「あらかじめ考えられた諸観念の体系」と「小説という方法」
Posted at 06/05/26 PermaLink» Comment(0)» Trackback(0)»
昨日は暖かい、というかやや暑いくらいだったが、夜からだいぶ気温が下がり、今朝はやや肌寒い。機能は創作中のものに一区切りついた、というかラストスパートの集中をしたせいで相当神経的な疲労があった。精神的には満足があるのだが、今朝はぐっすり寝たようで、やはり疲れていたんだなと思った。
『感情教育』ははじめてアルヌーのディナーに呼ばれたところを読む。『ボヴァリー夫人』は読めず。『カーテン』は以下のフレーズが印象に残る。(p.867)
「強調しておこう。ブロッホやムジールが現代小説の美学の中に導入したような小説的考察は、科学者もしくは哲学者の考察とは何の関係もない。それは意図的に非=哲学的、さらには反=哲学的、すなわちあらかじめ考えられた諸観念のどんな体系からも断固独立したものだとさえ私は言うだろう。この考察は判断せず、真実を声高に主張しない。それは自らを問い、驚き、探る。その形式は隠喩的、アイロニー的、仮定的、誇張的、アフォリズム的、滑稽、挑発的、空想的などと、この上なく多様である。そしてとりわけ、それは決して人物たちの生という魔法の輪を離れない。それを培い正当化するのは人物たちの生なのである。」
小説の考察は科学や哲学など「あらかじめ考えられた諸観念の体系」とは断固独立したものである、というのはまさにそうだろう。それとどれだけ交渉を持つかがその小説あるいは芸術がどれだけの創造性あるいは前衛性を持つかということと関係してくる。そうした「諸観念」あるいは「先入観=思い込み」を意識的に扱うのは興味深いことだが、それらがその諸観念や思い込みにあわせた形でしか書かれないのであればちょっと足りないものがあろう。しかし、ここには書いていないがどんな思い込みどおりの文章に見えてもその描写が何かを突き抜けていることは有り得るわけで、そこに小説と言うものの一筋縄では行かなさがあるのだと思うし、そう考えると小説における描写の致命的な重大性にも改めて考えが及ぶ。しかし「判断せず真実を声高に主張しない」考察というのが描写のある側面を言っているのかもしれないが。
ただ、小説的考察を正当化するのは「人物たちの生」だというのは分らなくはないが、それだけでは不十分な気もする。そこのところはどうもうまくいえないが、志賀直哉的な「もっと奥にあるもの」のようなものを描くということもあるんではないかという気もする。その辺は、ヨーロッパと日本との文化的な違いに起因するところだろうし、まだまだ私などにはそう簡単にいえないところなのだろうと思う。
そのあたりは人間存在をどのようにとらえるかと言う根源的な問題に行きつくのでなかなか大変だ。ただ、どのようにでも考察できるのが小説というものだろうし、そういう意味では小説というメディアこそがそううところで新しい地平を切り開きうる方法なのかもしれないという気もしなくはなかったり。
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