ゴーゴリ『狂人日記』/痛々しい聖火リレー
Posted at 08/04/26 PermaLink» Comment(0)» Trackback(0)»
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ゴーゴリ『狂人日記』、表題作読了。途中までかったるかったが、話が幻想的になりだしてからどんどん面白くなった。最後はドライブ感を感じるくらい。2000年4月43日、という日付けには吹き出した。
読みながらプーシキンとの共通性、類似性について考えた。プーシキンも聖なる狂者として風顛行者を戯曲『ボリス・ゴドノフ』に登場させている。プーシキンの戯曲は時代物だから、彼らは彼らなりに社会に居場所があるし、皇帝たちにもものを言える存在として畏敬の念を払われている。しかしゴーゴリの狂人はその末裔であることを感じさせるけれども、病院送りにされて迫害される哀れな末裔だ。こういう存在はドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』にも出てくるし、ロシア文学の重要な存在、つまりはロシア民族世界の重要な存在だというべきなのだろう。
プーシキンの世界で存在する位置を与えられていた狂者はいわばポジの存在だが、ゴーゴリが描こうとしたのは西欧化・近代化されたペテルブルクという大都市におけるネガの存在としての狂者であり、そこにゴーゴリの意図があるのだと思うし、また逆にポジとしてそれを描いたプーシキンの偉大さがわかるという構図になる。ある種通常の人間を超えた存在としての狂者というものの生み出すポエジーをネガで書くかポジで書くかと言うのは作者の考え次第だが、ポジで書く方がより難しいのではないかと思う。
諸星大二郎が魔の世界、呪術の世界を描くのに四つの手法を使っていて、一つは現代に見えない位置に残っている魔を描き出す手法、たとえば短篇『使命』など。二つ目は魔の世界の案内役によって通常の世界から人をいざなう『妖怪ハンター』シリーズ。『暗黒神話』もこの範疇に入るか。三つ目は現代に残る未開の世界を通じて魔の世界に迫ろうとする『マッドメン』。四つ目は古代世界を舞台に人間と魔の交流を描く『孔子暗黒伝』『西遊妖猿伝』『諸怪志異』『海神記』など。私は四つ目の範疇が一番好きだが、これが最も想像力を酷使する仕事であることは論を待たない。魔をポジで描いているのだ。
しかしゴーゴリの『狂人日記』もその中にスペインの王位継承争いや大審問官などが出てきて、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』への流れを感じさせる。ロシア文学の流れのようなものが少し見えて、この本はいろいろな意味で面白かった。
***
長野での聖火リレーをテレビで見ていて、日本の警察は優秀だと思った。飛び出してきた人間をエレガントに制圧する手法では、今まで見たロンドンやパリ、サンフランシスコなど各国の警察に比べても一番スマートに行われていたのではないかと思う。聖火リレーは期せずして世界警察力オリンピックになった。聖火警備隊の乱暴な制圧(あれは制圧というより打倒だ)などに比べると日本の警察はメダル候補だろう。
それにしても痛々しい聖火リレーになった。オリンピックが実は血に汚れているという印象を、世界に強く印象付ける世界ツアーになったのではないか。実際にはオリンピック運動にもかなりマイナスの作用があったのではないかと思う。中国は自ら手を汚しているのだから自業自得だが、聖火を受け入れた各国にとってはまさに中国の問題のとばっちりを受けた感じが否めない。ものを投げつけられた萩本欽一や福原愛も、きっとショックを拭えないのではないかと思わざるを得ない。
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