寝不足/アフリカの女性婚など/エチオピア・イタリア間のオベリスク返還をめぐる「経済の時代」から「アイデンティティ政治の時代」への変化

Posted at 23/05/13

5月13日(土)曇り

昨日は午前中母を病院に連れていき、いろいろ話をしたりした。朝あまり眠れなかったのでお昼から午後は疲れが出てしまい、仕事の前に横になったりもしたが、こういう時はあまり眠れない。少しでも眠ると楽にはなるのだが。仕事の方はあまり忙しくなく、いろいろとやり方とか方針とかを改めて考えたり、話をしたりしていた。いろいろ考えて決めていかなければならないことは多いのだが、あまりうまく頭が動かないのも困る。特に発想がネガティブになるのは良くないなあと思う。

こういうことを考える時はポジティブすぎてもいけないが、ネガティブでもないなるべくニュートラルな状態が一番発想が湧いてくる感じがする。体調管理とか睡眠確保が大事だと思うのはそういうところだなと。昨夜もあまりよく眠れず、困った電話があったりして、なかなか状況は厳しい。雨が近いせいか気圧も下がってきていて体もドロンとしている。

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「岩波講座アフリカ諸地域」の「女性・ジェンダーからみるアフリカ史」をざっと目を通したが、狩猟採集社会におけるジェンダー平等や中世の王国支配における女性の権力者の存在などについて書かれている。長距離交易から男性の商人が巨利を上げ、女性の商人が域内交易で食料品などを扱ったという。この辺りは女性についてのことをピックアップして書いている感じがあり、ジェンダーという枠組み、視点を外した上での具体的な女性商人のプロポソグラフィなどが読めると面白いかなとは思った。

あとはアラブ・イスラムの進出による父系化の進行とかアフリカ的な母系の選好などについて書かれ、イボ族における女性婚(女性が男性=「夫」として女性を娶り、選んだ男性と性的関係を結ばせて生まれた子供を「夫」の子として育てる)について書かれていたりした。後を読むとこの女性婚はケニヤのキクユ族にもあるそうだが、こうした事例に逆カプ化などの現象が発生しないのかと考えたりして、ジェンダー以外の観点からもこれについての研究がなされると面白いのかもしれないと思う。

ケニヤのメル族の女性の成人儀礼としての女子割礼を植民地当局が禁止した時、それに反抗する形でお互いで割礼をしあった、みたいな女子割礼をプラスのものとして評価する話もあって、20年ほど前には女性に対する非人道的な所業として女子割礼がジェンダー的立場から批判されていたことを思い出すと、特定の現象に対する評価も数十年で変わってしまうのだなあと思った。時代というよりは立場の違いによる評価の違いかもしれないが。

全体にジェンダーという政治的視点を通して書かれているので、マルクス主義史学が華やかなりし時代の公式的な歴史観に則って書かれた歴史、みたいな印象を受けた。これらの現象をジェンダー的視点を外して価値中立的に研究するのは今では難しいのかもしれないが、より政治的な視点を離れて中立的な記述で書いた方が時代を超えた価値を持つようには思った。

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コラム「アクスム王国のオベリスク」。これはエチオピアの古代アクスム王国の記念碑的建造物であるオベリスクはすでに倒れてはいたが、ムソリー二の侵略後イタリアに持ち出され、植民省の前に建てられた問題について、戦後エチオピアとイタリアの交渉によってエチオピアに返還されるのだが、その経緯の中で当初の条約ではイタリアはナポリまでしか輸送に責任を持たないとなっていたという話がへえっと思った。つまり、巨額の費用のかかるオベリスクの返還よりも、戦後復興や経済成長に必要な戦時賠償の方を優先し、オベリスクについては事実上不問に付されたということなのだという。

これはある意味エチオピアの当時の帝国政府による現実的な決断だったと思うのだが、ハイレ=セラシェ1世の帝国が倒れ、メンギスツの軍事独裁政権が崩壊したのち、オベリスクの返還運動が始まって、2005年に返還され2008年に再建されたのだという。

これは第二次大戦後の「経済復興の時代」から冷戦体制崩壊後の「アイデンティティ政治の時代」に移ったことを象徴するような話だと思うが、同じような多くのことは大英博物館所蔵のエジプトから持ち出された出土品などいろいろあると思うし、そういう火種はなかなかなくならないだろうなあとは思った。

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