが自由に出入りできる場所というのは当時はパリだったんだろうと思う。それはやはり、革命があったことを抜きにしては考えられないだろう。
昨日は午前中に山麓に出かけて、帰りに蔦屋に寄ったらみなもと太郎『風雲児たち』の新しい巻が出ていたので買った。最近は『コミック乱』も買ってないので完全な単行本派と化しているが、まあこのくらいで充分だな。ただこの人は、高野長英とか杉田玄白とか、市井の人たちを描いている方が幕府政治ネタを書くよりずっと面白いな。政治ネタでも松平定信とかは最高に面白かったが、ようはちゃんばら時代は向いてないんじゃないかという感じだろうか。
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ニーチェ『悲劇の誕生』。何度も同じところを読み返しながらノートを取って読んでいる。この本は、さっぱりした頭で集中して、いろいろなことを思い浮かべ考えながらでないと読めない本だ。夢と予言の神であるアポロンと、陶酔の神であるディオニソス。夢も現実も一つの世界として存在すると見なすニーチェは、その存在の「破れ」から顔を出す戦慄と恍惚とがディオニソス的なものを示唆すると指摘する。簡単に書きすぎだが、その前提としてフォイエルバッハの「個別化の原理」と「根拠の原理」を引用して説明している。私の理解は大雑把だが、「個別化の原理」というのは要するにこの世界に存在するものは同じ物は二つない、すべて唯一無二の存在である、ということだと思う。また根拠の原理というのは、すべての生成・認識・存在・行為には根拠があり、それが因果律・論理・時空・動機である、ということだと思う。しかし徹底した個である現実存在の底には共通するものが潜んでおり、そこで個別化の原理が破れると人は孤独から逃れ、一体感という恍惚を得る。また根拠のない存在が現れたように思えると、人はその存在を脅かされるような戦慄を覚える。そこからディオニソス的なものがたち現れる、ということなのだと思う。まだ5ページくらいしか読んでないが、すでにこれだけのことを考えさせる作品である。
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