「進撃の巨人」:「主人公によるテロ」と「世界最終戦争」

Posted at 18/05/10

諫山創「進撃の巨人」第105話「凶弾」を別冊マガジン6月号で読んだ。とはいえ、以下のことは今回だけでなくこの作品全体についての感想も含まれる。


 

この作品は大どんでん返しが何度も起こる中でこの世界の構造が少しずつ明らかにされる、いわば「構造逆転劇」なのだが、21巻から22巻でこの世界の構造が明らかにされ、23巻から25巻でもう一つの世界が描かれた後、突然の「主人公によるテロ」が勃発し、ついに(恐らくは)世界最終戦争に入っていく、という展開になっている。

105話を包むトーンは、徹頭徹尾暗い。絶望的な雰囲気が色濃い。これは主要な登場人物の一人が主導する計画がその通りに進んでいるということのようなのだが、一部それに熱狂する人もいるし賛同する人もいる中で、主要な登場人物たちは基本的に望ましくない展開であると考えているように見える。

これは、この作品の始まりが圧倒的な恐怖と絶望から始まったことを思い起こさせるのだが、「意味がわからない恐怖・苦しみ」が「意味がわかってしまった絶望・苦しみ」に変わっていくという、救いのない貴重になっている。

しかしこの物語を貫くトーンの一つが「調査兵団の同期」の物語という側面があり、そこが明るさを醸し出すとともに悲しさや断腸の思いの源にもなっている。壁の外の物語が始まってからは子供達にそのバトンが受け継がれたのだが、今回はその希望同士の殺し合いということになり、また悲しみが深い。

しかし、世界の絶望の深さ、暗さに比べて、親しい人を失う悲しみはまだ心に近いだけに鮮烈だ。主要キャラクターの死に衝撃を受けている人は多いと思うが、それでも何かそこにのみは人の心に近いものが感じられる。

まだ最終戦争の最終的な構想は明らかになっていないし、またその結果も当然明らかにはなってないので、しばらくは物語が続くのだろう。以前は20巻で終わるという話もあったが、30巻前後になるのではないかという気がする。

そして、この物語が完結した時、また改めてこの物語について考え始めなければならないことがある気がする。

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by Luke Peterson

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