デュラス『愛人』とダサさをエレガントに表現するフランス語
Posted at 06/06/28 PermaLink» Comment(0)» Trackback(0)»
昨日帰郷。昨日の昼間は暑かったが、今朝は普通の掛け布団が必要なほど気温が下がった。信州は涼しい。東京ではとても無理だ。それは気温の日較差が大きいということで、春先などはそれで調子を崩すのだが、夏になるとそれはとてもありがたいことになる。
朝起きてSUPER JUMPを買いに行く。やはりコミック雑誌では今一番面白いと改めて思う。「バーテンダー」と「王様の仕立て屋」を読むだけでも買う価値があるが、他の連載もほとんどはずれがない。問題はちょっとアダルト的な部分の含有量が高いので、人によってはアレルギーを起こす可能性があるということだが。
腰の調子が良くないので『デューク更家の一分間ウォーキングスーパーセラピー』(主婦と生活社、2004)を読み直してみる。いろいろと示唆に富んでいてやはりこの人は本質をつかんでいると思う。「骨盤を締める」という感覚が重要だなと思う。
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特急の中と夜寝る前をかけてマルグリット・デュラス『愛人(ラマン)』(河出文庫、1992)を読み通す。フランス語文学と英語文学の性質の違いのようなものを実感できる。英語文学で、また日本語文学では「かもしれない」「ではないか」という表現になりそうなものがすべて断定の言い切りの形で表現されるため、(まあデュラスがそういう人だということもあろうが)とてもイメージが明確な像を結ぶ。これは歴史などを読んでいてもそうなのだが、あまりに明確すぎてちょっと違和感を覚える。しかし、イメージ、イマージュが明確であったからといってそれが真実や事実とは限らないわけで、そういうフランス語的な「明瞭な曖昧さ」のようなものを意識して読めると、案外そういう違和感が逆にポップで面白い気もしてくる。
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たとえば「母の存在がエクリチュールになる」などといわれるとつい身構えてしまうが、エクリチュールを「書き方、書きぶり」と言い換えてみると、このエクリチュールはデュラスにとっての書くこと=生きることという等式関係の中で母の生き方の文法とか統語法といったもののことをさしているのだろうとあたりがつく。「母の生きざま」と訳すとあまりにもダサいが、フランス語はダサい内容の言葉をかっこよく言う言い方が異常に発達しているだけで、日本語にそのまま訳すとどうしようもなくダサくなってしまうので、中途半端にかっこよさと意味を共存させざるを得なくなるのだろう。「フランス女のど根性」と訳してはエレガンスも台無しである。しかし実際に言っていることのほとんどはそのレベルのことなんだろうと思う。しかしそうやって人間の粗末で滑稽な現実を救い出しエレガントな表現に結実させる力がフランス語にはあると言えるわけで、そのあたりいまの日本語が露悪表現の毒々しい花盛りであることの批評としてこういうものを対置させることには意味があると思う。露悪的な言葉が真実を表現しうるという幻想を、日本人は早く振り払ったほうがいい。それが出来ないと、人生を豊かに生きるなどということからは程遠いことになる。だからフランス人は老人でも恋愛できるんだよな。(そういえば昔の「三銃士」やら「シラノ・ド・ベルジュラック」の訳などは、正確であろうとして相当ダサかった気がする。そういうものを絢爛たる文体で表現するのがフランス文化の本領というべきだろう。)
少女の弱さと傷つきやすさ、という主題にはやはり心ひかれるものがあるのだが、「金のため」に愛人になった金持ち中国人のボンボンに対し、去っていく船の上で、「そして彼女は突然、自分があの男を愛していなかったということに確信をもてなくなった。」という表現は本当にじんと来る。回りくどいがゆえの直截さ。欲望の話のようで、本当は愛の話であるこの小説が、欲望を通してしか愛を語れない現代のある種の不毛を鮮烈に描き出しているように思う。なんていうのか、この小説は余分なところもずいぶんたくさんあると思うのだが、愛玩したくなるところもかなりあり、仔細に自分のものにしたい小説ではある。
山田詠美の『ベッドタイムアイズ』にちょっと似てるな。しかしデュラスの方が徹底している感じがする。そのあたりは年の功か。狂気がデュラスの方が深いというべきか。
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まあいずれにしても、イマージュ(幻視という意味で)に満ちた堅牢な作品世界を作ろうと思えばフランス語のほうが向いているという側面はあるだろうなと思う。最近、フランスというものに対する自分の理解が深まっている気が自分ではしていて、そのあたりはちょっと充ちた気になる。
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