村上春樹『1Q84』を手に入れた雨の朝

Posted at 09/05/28 Comment(2)» Trackback(1)»

1Q84(1)
村上春樹
新潮社

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村上春樹『1Q84』(上下)を手に入れた朝は、雨が降っていた。朝からちょっとした仕事を片付けて、駐車場で車を止めて外に出たら、ちょっと焦げ臭い匂いがした。車、運転しているときには変なところは感じないのだが、何だろうと思う。まだそのときは雨が降り出してはいなかったのだが、ガソリンスタンドで見てもらうかどうかを考えながら川沿いの道を60キロで走っているときに降りだして、書店の駐車場に入ったときにはすでにかなり強く降っていた。書店の開店時間まであと5分。車の中でラフマニノフのピアノ曲に歌詞をつけたオペラ歌手の歌を聴く。2分前になって、入り口まで行き、店の前のポイントカードの案内に「追加料金はい頂きません」と書いてあるのを読んでいたら、店の中で「開店でーす」という声が聞こえ、BGMがかかったので店の中に入った。

Comic ZERO-SUM (コミック ゼロサム) 2009年 07月号 [雑誌]

一迅社

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ある少女マンガ誌を立ち読みしようと思ったら付録がついていてゴムバンドでとめてあったので読むのを断念。読もうと思ったマンガは単行本が出るまで少し待とう。『コミックゼロサム』を手に取り、何かもう一冊、ガソリンスタンドでもし時間待ちになりそうだったらそのとき時間を潰せそうな文庫本でも買おうかと棚を物色する。昨日松本の駅前で探したときにはなかった講談社文庫の村上春樹が結構揃っていて、『アンダーグラウンド』もある。

そういえば、今日あたりが『1Q84』の発売日だったな、というのを思い出して、ゼロサムを持ってカウンターに行き、「『1Q84』って入ってますか」と聞いた。カウンターの人は聞きなれないことを聞いたような顔をして隣の人のほうをみたが、隣の人もよくわかってない顔をした。初版48万部といっても、地方の書店員がそんな表情をするようでは、文学の浸透度ってそんなもんなんだなと思う。隣の店員が検索したらしく、「「現在この書籍は注文できません」って出てるよ」と言ってる。「村上春樹の新刊なんですけどね」と言ったらようやく少しは事態が飲み込めたらしく、別の店員に「1986ってはいってますか」と聞いたので、「1Q84です。1が数字で、Qがアルファベット、84が数字です」といっていたら別の店員が、「入ってますよ、ご注文の方ですか。」というので、「いいえ」と言ったら「2巻はまだダンボールに入ってるから」と別の店員に指示して、「1、2巻でいいですか」と聞くので、どうも買わざるを得なくなってしまった。入ってるかどうかだけ確認しようと思ったんだけど、これだけごたごたしてしまうと空気として買わざるを得ないよな。結局ゼロサムを含めて三冊、分厚い本ばかり買ってしまった。ガソリンスタンドに行く気が失せて、結局うちに帰って本を読むことにした。

で、帰ってきてちらっと見てみる。きっと今ごろ、一生懸命『1Q84』を読んでる人が日本中に一杯いるんだろうなと思う。昔の、新しいゲームの発売日ってこんな感じだったよなと思う。いきなり***の話が出てきて、どうもこれは**に関連した話になりそうな雰囲気がある。勢いでつい買ってしまったけれども、どうもまだ読む態勢が自分の中でできていない。おそらくこの本には、没頭しそうな感じがある。他のことを順番に片付けて読む態勢を作らないと片付かないことが山積みになって大変になりそうなので、頭を整理しつつ、こんなことを書いている。

BLUE

USMジャパン

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頭の中が片付かない、と言ってるくせに、RCサクセションの『Blue』を聞いている。まだ十分に聞き込んでないので、曲が自分の中に入っていない。学生時代は何も考えないで何度も繰り返し聴いて曲を自分の中に叩き込んだものだなあと思う。やっぱり自分の血肉にしたい、と感じる音楽はある。普段はクラシックばかり聞いているが、自分の中に取り込みたい音楽というのはやっぱりポップスやロックなんだなと思う。言葉がほしいんだ。それも今の日本の。谷川俊太郎が、昔の詩の役割を、今はポップスの歌詞が担っていると言っていたが、それはそういう部分は大きいと思う。確かに詩らしい発見のある歌詞という実は結構多い。ただそれでも、歌詞は歌詞だなとたいていの場合は思うけれども。

