全日本フィギュア男子採点ミスの失態に思う

Posted at 05/12/25

全日本フィギュア男子は織田の優勝でトリノの選考はさらに複雑になるなと思ったが、何と表彰式後に採点ミスが発覚して高橋の優勝が決まったと言う。そんなことがあっていいものか、と思うが、考えてみれば今年は「そんなこと」の連続だった。

結局は国際規格の採点システムが英語のためうまく使いこなせず独自ソフトを使ったのが不具合であったことが原因らしい。三回転ジャンプを二回跳んでいいのはニ種類まで、という規定があるらしいが、(トリプルアクセル、トリプルトゥーループとか言うあれね)全日本大会などという晴れの舞台で、まさか日本でそんな話を聞くとは思わなかった。

しかし考えてみれば東京証券取引所のミスの連発も同じようなものだ。いわば東証は『審判』のようなものなのだから、その判定や勝負、いや取引の交通整理が最重要の課題であるのに、それがシステムが止まったり明らかな誤注文を取り消せないなどというのはあってはならないことだ。400億円という巨額の穴埋めをどうするか、こちらも深刻だ。

審判と言えばもちろん強度偽装問題のイーホームズや日本ERI、あるいは自治体などの「検査機関」も十分な検査をもともとシステム上していなかったと言うことが判明した。こちらは人命に関わることだし、大変なことだ。

社会的な観点から言えば裁判所の、「司法の喋り過ぎ」だ。原判決では退けながら個人的な意見みたいな形で首相の靖国参拝に文句をつけたり、ジャッジの不明確さが目立った。それを批判して短い判決文を書いた裁判官の再任拒否をしたり、司法への信頼も低下している。

政治で言えば、郵政法案を参議院で否決されたのに衆議院を解散するなどというこれも「公正の感覚」を欠いた判断が行われて、「国民の審判」も圧倒的に小泉自民党を支持するなどこの審判も相当変だった。

スポーツの世界での誤審や採点ミスというのはほかにもあったような気がするがもう思い出せない。大学入試での採点ミスなどはもう年中行事である。食品安全委員会の狂牛病のおそれがある米国産牛肉の解禁などもお話にならない。

日本は、どうも「まともな判断」というものが下せない状態になっていると言うことの、象徴的な現われがクリスマスイブの男子フィギュアの失態だったのかもしれない。そういえば「想定外」な人々が猛威を振るったのも今年だった。

「まともな判断」が下せないと言うのは、判断のもとになる「健全な常識」、「しっかりした専門的な知識」、「あらゆる可能性を考慮して想定外の事態も捌ききる腹の大きさ」のようなもの、それぞれが櫛の歯が欠けるように日本人から失われつつあると言うことなのだと思う。簡単に言えば、日本人から「中庸」の美徳が失われていると言うことになる。

中庸というのはバランス感覚、ということにもなろうが、それも機械的なバランスを取るだけでなく人情の機微を尽くしたものでなければならない。判断に人情が表れてこなければ人情の大切さが人に伝わるはずもない。しかしそれに流されてもいけない。その難しさをよくこなすのが歌舞伎に出てくる「捌き役」と言われる大物の役割なのだが、そうした存在がいなくなった、というか日本人がそうした存在を信頼し、尊重しなくなった、ということなのだろうと思う。信頼や尊重のないところにバランスもなく、中庸もなく、まして健全さや誠実さも育つことはないだろう。まともな判断が出来ないのもそういうことに起因しているのだろうと思う。

「無私な人間」が欠けていると言うこと。「無私な人間」への信頼や期待ができないということ。結局今の日本に欠けているのはそういうことなのだろう。誰もが自分は人より得をしたいと思っているだけでは、社会は動かない。市場の為すに任せよ、といってもその市場を公正に仕切る仕切り役がいなければ絶対に市場もうまく動かない。そういう目に見えない中心になるものを、日本人はあまりにも蔑ろにしてきたのだと思う。今そのツケがはっきりと現れているのだ。

欲望がなければ社会は動かない、というのは本当だと思うが、欲望だけでは社会は混乱に陥る。自らの欲望を制御して社会の混乱を少なく抑えようとする人たちを尊重し信頼する気持ちを日本人はもっと大事にしなければならないのだと思う。

大リーグに比べて日本の球界は審判の地位が低いと言う。大相撲でも行事は進行役で勝負を判定するのは力士上がりの親方の審判委員である。ジャッジに求められる権威や権力というものを剥奪しようという方向にばかり日本人の指向性が強いからだろうと思う。

現代を中世になぞらえる見方があるが、日本の中世というのはまさにそういうものが崩壊した時代だった。自由ではあったが平和ではなかった、といっていいだろう。そういうものを今の日本人が求めているならそれもまたしかたがないことかもしれないが、そうした時代に子どもはたくさん生まれそうにないのはしかたがないことだろう。今「蒙古襲来」があったとしたら、日本人は持ちこたえることが出来るのだろうか。

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