コクゾウムシがわいた/野口体操/アンリ3世のポーランド脱出行

Posted at 08/09/05

文章を書くために思考するのではなく、思考したことを文章に書くということは、実はあまりやらないことだ。普段、書き付けるまでもなく思考しているその思考を丹念に書き付けてみると、実は案外味があって面白い。

昨日、実家の台所に虚空蔵虫(コクゾウムシ)が大発生した。天井の照明に無数の黒い小さい虫がたかっていて驚いたが、母が奮闘して今日はきれいにされていた。母によると、台所に置いていた小豆の袋の中に発生したらしい。小豆は捨てて、照明についていた虫は処理したのであとは残兵という感じだが、今朝の食卓ではひとしきりコクゾウムシ論議になった。父によると、コクゾウムシというのは農家にとっては珍しくもない虫で、そうたくさん出るのでなければあまり気にすることもないものなのだという。

それにしても虫というのは大発生すると強い印象を与えるものだ。雨の多かった夏の初めに、職場の外のゴミ箱にたまった雨水にぼうふらが大量に湧いていて驚いたことがある。真夏のあいだは虫に悩まされることはほとんどなかった。一般に、夏は虫が多く湧くと思われているけれども、実際に発生するのは真夏ではなく、蒸し暑くなる梅雨の終わりごろと、暑さは去りつつあるけれどもまた雨が降って湿気が増える秋の初めではないかと思う。

今日自分の部屋で窓を開け放って寝そべって本を読んでいたら、顔のまわりで蚊の羽音がして起き上がらざるを得なかった。窓を閉めて机に向かいなおして本を読んだが、こんな季節に虫が気になるのだなあと思った。気温が上がることだけでなく、湿気が多いこともまた虫の発生にはかかわりがあるのかもしれない。あるいは、人間と同じように、しのぎやすくなる今の季節の方が、虫の発生にも適しているのかもしれないと思った。

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NHK-FMで金曜の午後二時から『気ままにクラシック』を言う番組をやっている。これは笑福亭笑瓶とソプラノ歌手幸田浩子がパーソナリティーをつとめる番組で、幸田の気取らないトークに笑瓶がツッコミを入れるというクラシック番組だ。幸田の専門のイタリアの歌曲がかかることが多く、他の平日の午後の番組『クラシック・カフェ』と一味違うくだけた雰囲気だ。この時間は本を読んだり物を書いたりしながら聞いているので、おしゃべりが邪魔になることも多いのだけど、今日は休みながら聞いていたので内容も楽しんだ。

リスナーからのお頼りを紹介するコーナーで、幸田の母校、東京芸大の体育の授業に「こんにゃく体操」というのがある、という話が紹介された。笑瓶に突っ込まれた幸田がこれは力を入れるためには力を抜かなければならないので、その力を抜く体操で、元芸大の体育の先生だった野口三千三がはじめたのだと説明した。私は懐かしいと思った。多分幸田は野口本人にあったことはないと思うが、私は野口に二度会ったことがある。とは言っても一度は学会のシンポジウムで発言するのを聞いただけなのだが、二度目は野口の開いていた一般向けのレッスンのようなものに参加したのだ。いわゆる「野口体操」について具体的にいろいろな説明があったり実践があったりしてなかなか面白く楽しかった。直径20センチくらいある水晶の玉を見せてくれたことをよく憶えている。助手にきていた芸大の弟子の人のことを、「みんなが見ていなければ舐めてしまいたいくらい可愛い」といっていたのを思い出す。といっても別に愛人という意味ではないのだ。すごくおおらかで純粋で大きな人だった。彼の著書は二冊持っているが、なかなか意味がよく分らないところが多い。

野口体操からだに貞(き)く
野口 三千三
春秋社

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彼が亡くなった後、野口体操はどうなってしまったのだろうと思ったが、芸大で野口の考案した体操が残っているというのを知って大変嬉しく思った。多分こんにゃく体操というのは私たちが聞いたところでは「寝にょろ」と呼ばれていたもののバリエーションだと思う。よく間違われるが、野口体操と野口整体は全く別のもので、野口整体は野口晴哉が創始したものである。私が現在会員なのは野口整体(社団法人整体協会)の方だ。

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ミシェル城館の人〈第2部〉自然・理性・運命 (集英社文庫)
堀田 善衛
集英社

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堀田善衛『ミシェル 城館の人』第二部(集英社文庫、2004)、現在354/494ページ。ポーランド王となったアンジュー公アンリが兄シャルル9世の死とともにフランス王となって、ポーランドを脱出し(当時の首都はクラカフだろうか)、ウィーンとヴェネツィアを経てフランスに帰国する、その間のエピソードがとても面白かった。彼は即位してアンリ3世となるのだけど、ヴェネツィアで金を湯水のように使う歓迎を受けたのに対し、アンリはそれ以上に金を使って、10日あまりで44億円ほど使ったらしい。(笑)ムラーノ島のガラス職人の中には今でもアンリ3世から貴族に叙せられたという叙任状を誇らしげに飾った店があるのだそうだ。

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