モンキービジネス 2009 Spring vol.5 対話号
柴田 元幸
ヴィレッジブックス

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今朝は6時少し前に起きて、モーニングページを書く。『モンキービジネス』の小川洋子と川上弘美の対談について感じたことなどを書いた。人を傷つける真実と優しい嘘、という方に思考が発展していった。不燃物を捨てに職場に出て、ついでにローソンで『モーニング』を買う。本当はどちらがついでなのか微妙だが。帰ってきてモーニングを読んで、人を傷つける真実と優しい嘘、というテーマで「バーテンダー」が描かれていることに気がついた。

『Blue』は一通り聞いたので『モーニング』を読むことにする。なんだか情報が急にたくさん入ってくるとメモリ不足になりそうだ。昔は何でも来い、どこからでも来い、という感じだったのになあ。昔はつまり、ただ楽しめばいい、と思ってたからで、今はそれぞれを何かに活かしたい、少なくともブログのネタくらいにはしたいと思っているから上手く処理しようという感じがあって、ちょっと不純ではある。急に仕事の電話が飛び込んできたり、忙しいときというのはそういうものだ。

まあとにかく、『モーニング』の今週号は面白い。「バカボンド」が巻頭カラー。このマンガ、やっぱり面白そうだな。井上雄彦が甲野善紀と対談していて、少々興味はあったのだけど、ほったらかしておいた。でもいまのところ、モーニング誌上で時々読むくらいの付き合いがちょうどいいかもしれない。「ジパング」連載再開。かわぐちかいじは大怪我を負ったという話だったが、大丈夫なんだろうか。「ジャイアントキリング」。ワクワクしてきた。「特上カバチ!」家賃保証会社やゼロゼロ業者を規制する法律はまだないという話。勉強になる。「ライスショルダー」次の対戦相手が保母さん。多少嘘。「社長島耕作」エライ展開。「神の雫」この作品、何を言いたいのかあまりよくわからなかったのだけど、今週号を読んでだいぶわかった。人間そのもの、人生そのもの、世界そのものをワインを通じて描く。なるほどフランス人好みの野心作だ。また、世界の酒はその地元の料理に一番合うが、フランスワインだけはそう単純に言い切れない。フランスワインを評価し地位を確立させたのはイギリス人。フランスワインはそれだけで一つの独立した世界を持ち、世界で最も消費されている自国以外のワインになっている、という。確かになあ。和食に合わせたくなるワインといえば、やはりフランスのものだもんなあという感じがする。

「ディアスポリス」だいぶ面白さがわかってきた。ズィンズィンとイサーム。久保塚の思い。「ひまわりっ」いろいろなことの途中経過。何か節子が可哀相だ。でも可哀相と言い切れない強さが合って「同情するより金をくれ」という感じだが。そういえば黒木はどこへいったんだ?「エンゼルバンク」この問題そんなに難しいかな。「チェーザレ」カノッサの屈辱の解釈、ここまで踏み込んでわかりやすく書いたものはなかったと思う。皇帝は教皇に謝罪して破門を解除され、それによって皇帝の権威を回復して教皇をその座から追ったが、後の教皇はその事実を利用して皇帝権の上位に教皇権を置くことに成功した。しかし結局両者の反目は第三勢力の台頭を呼び、ともに没落していくことになった。ダンテは教皇派に属したが没落し、真の統治者を見出す旅に出、真の統治者と認めたハインリヒ7世に出会う。「へうげもの」わが世の春の織部だが、織部を認めない人々も多く、また自分の求める器も完成に至らない。書かなかった他の作品もそれぞれ充実している。モーニングはやはりすごいなあ。間違いなく現在のマンガシーンを代表する雑誌だと思う。

『ゼロサム』を読む。「拝み屋横丁顛末記」は一話完結なのでいいが、「ランドリオール」は物語の重要な新しい話、「過去」が一気に公開されて、急に厚みがぐんと増した。わたしはどうもこういう物語の骨というか、建物を構築する柱みたいなものが好きだな。内装より構造に惹かれてしまうというか。だからといって構造を分析するわけでもなく、ただ「面白いなー」って思ってるだけなのだが。構造がわからないと物語を読んだ気がしないし、構造によって好き嫌いが分かれる。構造がない構造、というのも嫌いじゃない、それもまたうまく行けば個性的な構造になるから。しかしランドリって実はすごい構成的なストーリーなんだよな。「革命の真実」に関しては時々物語の中でひょひょっと出てきてるし、大体すでに第1巻から提示されている。それはフースルーがらみの話で割と簡単な話だと思っていたのだけど、実はかなり重くてそれ自体がすごくたくさんの物語を抱えている話だということがわかってびっくりした。簡単に言えば、「奥が深い!」。それにしても今日はたくさんの情報が入って来る日だ。一体どういう日和なんだろう。

