リアリズムとファンタジー:「あるかないか」と「あればいいな」

Posted at 08/01/20

金曜日の午後からまた腰が痛くなって、かなり困った。土曜日は松本の方で臨時の仕事があり、センター試験を受けに行くと思われる高校生たちと々電車で出かけた。仕事は思ったより大変でかなり疲れた。行きはタクシーで行ったが帰りは道の途中でレストランによったため、歩きにしたからそれが結構大変だったかもしれない。腰が痛くて前かがみになるのが大変で、スパゲティが食べにくくて困った。

実家に戻って仕事の後片付けをしたのだが、その前に入浴して脚湯してとにかく腰をあたためる。いろいろやっていたら遅くなってしまい、6時前の特急で上京。錦糸町からタクシーで帰った。

帰ってから、もう読みたくて仕方がなかった『ランドリオール』を読みまくる。1巻から11巻、最新の『ZERO-SUM』まで全部読破して、それも何度も読み直し、気がついたら午前二時を過ぎていた。しかしこれだけ読むと満喫した感じ。すごく飢えていたようだ。

先日描いた作品のこととか、ランドリオールにはまることとか、ナルニアや『みどりのゆび』が好きなこととか、いろいろ考えてみると私はどうもファンタジー派なんだな今更だけど。ウィキペディアでファンタジーの定義を読むと、「SFでは世界設定や物語の展開において自然科学の法則が重要な役割を果たすのに対し、ファンタジーでは空想や象徴、魔術が重要な役割を果たす」と書いてある。なるほど私の創作的なものは空想や象徴や「魔法」に類したことばかりが出てくるし、大体そういうものに違和感がないというよりは精神的に親和性が高いような気がする。「こころのリアル」とでも言うのか、まあ「リアル」というよりも端的に「魅力」と言った方がいいような気もするが、リアルに立脚した魅力というか、そういうものを書ければいいように思う。魅力というのは、ある意味「魔力」と言い換えることも出来るわけだな。そういう意味では私は魔法を信じているというか、少なくとも信じていることにしたほうが楽しいという感じがあるとでもいえばいいのか。

「近代文学におけるファンタジーは、19世紀から20世紀初頭にかけて隆盛を誇ったリアリズム文学に対するアンチ・テーゼとして出発している。すなわち、小説世界のルールは現実世界に順じ現実の一コマとして存在しうる物語であるというリアリズム文学に対し、小説世界のルールを小説世界で規定し現実にはありえない物語をファンタジー文学と呼んだのである。」という指摘もなるほどと思う。というか、レジームであるリアリズムを否定するという立場にファンタジーの魅力の一つがあるのだなということを理解する。

「あるかないか」が問題ではなく、「あるといいな」という問題なのであって、現実に存在しない、しえないからこそ重みがある、という部分がファンタジーにはある。ファンタジーは子供だましだ、という幻想を打ち破るのは、まあ実は自分自身にとってもちょっと難しいことではあるのだけど、ファンタジーこそが現実を突破していくための力になり得るということもあるのだろうと思う。

ファンタジーの世界のリアルというのは、やはり「心のリアル」なのだと思う。現実のさまざまな存在がそのヒントとなってファンタジーに飛翔するための翼になるわけだけど、だからこそ現実に存在するさまざまなものを見、その魅力を感じ、受け止め、理解し、作品に反映していくことが求められるのだと思う。ファンタジーを書くということは、現実の存在の魅力を感じることが第一歩で、ありきたりのものでも、ものすごく希少なものでも、その中間のものでも、それぞれの魅力を感じる力を常に奮い起こして、世界を楽しむ、その魅力を満喫する力を養う必要がある。

まあそういう意味でいえば、たとえばカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』などもすごい重いテーマを扱ってはいるがある種のファンタジーではある。村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』なども、ある意味ファンタジーといえるのだろうな。

そういう意味では、ファンタジーというのは気がつかれていない世界の秘密に切り込んでいく可能性のある文学のジャンルなのであって、子供だましというようなものではない。少なくとも、世界を限定された現実のリアルの世界だけしかないと感じているいわば「つまらない大人」にとっての文学ではない。

『ランドリオール』8巻の見返しに作者が「バイオレンスもエロティシズムも出てこないファンタジーを8巻も描けて幸せだ」というようなことを書いていたが、なるほどなあと思った。私も、わたしのファンタジーを構築すればいいのだ、と。

Landreaall 8 (8)
おがき ちか
一迅社

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