登場人物の成長/合わせる能力
Posted at 07/05/24 PermaLink» Comment(0)» Trackback(0)»
オルコット『続若草物語(下)』(角川文庫、1987)読了。
映画の続編のようなつもりで読んだが、当たり前だが途中から小説の文脈の中で読むようになった。ローリーとエイミーが理解しあっていくヨーロッパでのストーリーの展開が素晴らしいと思う。ローリーがジョーへの失恋を引きずっていることをエイミーが理解し、また社交界の花形になるために金持ちと結婚する、という気持ちからローリーへと変化していくところ、最後にベスの死を聞いてローリーがエイミーのもとに駆けつけ、嘆きを共有し慰めることから結婚へ踏み出すストーリー。いろいろな話の流れを上手にまとめ、なおかつその中に登場人物たちの「成長」を織り込む手法はみごとだ。19世紀のアメリカの、人間の幸福や人間のあるべき姿についての確固たる信念のようなものが、これらのストーリーを支えているのだなと思う。
最後に筋立てから言えば、ベア先生とジョーがマーチおばさんの邸宅を相続しそこに男子学校を作るというのは予想外だった。ジョーは作家になるものと映画を見終わった時点では思っていたので。なるほどこういう名作の原作の映画というものは、角度を変えてお話を作ることが可能なんだなと思う。他にも映画化は何度かされているし、他のものを見るのも面白いかもしれない。
カルメンマキ・甲野善紀・名越康文『スプリット』(新曜社、1998)読了。(再)
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体が「割れる」というのはどういうことなのか。武術家・甲野善紀の本を読んでいて理解しにくい概念のひとつである。金田伸夫『ナンバ健康法』(三笠書房知的生きかた文庫、2004)を読み直して、それは体の各部位が別々に動く状態のことをさしている、ということは理解できたのだが、その精神的・思想的・感覚的根拠がこの本に書かれているのではないかという気がしてもう一度読み出した。
そのことは最後の方に少しだけ出てくる。中でもなるほどと思ったのは「この割れが割れ続けるには体が浮くしかない」という結論にいたるところで、これはつまり荻野アンナとの共著で出てくる「かかとを上げない歩き方」のことなのだなと理解する。何のためにあんな大変な歩き方をするのかと思っていたが、そういうことだったのか。
この「割れる」=「スプリット」の概念というのは結局は原因→結果というつながりのみで物事をとらえるとらえ方では説明できず、「各々が全く独立して、しかも協働する」という動き方をつかむということでもある。邦楽などでは舞台監督がおらず、誰がはじめるというでもなくなんとなく、しかも息が揃って演奏が始まるというものだそうだが、魚の群が各魚まったく独立して泳いでいながらある瞬間に全く同じ方向に向きを変えるというのとよく似ている。それぞれ、ある「気配」を「みな」が察知して動きが揃う、ということなのだが、それを肉体の各部位が独立してできるということがポイントになる。
こうは書いてももちろん私にそんなことができるわけではないからとんでもない勘違いがあるかもしれないのだが。しかし私が芝居していたときの経験でも思うのだが、動きを「そろえている」つもりがないのにいつのまにか「そろっている」とか、「あわせる」という力が人間を含む動物にはあると思う。
今の社会では圧倒的に「そろえられるけどずらす」とか「とにかくずらす」とか「そもそもあわせる能力がない」みたいなことが多いしますます増えてきていると思う。先日の北海道の電車で高校生が電車の奥に詰めるという行為が出来ずに見切り発車されてしまった事件などがその典型だが、生物本来の「あわせる能力」の低下みたいなことが現代の最大の危機なのかもしれないと思うことは私もよくある。
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