『華のある首相』から『花の似合う首相』へ/『副』と『代理』の重要性

Posted at 06/09/30

安倍内閣が発足して最初の週末。所信表明演説も行われ、安倍政権に対する最初の論評が出揃った、というところだろうか。賛否さまざまあるが、基本的にはお手並み拝見というところで、どの勢力どのウォッチャーも政権の行動を注視しているというところだろう。

小泉首相はダイナミックな、オーラを発するタイプの指導者だったが、安倍首相はどちらかというとなんとなく自然に視線が集まる、スタティックなタイプの指導者だ。もう慣れてしまったからあえて誰も言わなくなったが、小泉首相はあの髪型といい行動パターンといい、日本の政治指導者としては相当異質なものだった。それに比べれば安倍首相はノーマルだし、普通の感じがある。

総理のぶら下がり取材が一日2回から1回になるということだが、まあそのくらいが普通の総理大臣のノルマというものだろう。日に2回という小泉首相の露出の仕方が高すぎるのだと思う。安倍首相になってからもインタビューの場所が変わらなくて、今までのイメージを引きずってしまったら損だと思っていたのだが、ちょっと雰囲気を変えたようだ。今まであったかどうか確認はしていないが、安倍首相の背景に百合か何かの花が写っている。シンプルな背景に花が写るくらいの感じが、安倍首相には似合う。ハンカチ王子ではないが、やはりそういう小道具がイメージをアップするタイプのキャラクターなのだ。

小泉首相はプレスリーの真似をしたりしてそのグロテスクさが爆発するところが余人をもって変えがたいキャラクターだったのだが、安倍首相はそんな奇天烈な真似には向いていない。いろいろな意味で、小泉首相は『華のある首相』だったが、安倍首相は『花の似合う首相』なのだ。メディアの露出に関しては細心の注意を払った方が言いし、その効果が絶大に上がるタイプのキャラクターだと思う。

「東京インサイドライン」の記事を読んでいたら、安倍首相の以前の発言として「これからは『代理』と『副』が重要だ。自分がやってみて、よく分かった。特に、将来の自民党を担う人物に『代理』をやってもらい、自分を磨いてもらいたい」といっていたと書いてあった。確かに、安倍首相は官房副長官、幹事長代理といった役職を経てきている。

私にもささやかながら経験があるが、『副』とか『代理』という、つまりナンバー2くらいのポジションというのは、一番仕事がやりやすい位置なのだ。やりたいことはトップとぶつからない限りたいていのことはやれるし、回りからの風圧はトップが引き受けてくれる。もちろんそのあいだにトップに立つための準備がきちんと出来ていないとトップになってからろくに使えない人材になってしまうが、安倍首相のように最初から志の高いタイプの人間にとっては最初は『副』などまだるっこしいと思うかもしれないが、そこで学べること、そこで身につけられることは相当に多い。その重要性にきちんと評価を与えられるところが現代的な「組織人としての政治家」のセンスというものが備わっているということを感じさせる。

今まで政治家というのは原則的にはひとり一党の独立した存在か、でなければ任侠的な男くさい世界の結合のようなものが重視されてきたけれども、安倍氏やその側近集団にはそういう体臭がない。そのあたりが古いタイプの政治家たちには物足りないところなのだと思うが、いつまでもそういう時代でもないだろう。団塊の世代まではそれ臭いところがあったが、安倍首相の誕生は見事に団塊の世代をスルーしていて、その意味では非常に超現代的な政治の実現と言っていいのだと思う。

まあその「体臭の薄さ」というものはいいことばかりではないだろうとは思う。団塊の世代の政治家たちが今後どのような逆襲をしてくるのか。団塊政治家といえば菅・鳩山というところか。団塊というの戦後世代なはずなのだが、反逆的ではあるが体臭的には非常に古い感じがする。このゾーンを完全にスルーできるのか、また揺り戻しがあるのか、あんまり揺れない方が日本のためだとは思うが。

したたかさという点についても安倍首相はいろいろ言われていたが、麻生外相の留任や前金融相の与謝野馨の自民党税調会長への起用など、かなり侮れない人事があって面白い。均衡財政論の与謝野を税調会長にして法人税減税をやらせるというのはどんなことになるんだろう。

それにしてもさて、来週からの国会その他、見どころはたくさんありそうだ。

***

昨日帰京。夜はなんとなく朝生を見ていたが途中で寝てしまった。朝は疲れが出てだらだら過ごす。昔買ったエニアグラムの本を何年ぶりかで少し読み直した。コンビニ本神田たけ志『雀鬼・修羅転生』(竹書房、2006)を読む。桜井章一の話はどれを読んでも面白い。本棚に本を取りに行ったら、真っ赤な夕日がビルのあいだに沈んでいくところだった。まるでドラマの中のシーンのようだった。


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