「ダンダダン」最強の妖怪カシマレイコと終戦の日/安倍元首相は我々が思っているよりずっとオーソドックスな政党政治家だった/高橋杉雄「日本人が知っておくべき自衛隊と国防のこと」

Posted at 23/08/15

8月15日(火)雨上がり

台風7号は紀伊半島に上陸したようなのだが、当地では比較的静かな朝を迎えた。今日は終戦の日。東京にいれば靖国神社に参拝するのだが、今年は実家の方で過ごしている。お盆休みは銀行などは平常営業なのでお休みの気分といつもの日の気分が同居していて、その辺が連休や年末年始とは違う感じだなと改めて思った。

https://shonenjumpplus.com/episode/14079602755080363698

「ダンダダン」。ジャンププラスのマンガでも常に総合順位の上位5位以内にランクされている人気作品だが、火曜日では圧倒的な強さである。幽霊を信じないオカルトマニアの少年・高倉健(オカルン)と、霊媒師の孫で宇宙人を信じない少女・綾瀬桃(モモ)が「互いの理解を超越した圧倒的怪異」である宇宙人や妖怪たちに出会い・・・という物語なのだが、妖怪・ターボババアとの戦いの時にオカルンは「金玉」を失い、またターボババアに取り憑かれて強力な戦闘能力を得、またモモは「超能力」に目覚め、高倉の「金玉」探しに協力する・・・という話である。

妖怪や宇宙人が次々と出てくる中でオカルンとモモの関係も深まっていくが、それに怪異に取り憑かれた少女・アイラや少年・ジジ、巨大マシンを操れる少年金太や異星人の少女・バモラが絡み、現在では地中を侵略しようとする宇宙人の巨大軍団と戦う展開になっている。

ストーリーも非常に巧みなのだが、絵が衝撃的にうまい、つまり作画能力が限界を超えている感じで、特に激しい戦闘シーンなのに全く擬音を使わない描写はマンガにおいては衝撃的に新しい表現と言えると思う。

この宇宙人との戦いの前にモモは最強の妖怪・カシマレイコに狙われていて、夜10時以降は出歩いてはいけないということになっているのだが、79話からの宇宙人軍団との激しい攻防が続く中で、ついリミットを超えてしまい、カシマレイコに直面するのが先週の117話だった。

「カシマレイコ」とは何か、というのはさまざまな説があるようだけれども、「身体の一部が欠損した女性、身体がケロイド状の女性、旧日本軍兵士」など、共通するのは戦争の犠牲者ということのようだ。作中では「鏡の中に閉じ込める最強の妖怪」ということになっていて、モモの前に現れて「鏡の中に閉じ込めて手足をもぐ」と告げるが、ばあちゃんに会いたいと打ちひしがれるモモにカシマレイコは上空の宇宙人軍団を見て怒りを燃やし、全てを鏡の中に吸収する。

そしてモモがカシマレイコに狙われていることを知ったオカルンはモモを必死で庇おうとし、モモはおかるんを守ろうとする。するとカシマレイコに変化が現れて・・・

みたいな話なのだが、これは実際に読んでもらわないとその感動が伝わらないので紹介はこの程度にしたい。この展開を終戦の日の更新にぶつけてくる作者は天才かと改めて思った。ジャンプ+アプリでは初回無料で全話読めるので、興味を持たれた方は是非読んでもらいたいと思う。単行本も出ている。読み返して思う、これは全力青春マンガなのだよなと。

***

お盆休み、今日が三日目。昨日は午前中に姪が来たので迎えに行き、その他の時間は自室で本を読んで、午後は暑いので職場に出て職場で本を読んでいた。

読んだのは読みかけの「安倍晋三回顧録」岩田明子「安倍晋三実録」と、安倍政権振り返りの意味で読んでいたのだが、「回顧録」の方は一応読了した。昨日読んだ範囲で印象に残ったところなどを少しメモ。

第二次安倍政権では第一次政権のメンバーの多くを起用したこと。一次政権の失敗を生かしてやれると思ったから、と言い、実際それで史上最長政権を成し遂げたのだから正しかったのだろう。それにしても政治家は自分のやったことを「失敗」とちゃんと認められるのに、官僚はなぜ認められないのかなと不思議に思う。

