水凪トリ「しあわせは食べて寝て待て」を読んだ:スピハラとか副業とか薬膳とか

Posted at 22/11/04

11月4日(金)晴れ

今朝は天気は良いのだが、そんなに冷え込んでいなくていいなと思って少し油断していたが、やはり寒いことは寒い。6度だと少し暖かいと感じる感覚が服装を考えるときの実態にあまりあってないなと思った。このくらいだとジャケットではなくダウンの方がいい感じだ、と朝少し歩いてみて思った。

ただ、気象台発表の気温が同じくらいでも、あまり寒く感じない時と寒く感じる時がある。今朝は割とよく晴れているので、多分湿度が低くて放射冷却はしているのだろうと思う。同じ気温でも、放射冷却しているときの方が底冷えがする感じがある。

昨日は文化の日で、朝も夜も北朝鮮が盛大にミサイルを撃ちまくり、我が国もそれに振り回された感があるが、個人的には松本の整体に出かけて、帰りに岡谷で食品の買い物をしたり本を見たりした。

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その中で目について買ったのが水凪トリ「しあわせは食べて寝て待て」(秋田書店)。この作品は女性向け書籍のコーナーにあった。なんというか表紙からして「暮しの手帖」系の感じで今まではあまり接近したい感じではなかったのだが、自分が最近聴覚過敏であるとかの話をしたら整体で頭の偏り疲労ではないか、みたいな話を聞いて、なんというか惹かれるものがあってお試し小冊子を読んでみたら面白そうだなと思い、3巻まとめて買ってみた。

主人公の麦巻さんはキャリア女性だったのが膠原病を発病し、休職後に復活した職場で陰湿な嫌がらせを受けて退職、その会社の上司のツテでデザイン事務所の事務として週4日のパートで出勤しているという女性。家賃負担にも耐えられなくなり、部屋探しをする中で見つけた団地の一室の、持ち主の90歳の女性と居候の薬膳に詳しい男性との交流の中で、団地に引っ越して今までと違う暮らしを始める、という話。

ところどころに著者の実体験が使われているということで、例えば仕事で送ったメールが[SPAM]と件名の頭につけられたのを回されるとか、近頃の社内いじめというものはそういうやり方なのかとかなりくるものがあった。作者も持病を持っているということで、薬膳の効果みたいなものもある時はあるしない時はない、みたいな感じであまりのめり込みすぎずに書いているのがまあ、いい感じだなとは思った。ただもっとのめり込み系で書いた方がその世界の人には売れるんじゃないかという気はしたが。

ただこの辺のスタンスがあるから読む気になるというところでもあり、また幅広い読者からの共感も得られるのだろうなとも思う。おそらくこの線を選んだのは作者さん自身の選択だと思うので、その辺の「受け入れるか受け入れないかは自分のからだと相談して決める」みたいな感じが多分ちょうどいいんだろうと思う。

雇先の上司の唐さんが、薬膳とか気とか占いとか一括りにしてしまえば「スピリチュアル」な匂いのするものや考え方を全く受け入れない人で、取引先の編集者の青葉さんが「あの人スピハラ」だからといっていて、「スピリチュアルハラスメント」という言葉を初めて聞いたが、要はスピを馬鹿にする人、という意味のようだ。しかしそうは言いながら、科学的なものしか受け入れない彼のスタンスを必ずしも否定的ではなく、というよりはむしろそれはそれでわかる、みたいな好意的な視線で書いているのがいいなと思った。

登場人物たちは皆それぞれ過去や挫折や悩みやそれなりの問題を抱えながら、無理して働いている人もいるしマイペースすぎる人もいる。メインになるのは90歳のお婆さんと同居している司さんとの関係なのだが、これも微妙な距離感が近づいたり少し離れたりする感じが面白いなと思う。

薬膳というもの自体自分も興味を持ったことがあった、というかやはり体を壊した時、20年くらい前だがA型肝炎になって普通なら1ヶ月くらいで治るのが半年くらい長引いたことがあり、その頃に食生活の改善を考えてその辺も読んだことがあった。自然食とか敬遠していたのが手を出してみたりしたのもその辺りだ。まあ結論からいえばまめにやる人は続くかもしれないな、という感じで、料理自体が面倒な人には難しいなということになってはしまったが、何を食べるかまとまらないときのヒントの一つにはなる気がした。

実際、梅雨時の黄色いものがいいということでトウモロコシを食べる、みたいな話の時に一夏とうもろこしを食べ続けてみたらすごく汗が出たから効果は確かだ、とかいって、「他は疑ってるんですか?」と聞いたら「そういうのもたまに」とこそっと答えたりする、みたいなのもリアルな感じではあった。

まあ地に足がついているというか薬膳を実践しているけれどもそれに留まらず自分でちゃんと試してみるという姿勢がこの作品全体の信頼感をあげているのだろうなと思う。

そのほか、「副業」としてスカートを作ったり空きスペースを貸したりする話が出てきて、あまりそういうことを考えたことがなかったのでカジュアルな副業というものが結構世の中を回してる部分が見えてないだけであるのかなというようにも思った。割とその辺アジア的な感じもした。

表紙の感じは割と「そっちの人」という感じがしてしまうのでちょっととっつきにくい感じはあるのだけど、この本は割と広範囲の人に届くといいなあとは思ので、お試し小冊子などは良いのではないかと思った。

作者さんのペンネームの「水凪トリ」というのは、世界中の海に生息するミズナギドリ、特に日本の離島で繁殖しマレーシアやインド洋の方にまで渡っていくらしきオオミズナギドリから取ったのだろうと思うのだけど、司さんの渡り鳥的な生活が、作者さんの一つの理想でもあるのかなと思ったのだった。

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by Luke Peterson

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