ライブドア・ショックと小泉政権の命運/プーシキン『大尉の娘』

Posted at 06/01/19

調子よくライブドアの問題について書いていたら秀丸がいきなりハングアップしてしまい、原稿がすべて失われた。ちょっと調子に乗りすぎていたのでまあある種の警告かもしれないという気もする。しかしエディタがハングアップするなんてめったにないことなんだが。

ライブドア・ショックは広がりを見せている。多数のネット投資家の参入で活況を呈していた現今の株式市場であっただけに、そのシンボル的な存在であるライブドアの不祥事が彼らの心理を相当冷やしたことは想像に難くない。マスコミの報道姿勢もその心理を大きく煽るものであった。ライブドアはM&Aで多数の企業を買収し、一大企業グループを築きつつあっただけに、その不祥事による影響は広範囲にわたり深刻なものになる可能性がある。東証の取引途中停止など明治以来なかったことだろう。

ライブドアの不祥事自体は報道を見る限り弁解の余地のないものに思えるからこの強制捜査自体に問題があるわけではないが、このタイミングは果たして最良のものであったか。すでに多くの人が指摘しているように、ヒューザー小嶋社長の証人喚問にぶつけたものであっただろう。小嶋社長の口から安倍氏の名が出たように、これはかなり政権と与党内の反小泉勢力の暗闘に関わるものであると思われる。したがってこの時期のライブドア強制捜査は政権側の講じたある種の防衛策であったと思う。報道を見る限り、ライブドアの不祥事は弁解の余地のないものに思われるし強制捜査を入れること当然だと思うが、影響の大きさは事前に予想しうるものであったと思うし、それを考えればもう少し時期を図ることも出来たのではないか。普通なら週末に市場が閉まってから行い、月曜日に市場が開くころには事件の全体像が明らかになっていて狼狽売りも最小限に押さえられる、というのが常道だろう。それを週の半ばに仕掛けると言うのは政治的な意図があったとしか考えにくい。こんな下手を打つようでは、政権の先行きが思いやられる。

***

昨日は午前中に市立図書館に出かけて中国の奇譚集か何かを借りようと思ったのだが見つからず。第一貸し出し券を忘れると言うへまをやったのでどうにもならない。『明代清言集』『清代清言集』というのが面白そうだったので借りようと思ったのだが。清言、というのは竹林の七賢などの清談と同じようなもので、隠遁者の言行や記述を抜書きしたもの、という感じである。邸内にお茶の香りが漂っているときに友人が来ると嬉しい、というような話で、隠遁と言っても明清では文人墨客という趣味の世界と言う意味合いが強い。しかしそのセンスは洗練されていると思った。

仕方がないので帰ってきてまた本棚を探し、何かフィクションがないかと思ったら、プーシキン『大尉の娘』(新潮文庫)が出て来た。この本がなぜここにあるのかよくわからないのだが、あまり期待もしないで読み始めたらこれが面白い。ぐんぐん読んでしまう。そこはかとないユーモアが漂う文体に気持ちよく読み進めていくと、いきなりプガチョフの乱が起こり、その首領が実は…という展開。実は今まで、自分はフィクションが合わない体質なのだ、と思い込んでいたのだが、全く間違っていた、ということをどんどん思い知らされる。そういえば若いころは、深刻ぶった話が嫌いだった。ユーモアとかウィットで書き綴られているような話が好きで、歴史を好きになったのも少年向けのそうした歴史教養書のようなものが楽しかったからであることが思い出された。それが社会に出て以来、むやみやたらと深刻ぶるようになってしまって、自分のそういう部分を全く忘れ去っていたようだ。しかし、まあそれもまた勉強だったのだろうと思う。むしろこうしたプーシキンの文体のようなユーモア、余裕のようなものを肝に銘じて生きていかなければならないと思う。書いてあることは何しろプガチョフの反乱であるから、相当野蛮で暴力的なことも含まれている。ロシア・リアリズムの祖などといわれるのもそうした部分だろう。しかし、見習うべきはそうした野蛮さ・恐ろしさをも描き得るような強靭なユーモア、余裕の力であろう。現在約半分くらいのところを読んでいる。とにかく、今まで相当強い偏見を持って心理的に拒絶していた「世界の名作」というものが実は自分にとって相当面白いのではないかと思い始めている。これもまあしかし、実社会で苦労した賜物なのかも知れぬ(笑)。

今朝は寒い。うっかりして水道を凍らせた。最近少し暖かかったので、水をちょろちょろ出すのを忘れていたのだ。最近どうもうっかりが多い。


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