第一次政権の失敗を「理念を先行させてしまい、足元の経済政策をおろそかにしてしまったこと」と総括しているのは「アベノミクス」で長期政権を実現した安倍さんがいうと説得力がある。ただ、第一次政権の時期も景気回復局面はあったのだが、それは景況判断でプラスが出ていた関東と東海、つまり大企業や輸出企業が多い地域に限られていたのだという。そして第二次政権では北海道から沖縄まで9地域全てのプラスを目指し、そのために「観光」に力を入れた、というのはなるほどそうだったのか、と目から鱗が落ちる思いがした。「観光」は地域の持っている伝統や自然の魅力などをリソースにするわけで、地域をある意味食い物にする性質があるから、私はそれを柱にするのはあまり賛成ではないけれども、景気回復を実感させるにはとりあえずは有効な手段だったということは認めざるは得ないかもしれないなと思った。

また理念方向で言えば集団安全保障の限定行使の容認の憲法解釈変更があるけれども、吉田茂が結んだ日米安保が米軍が日本を守るだけの片務的性質を持ち、それがアメリカが政策変更したら日本は守られなくなると考えた岸信介が「基地提供」という形で双務性を高めた、という解釈をしているのがへえっと思った。

また特定秘密保護法については支持率を下げはしたが、それまでの官僚による独善的な秘密指定によって、第一次政権では核持ち込みの密約の存在を総理大臣すら知らされてなかったといい、そうした状態は改善しなければならないという思いもこの法律にはあったというのはなるほどと思った。

また、「これが政党政治というものなのだな」と思ったのは、「政権が揺らぐのは、自民党内の信頼を失う時です」という言葉だった。それを第一次政権で痛感した安倍氏は第二次政権では「この法整備は我が党の使命であり、歴史的要請である。やるべきことをなそう」と党大会で呼びかけ、党内を引き締めて、例え支持率が下がっても「責任ある保守政党としてやらなければならないのだ」と議員や党員が意気に感じてくれた、という。ある意味本当に教科書通りの政党政治であり、安倍さんは我々が思っているよりずっとオーソドックスな政治家だったのだと思わされた。

「安倍晋三実録」はまだ読み始めたところだが、安倍政権に最も食い込んだ記者と評されていたNHKの岩田明子記者が、小泉内閣の副官房長官時代には自宅に電話しても昭恵夫人が取り次ごうとすると「いないと言って!」と不機嫌そうな声が聞こえたりしたというところが面白かった。まあ、朝日新聞と並んで敵と意識していた「NHK」の記者だということが大きかったのではないかという気はするが、一度親しくなるといろいろな話ができるようになったという展開は、敵味方というのが「政治の世界」では本当に大きいのだなと改めて思ったのだった、ということだけ書いておこうと思う。

あとはTwitterを見ていて気になった高橋杉雄氏の報道番組からの一時撤退の話は、高橋氏が防衛本省に戻って政策立案に関わるようになるから、ということでなるほどと思った。防衛研究所と本省の間ではそういう人事交流が行われるらしく、それだけ氏の見識と手腕が必要とされる状況になったのだなと思う。近著として「日本人が知っておくべき自衛隊と国防のこと」(辰巳出版)と「日本で軍事を語るということ」(中央公論新社)の2冊が紹介されていたので、夕方書店に見に行ったのだが、前者はあったが後者はなかったので「自衛隊と国防のこと」だけ買って帰ってきて少し読んだんだが、大変読みやすいとともに今までになかったくらい真っ当に戦後以来の日本の防衛やアメリカの世界戦略、中国の動きについて説明されていて、こういう角度からの見方が日本には、特に一般向けの書籍には足りなかったなと改めて思った。こちらは読んだらまた書いていきたい。

改めて書くが、今日は第二次世界大戦の終戦の日。こうした日に、戦争と平和について新しい角度から考える機会になる著作やネット上の動きなどが出てきていることは大事なことだなと思った。


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