本を集中して読むのはいいことだ/ツイッター上での議論について

Posted at 18/10/30

昨日は久しぶりに本を集中して読んでいた。井上章一・本郷和人「日本史のミカタ」と内藤正典「限界の現代史 イスラームが破壊する欺瞞の世界秩序」。読むべきと感じるのは後者、イスラームの現在についてなのだが、日本の歴史の方がとっつきやすいということもあって前者を割合読んでいた。

最近、あまり本を集中して読むということがなく、読む気になったら読むという程度で読んでいたのだけど、やはり集中して読むのはいいことだと思った。読まずにはいられない、というタイプの読書ではなく、集中して読むことを自分に課すタイプの読書が一番本を読んだという実感が残るし、充実するということを久しぶりに思い出した。特に後者を読んでいると、今読まなければならないものを読んでいるという実感がひしひしとあって、迷いがなくなる感じがする。

両方とも読み終わってはいないのでまだ色々いう感じでもないが、前者に関しては幕末史でちょっと首をひねるところはあった。ただ幕末が専門の方々ではないから、とは思ったが。

読むべきものを読み、書くべきことを書き、為すべきことを為していると感じる時が一番充実することは確かで、今一番読むべきものと感じているのがこの辺りのことなのだなと改めて思う。

話は変わるが、ツイッターにおける議論について。

ツイッターで異なる分野の専門家が議論している、というかツイッターでは専門的な議論というよりは政治的な当否に関わることがそれぞれの立場や該当事項における政治的スタンスの違いによって出てくる議論が多いわけだが、やはりそういう方々でも自分がよく知らないことについて議論しているケースはよくある。最近の例で言えば萌え絵問題などだが、否定派は基本的にアニメや漫画、いわゆる萌え絵についてそんなに知らずに議論していることが多い。そこを突っ込まれるとかなりあさっての方向の応答になって議論が噛み合わないまま、しかし主張は曲げない、という感じになっていることが多い。

論争者の弱点というのは、勉強不足なのに頭でっかちになっていることがよくあることで、しかも自分でそれに気がついていない。特にアニメや萌え絵などのサブカルチャーについては、ハイカルチャーの人たちの中にはまだまだ勉強したり真面目に論じたりすると自分の格が下がると感じている人がいるのかなと思う。しかし、どんな分野にも専門家はいるし今までされてきた議論の経緯もあり、特にアニメマンガの分野では表現規制との戦いの歴史というものがあるのは、軽視しないほうがいいと思う。冷静になって、知らないことは知らないと認め、まずは勉強することが大事ではないかと思う。

難しいと思うのは、専門家が「素人=その分野についてよく知らない、ないし研究業績などを上梓していない人」に議論を挑まれることはツイッター上で日常茶飯事になってきているけど、その際に議論の共通の基盤をいかにして作るかということだと思う。ただ言いたいだけの人は別にして、真摯な姿勢で議論をしてくる人に対して、「どういう人か」「(何が専門かを含めて)何を知っていて何を知らないか」が分かれば議論の成り立つ場が成立しうるのだけど、それがあまり成り立っていなくて、「まずこれを読んで勉強してから話しかけろ」みたいな対応になっていたり、不毛な論争になっていることが往往にしてある。その素人側の人のタイムラインを追いかけてきているとある程度はこういう言葉なら通じるんじゃないかと外野からは思ったりしても、専門家の側からはまたそれだとちょっと違うんじゃないかというアプローチで話されていたりして、残念な気持ちになることがままある。議論がしっかり噛み合うと建設的になるのになとは思うのだが、こういうのはなかなか横から口を挟みにくいし難しいなと思う。

あと、最近よく感じるのが、フェミニズムにしろエコロジーにしろ、良いとされている思想に強い意識を持つことによって、他者の人権を制限することにためらいがなくなるケースが多いということ。これは価値観の問題ではあるのだが、フェミニズムもエコロジーもある種の危機感・切迫感がある思想なので、時よっては乱暴と思われる議論が少なくともその界隈の中では平気で罷り通っていて、それが外部から見ると受け入れられない議論になっていることはよくある。萌え絵の制限などは当然表現の自由に関わることだから慎重に考えるべきなのだが、自分が正義だと思っているとそこを見ない。原発を絶対悪と見ると福島県に住み続けようという努力そのものを否定する。もともと人権意識が弱いのか、あるいは見えなくなっているのかはわからないが、自分が一度立てた、あるいは学んだロジックから抜け出せなくなっている人が多い。カルトの脅威のようなものに気づいていない。その辺りも冷静になって、自分が議論している相手も同じ人間なんだという前提を思い出した方が良いのではないかと思う。

良い天気が比較的続いているが、気温はだんだん低くなってきた。

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