雨がやんだ。風もない。仕事も結構あるし、書きたいものもある。昨日操法を受けて目は大丈夫だといわれたけど、やはり疲れている感じがする。あくびも涙も出るので、自己回復能力はちゃんとあるみたいで、まあそういう大丈夫なんだなと思う。

***

さる年。前の年の暮れに一つ年上の人と別れ、年明けにそれが確定した。1月のうちに、夢の遊民社の芝居を紀伊国屋ホールで見た。『回転人魚』だっただろうか。ほとんど死んだようになっていた。春、芝居に出た。台本作成にも関わったが、中途半端だった。四月から学習塾のアルバイトをはじめた。中一に英語を教えて、自分の文法知識が中一レベルでもわかってないことがあって愕然とした。それでもまともに勉強しようとしなかったのはなぜだろう。学習塾のバイトが本当は嫌だったからだ、それも受験産業に参加するのが嫌だという青い理由で。何もかも独り善がりだった。転機は6月だった。教育実習に母校に行った。全然勉強が足りてないことを、指導教員に見抜かれた。徹底的に反省して、真夜中まで予習して授業をやった。出来はともかく、教えるということがどういうことなのか、多分あのときに掴んだ。夏、芝居に出ずに裏方をやった。今も友人の人が突然目の前に現れ、暴れまわって突然どこかへ行った。芝居がはねた次の日、ヨーロッパに旅立った。淡い恋があった。出会いもいくつかあった。ミロよりもピカソが好きになった。建築よりもスペインバロック絵画に惹かれた。帰国。出会いはなかった。秋、芝居をまた手伝った。面白かった。新展開をしていた。新しい台本が送られてきた。面白そうだった。何かがよくなっていく予感があった。そして年が暮れた。

さる年は22歳になった年。普通なら就職活動をしている年だった。一行もそんなことを考えなかった。今考えれば少し不思議だが。何かになれる見込みは何もなかったのに、何かにはなれるだろうと楽観していた。

***

アップしてから本来の発売日が明日29日だということが判明したので、ネタバレ的なことはすべて伏字および削除させていただきました。あしからずご了承を。

***

なんだ、首都圏では27日からすでに発売になっていたのか。あんまり神経質になることもなかったな。でもまあいちおう伏字にしておきます。

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井上雄彦 ブログ 公式

from のんびりお昼寝 at 09/05/30

感染の予防に…村上春樹『1Q84』を手に入れた のはそういうものだ。まあとにかく、『モーニング』の今週号は面白い。「バカボンド」が巻頭カラー。このマンガ...

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CommentData » Posted by shakti at 09/05/28

僕も今日手に入れました。

一緒に、モンキービジネスと、苫米地(笑) (←この人の本を購入してしまったのは、貴方が悪い(笑)。このブログに紹介があったから。書いてあることは、普通。ちょっとユニークなのは、ゴールは人に言っては行けないと言うアドバイス)も届いた。

この雑誌でオーウェルの翻訳があるのは、やっぱり、1984を意識したからなの? オーウェルの文章がわかりやすい日本語になっているね。柴田氏はナインストーリーズの翻訳(私はアメリカにいたとき1-2編読んだが、難しすぎてワカンナカッタ)の宣伝も。それも読んでみたいとおもう。(すぐに古びると本人は書いているが。)

CommentData » Posted by kous37 at 09/05/28

>shaktiさん
いまBook1の101ページまで読んだところです。感想はおいおい書きます。

苫米地は、……なんかすみません。私が悪いんです。(笑)

『象を撃つ』が載ってるのはなぜなんでしょうね。柴田なりの洒落なのかなというくらいしか考えませんでしたが。サリンジャーは読んでないのでわかりませんが…広告も目に入らなかった。(笑)

この雑誌、自由に作られていて、リラックスした感じがいいなあと思います。

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