「テンマクキネマ」:少年マンガ的映画マンガの面白さと「ロケハン」「映画づくり」の意味と楽しさ

Posted at 23/08/06

8月6日(日)晴れ

今日は広島原爆忌。78回目の原爆の日を迎えた。今年はバービー人形がらみや映画「オッペンハイマー」の世界公開(日本公開は未定)などの話題で原爆をめぐる空気のようなものがいつもとは違う感じはするけれども、こういう騒ぎで自分は原爆を投下された国に住んでいるのだなあということを改めて思う。人類の、というか科学技術の原罪のようなものはいくつかあるけれども、原爆もまたそうした巨大な原罪の一つであることは間違い無いと思う。

昨日は一昨日買ってきた11冊のジャンプコミックスを半分くらい読んだのだが、特に面白かったのが「テンマクキネマ」だった。これはとある映画好きの中学生が映画の脚本家の霊に取り憑かれて映画を撮るという話なのだが、映画を作る過程のディテールがいろいろ書かれていて、とても面白いと思った。

特に面白い、というかジャンプの連載でも読んでいるので一度は読んでいるのだが、コミックスで読んでみてその面白さに気づいたのが「ロケハン=ロケーションハンティング」の場面だった。

ロケハンというのは言葉は知っていたがどういうことをやるのかはよく理解していなかったのだが、つまりは撮影場所を事前に決めるために現地に行っていろいろ調べておき、また現地で行政の手続きなど必要な準備をしたりすることも入っているようだ。もちろん規模の大きな映画ならスタッフが手分けしてやることだろうけど。

私は学生時代に演劇をやっていたのでシナリオ=戯曲を書いて舞台を作るという経験はあるけれども、リアルなセットを作るような芝居ではなく小劇場的な前衛的な舞台だったから背景を含めた場面全体的な意味でのリアリズムについての認識はあまり持っていなかった。その面白さと楽しさみたいなのは、これは映画を作るための準備段階に過ぎないといえばそうなのだけど、映画を作る楽しさのかなり大きな部分を占めているようにも思った。リアリズム的な演劇はちゃんとはやったことないのだけど、そうでなくてもイメージ的なものであっても演劇でロケハン的なことをやると結構面白いかもしれないということは思った。

というのは、演技の時に目の前に滝があるように演じるとか、あるいはマックの女子高生の会話みたいなのを演じるというときに、実際に滝を目の前で見た時の感触とか、「マックの女子高生」の空気感みたいなものを掴んでいるかどうかというのは演技に大きく関わるわけで、そういう抽象的な感じにはなるけどロケハンというのは意味はあるのではないかと思ったということだ。

この作品は連載を読んでるときは「ジャンプに貴重な文科系マンガ」というのと「食戟のソーマの伝説コンビ」というのの二つで読んでたところが大きいのだが、改めて単行本で読んでみると映画撮影というものの面白さとかエッセンスとか出まくっている感じがして凄く面白い。どのくらいの尺の予定で始めたのかわからないが、5巻や10巻は続いてくれると嬉しいなと思う。今撮っている脚本は「渚」という代打が、それだけでなく次の作品も撮るところを見てみたいなと思う。

映画マンガと言えば「このマンガがすごい!2022オンナ編1位」の「海が走るエンドロール」があるわけだが、こちらは「60歳にして美大に入って映画を学ぶ」みたいな「人生を描いてる」みたいなところがあるのに対し、 「テンマクキネマ」は中学生がいきなり無理やり映画を撮らされるという展開の少年マンガ的展開だからこそのストレートな面白さがあるのだよなと思う。

あと思い出したのは2011年ごろにモーニングで連載されていた「デラシネマ」だ。これは戦後の映画の全盛期に、フォースの助監督(助監督にも1番から4番まであり、つまりは見習い)と大部屋俳優を主人公としたマンガなのだが、これは映画全盛時代を懐古するというような感じの作品だった。

他には「栄光なき天才たち」10巻で扱われた川島雄三監督の回。これは助監督を務め脚本も書いた今村昌平の視線から川島を描いたという設定で、これもとても面白かった。しかしこれは映画というよりも川島雄三という個人に視点を当てたものだった。

映画制作に焦点を当てた映画というのも私は見ていないが「ニューシネマパラダイス」があるし、私が見たものでは「蒲田行進曲」「キネマの天地」があるが、この辺りは下積みの役者の哀歓を描く、という感じで映画制作そのものに焦点を当てるものではなかった。

映画制作そのものが作品のテーマになってきたというのは、それだけ映画が「特別の人たちが作る特別のもの」という感じではなくなってきたから、ということはあるのだろうなと思う。

考えてみると、子供の頃に読んだ「子供大百科」みたいなのにも「映画の作り方」というのは出ていたなということを思い出した。しかし子供の頃だから流石にロケハンの面白さみたいなものはわからなかっただろうなとは思う。

***

Tips的なことで言えば、ロケハンの際にインサート映像として使えるちょっとしたショットをいくつか撮っておいて編集の時に使えるものを探して使う、というのは面白いと思った。そういうちょっとした短いシーンというのは、映画を見ていてよくこんな短いものをわざわざ撮っているなあと思うのだけど、そういうのをあらかじめ撮っておくというのは改めて面白いなと思ったのだった。足りなければまた追加で撮ったりはするのだろうけど。

時間がなくてできることは限られているのだけど、なるべく生かしていろいろなことをやっていきたいと思った。

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by Luke Peterson

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