道と徳とどちらが先か/「オレあケチな人殺しだああ!」by鶴田浩二

Posted at 09/05/07

二〇世紀精神病理学史―病者の光学で見る二〇世紀思想史の一局面 (ちくま学芸文庫)
渡辺 哲夫
筑摩書房

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昨日朝帰郷。出かけるときにポストをあけたら、マーケットプレイスで注文してあった渡辺哲夫『20世紀精神病理学史』(ちくま学芸文庫、2005)が届いていた。それも鞄に突っ込んで出かける。8時過ぎに東京駅構内のパン屋のイートインで朝食。実はこういうところではあまり食べたことがないので新鮮な体験。連休中の朝だったからそういう気にもなったが、平日はどのくらい混んでいるのだろう。まず8時ごろ東京駅に出てくる気にならないけど。中央線の車内で『20世紀精神病理学史』をぱらぱらと読む。著者は医師。まさに精神病理学の専門家だが、ランボーや小林秀雄への言及から始まっていて、興味深い。小林といえばランボー、でもあるのだが、私はあまりそのあたりに触れるのを避けてきたなあと思う。ランボー・小林秀雄論としても読めるかもしれないと思った。

老子 (岩波文庫)
老子
岩波書店

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新宿発9時の特急に乗る。車内ではずいぶん寝てしまったが、起きている時間は『老子』(岩波文庫、2008)を読んだ。面白い。見た限りでは、昨年まで岩波文庫に『老子』は入っていなかったようだ。

『老子』は正式には通常『老子道徳経』というが、別に「道徳」を説いたものではない。「道」と「徳」については書いているが。2000年来この書は研究されてきているが、従来の最古のテキストは708年の石碑だったそうだが、1973年に長沙の馬王堆墓から「帛書」と呼ばれる二種類の絹本文書が発見され、また1993年には同じく湖北省の楚時代の墓から竹簡文書が発見されて、研究が根本からひっくり返るような衝撃を与えたのだそうだ。現行本の『老子』は上下二編、全81章に編集されており、「道」編37章と「徳」編44章から成るのだが、発掘文書では「徳」編が先に、「道」編が後に来ていると言うのも面白い。

中国は編集文化の国なので、古い文書も後代にその時代の思想・考え方にあわせて大幅に編集を加えられていることがよくある。だからオリジナルがどんなものだったのかよく分らなくなってしまうわけだが、こうした発見によって古代の考え方が後代とどう違うのかが明らかになるのは面白い。道は徳よりより根本のものであるから上位にあるという思想から現在は道が先に来ているが、もともとはより身近な徳の方からより思弁的な道の方に進むという順序だったのかもしれない。

そのほか、古くは王侯でなく侯王と書いたと言う話も面白かった。先秦時代は小大、失得などと、マイナスのものを先に書いたのだそうだ。陰陽はいまでもそうだな。

内容的には、賢明なあり方を知りながら暗愚の立場を守る、とか栄誉あるあり方を知りながら汚辱の立場を守る、というあたりがすごいなあと思う。スペースがあるのだ。

昼食は実家で妹と姪たちを交えて。1時から仕事に出る。7時まで。時間外なので基本的にあまり忙しくなかった。夜はNHKで35歳の未来、みたいなのをやっていてこれも結構面白かった。11時前に就寝。

朝は寒かった。灯油が切れているので取りに行き、ついでに『モーニング』を買ってくる。「エンゼルバンク」。「大砲の打ちかた」という話が面白い。一発目が外れたら二発目は的の反対側に外すつもりで思い切って打つことで、結果的に無駄弾を減らせるということだ。そういえば昔はそういう考え方をしていたなあと思う。同じようなミスを繰り返しても客観的になれないけど極端なミスなら視野が広がり、新しい発想ができる、という。そういうことって応用できることがあるだろうなと思う。「かぶく者」歌舞伎という芝居が「型」によって出来ているということをよく表現できていると思う。「誰も寝てはならぬ」カメラマンのクゼぴょんの実家が諏訪湖畔の元鰻屋だったという設定に笑った。

「ディアスポリス」。伊佐久が非道な組長宅に殴りこみ、「てめえの任侠道はそんなものなのか!」と言われて「オオ!ファンタスティック!!ドンピシャ聞きたいセリフだったぜえ」「え・・・?」「で鶴田浩二先生がこう言う…任侠道?そんなものはオレにはねえ。オレあケチな人殺しだああ!」……カッコいい。栄誉あるあり方を知りながら汚辱の立場を守る。というのがカッコいいんだな。「チェーザレ」。ダンテとハインリヒ7世の関係。どうだったんだ?覚えてない。「ンダスゲマイネ」。井伏鱒二と太宰治の関わり。へえ知らなかった。「Ns'あおい」。「医の倫理ジュネーブ宣言」というものに「人命の尊重」「患者の非差別」が謳われている、ということを知る。「東京怪童」。失踪した玉木が何をしていたか。女に走ったのではなく女に…。うーん。なんというかやっぱりモーニングは前衛だ。

きのうから肩凝りと偏頭痛が発生。ずっと物を書くことに集中しているから体の使い方が偏ってるんだなあと思う。車の運転をするとその偏りが少し直る感じがするのと、後は父に愉気をすることで自分の気の流れの滞りも少しよくなった感じがした。二種体操と活元運動をしよう。

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