菅原道真とか公卿補任とか古今和歌集とか

Posted at 19/09/20




滝川幸司「菅原道真」(中公新書、2019)読んでる。道真はマンガでも「応天の門」に在原業平や藤原基経などと一緒に出ているので最近そういう方面からも注目している人が多いのではないかと思うが、リアルな道真もいろいろと面白い。




平安前期に関しては鈴木宏子「「古今和歌集」の創造力」(NHK出版、2018)も読んでいて、残念ながらこちらは途中で止まっているのだが、今少しどこまで読んだか確認する中で、この本が「古今集が私たちに親密に感じさせる部分と異質に感じさせる部分」という問題に踏み込んでいることを理解し、そういう観点から読んでみると面白い、と思った。

ただ、自然に読んでいて読みやすいのは多分「菅原道真」の方で、それは私が文学よりは歴史の方に(歴史学というより歴史好きという方)傾いているからだろうとは思う。道真や文章博士について軽くググったりしながら読むのはとても面白い。昔もこういう本を読む時はすぐに百科事典を調べたり気になることがあれば国史大事典に当たったりしていたけれども、今はより簡便に素材的なデータはWikipediaや公開されているデータベースで調べることができるので、自分が大学の教養課程のうちにこういう状況になっていたら本を読むのもあの頃以上に楽しかっただろうなあと思うし、色々調べながら自分にとって自分が引かれたりあるいはできそうな分野についてもっと考えられただろうなあと思う。そういう意味では今の若い人が羨ましいが、逆に情報量が多すぎてそこに至れないというケースもままあるんだろうなあとは思う。
菅原道真関係で文章博士という役職について興味を持ち、平安後期には菅原氏・大江氏・藤原式家・南家・北家日野流の五系統で文章博士を世襲・独占するようになった、というのを読むと、実際に文章博士に任命された一覧表とかを見たくなるし、しかし文章博士というのはそんなに高位高官と言えるほどの役職ではないので摂関のように簡単に一覧表はググれず、それなら公卿補任を見ようと国会図書館のデジタルアーカイブに当たっていたら文章博士以前に奈良時代以前の武内宿禰とかの文字に魅了され大神(三輪)武市麿とか知らない人物について調べたくなったりして、やはりこういう世界は沼だなと改めて思った。

平安前期は国風文化で語られる摂関政治の時代と比べて昔は研究が進んでいない感じが強かったが、ここ数十年の間でかなり研究が出てきているし新書など啓蒙書レベルでも気軽に読める研究がいろいろ出てきていて、マンガや小説などの作品にもなってきているし、いろいろ読んでいて楽しい。菅原道真はその中のスターの一人であることは間違い無いので、またなかなか興味深い。
文学史上はどうしても菅原道真よりは紀貫之の方が取り上げられるのだが、政治上のポジションでは従二位右大臣まで昇進した道真と従五位上(ギリギリ殿上人)の受領階級の紀貫之とでは全然違う。それは国家の運営に関わる漢学者の道真の方が上にくるのは当然なのだが、その辺の機微も改めて考えるといろいろ思うところもある。

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