安野モヨコ『脂肪と言う名の服を着て』/中秋の名月

Posted at 05/09/19 Trackback(1)»

今日は午前中から色々やっていたが、友人から電話がかかってきて思わず話し込んでしまった。がっつり仕事をするつもりだったのだが、自分の立ち位置をもう一度考え、考え直すことが出来たのでプラスになった。やはり話してお互い益のある友達というのはいい。いつも益ばかりではないのはもちろんだが、まあそれもまた友達というものだ。

床屋に行こうと店の前をうろうろするが、いつ行っても混んでいるのでとりあえず断念して午後から気分転換に銀座に出る。どうして都会の空気は心地いいのだろう。別に何をするというわけでもないが、気持ちが晴れやかになる。ものを考え出すとどうしてもぐずぐず同じところを堂々巡りになってしまうから、そんなこととかけ離れた場所が自分をその迷路から救い出すそんな力があるようだ。

教文館の2階をぐるぐる回る。基本的に新しい本を買うつもりでなく、どんな本が出ているのか情勢探索くらいのつもりだったのだが、マンガのコーナーでふと思いついて安野モヨコ『脂肪という名の服を着て(完全版)』(祥伝社,2002)を買う。

そのあと、4丁目の交差点を渡って南に出て、路地裏を交詢社ビルのあたりをうろうろして、旭屋書店に出る。驚いたことに、数寄屋橋側の入り口が閉鎖されて書棚が増えていた。あのつくり、成功だろうか。私は数寄屋橋側の入り口が好きだったのだが。私の場合、裏口のある本屋は必ず裏口から入るのだ、神田の三省堂などでも。それがないというのはちと淋しい。子供のころの秘密の近道探しのDNA?がまだ生きているのか。

結局何も買わず、また4丁目まで戻って三越の地下でハーブとレモンの照り焼きチキンを買って帰る。帰りに床屋をのぞいたら空いてきていたので、荷物を置いたら行こうと思ったのだが、つい読みかけてしまった『脂肪という名の・・・』を最後まで読んでしまった。

安野モヨコという人の作品は『監督不行届』『働きマン』以外は立ち読みした『美人画報』くらいしかなく、ダイエット漫画というふれこみだったので『美人画報』方面のものかと思いどんなのかなあくらいの軽い気持ちで読み始めたが、とんでもない。これは内田春菊と同じくらいは重いなあと思って読み続けたが、内田の絵にあるとぼけた感じが安野にはないから、かなり鋭角的にギリギリ来る。

実は出かける前、友達と話していて話題になったこちらのサイトを読破してかなりテンションがあがっていたということもあるのだが、この本のテンションもバリバリ全開である。安野モヨコの主人公というのは自分がしっかりしている印象が強いのだがこの本の主人公は全く逆のタイプ。そのあたりが内田春菊的な感じが非常にしたのだろう。このマンガ、私的にはお勧めなのでネタばれは避けるが、少し太めの気弱なOLがダイエットと過食と嘔吐の泥沼に入り込むある種の狂気を彼女の周囲の狂気のスパイラルと軌を一にしてドライブ感を持って描いているのが内田春菊のののほん感とは全く異なり鋭角的である。

自分のからだを自分の欲望に負けてコントロールできない弱さ。"Diet or Die?"の"t"の字ひとつの違い。「あの子どうすんのかなー。」「さあ。たぶん繰り返すわね。身体じゃないもの。心がデブなんだもの。」何もかも人のせいにする弱さというのは、自分にはないと思いがちだが、やはりどこか思い通りにならない環境から来るストレスを、環境のせいにしている自分がいるということに気がつくこともないでもない。その環境から脱出する努力を、本当にやっているかといえば難しい。波風を立てないということだけに汲々とすることが、実は弱さなのだということも、あまり明示的にではないがこの本は示唆していて、「心がデブなのではないか」という問いは自分自身にも跳ね返ってくる。これは決してダイエットや過食症の人だけに対する問いかけではない。

前向きの作品を描く人だと思っていたので意外ではあったが、あんがい安野モヨコの本質はこの作品に非常に表れているのかもしれない。ちょっと剋目させられる作品だった。

その後床屋に行く。実は結構待ったのだが、まあそれはそれでよし。3ヶ月ぶりで結構ぼさぼさだったのでだいぶ手間がかかったようだ。帰ってきて鏡を見るといつものように白髪の多さに驚く。頭はだいぶ軽くなった。

空には中秋の名月。確かに明るい。一人では月見でもないが、何もしないのはもったいないようないい月だった。

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